3話
「ここは、非科学否定連合軍、
通称非連の総本部です。」
またもや、意味がわからなかった。
オカルト否定連合軍?
なんとも直球な名前だ。
しかし、僕が今現在なっている(らしい)
不死身とやらはオカルトではないのだろうか。
「貴方の不死身も然りですが、
ここで使われている技術は
全て科学によって説明がつくものばかりです。」
「不死身とやらも、僕の指が治っているのも、
科学で説明がつくんですか?」
まだ半信半疑の不死身よりも、
できれば指が治った理由を説明してほしい。
「もちろんです。
そもそも、科学は全ての現象を説明するためのものですから。
…いえ、こんなことを話している場合ではないのです。
本題に戻させていただきます。」
女性は畏まり、僕を誤って拐ったことの謝罪と、
ここがどういう場所なのか、
これから僕が何をすればいいのかを説明してくれた。
「ここは、科学で説明がつかないことを、
時に解き明かし、時に隠蔽し、時に殲滅して
この世からオカルトを消し去るための活動をしている組織です。
これから貴方には、その手伝いをしてもらいます。」
なかなか物騒な単語が聞こえてきた気がするが、
オカルトを消し去る…?
そんなことが可能なのか?
「可能なのか、不可能なのかではありません。
そして貴方には拒否権もありません。」
これからよろしくお願いします、バッドクラック。女性はそういって、話を切り上げた。
それとほぼ同時に、部屋のドアがガチャンと音を立てて開く。
出て良いのだろうか…
恐る恐る部屋の外に出ると、ドアのすぐ横に男が立っている。
ぼさぼさの茶髪、無精髭、薄汚れたスーツの上から真っ白な白衣を羽織っているその男は、
新手のスタンド使いではないのだろうかと
疑いたくなるような格好だ。
男は、自分を『ボディーランゲージ』と呼んだ。
「目覚めは良いか『バットクラック』。」
「あの」
「ああ、答えなくて良い。
みた感じ異常はなさそうだな。
腕が逆向きに曲がったり、
目玉が無くなったりはしてないな?
よし。検診は終わりだ。着いてこい」
一方的に捲し立てた後、
男は、『ボディーランゲージ』はすたすたと、
どこかおぼつかない足取りで歩き始める。
「『スケープゴート』からどれくらい聞いた?
まぁ奴のことだ。
ろくな説明も無しに協力しろと捲し立てたんだろうがな」
ろくな説明も無しに捲し立ててるのはお前だと言ってやりたい。
「あの」
『ボディーランゲージ』の話を無理矢理遮り、質問する。
「スケープゴートって誰ですか?」
「あ?…それも説明してねぇのかよ…」
ぴたっと止まったかと思うと、
「あー、やめだやめだ。」
『ボディーランゲージ』はそういったきり黙って
早足に廊下を歩き始めてしまった。
そもそも、僕はここがどこなのか未だよくわかっていない。
聞きたいことは山ほどあるのだが、仏頂面でひたすら歩き続けているので話しかける事も躊躇われる。
耐え難い五分ほどの沈黙のあと、『ボディーランゲージ』が口を開いた。
ただし、話しかけてきたのではなかったが
「ほら、ついたぞ。」
何やら豪華な装飾品で彩られた仰々しい部屋に案内される。
「あとは『スケープゴート』に聞いてくれ。」
『ボディーランゲージ』はそういって、今まで歩いてきた廊下をすたすたと戻っていった。
お礼でも言った方が良かったかな?
今からでも言おうか…
後ろに振り返った時、
そんな疑問をかき消すように、
部屋の中から声がする。
「やぁ、『バッドクラック』」
振り替えると、僕をさらった二人組の男の方が立っていた。