1話
僕は、学校の帰り道、
冷たい風を頬に感じながら家路に着いていた。
「貴方が薄荷ですね?」
家が見えてきた頃、僕の後方からその声は聞こえる。
唐突に話しかけられたことに驚き、振り替えると、冷酷で感情が少しも籠っていないような顔をした、しかしとても美しい女性がたっている。
その女性が発した名前なのかすら不明な言葉に、僕は聞き覚えがない。
「薄荷。私たちと一緒にきてください。」
「はっか?誰ですかそれ。僕は、」
「いいから来いと言っている。」
僕は迂闊にもしらない人に名乗ろうとしてしまったことに
気づいたが、自己紹介は新たな声でかき消される。
その声は、女性の更に後ろから聞こえる。男の声だ。
女性の声は感情が籠ってない声だったが、男の声はわざと低くして威圧しているような印象をうける。
カツンカツンと革靴の踵をならし、暗闇から姿を表したのは、スーツがとても似合う、眼鏡をかけた若い男。
なんとなくだが、嫌な予感がする。
足早に逃げるとこを決意し、話を切り上げる。
「とにかく、はっか?でしたっけ。僕はそんな人知りません。見つかるといいですね。じゃあこれで。」
それが迂闊だった。
早く家に帰ろうと後ろを振り替えると、何かを首に刺され、
次に気がついた時には、四肢を拘束されて、ベッドに寝かされている。
いくらなんでも急展開過ぎるだろ、最近の漫画でももう少し段階を踏むぞ。
それに加え、目を開けることすら困難なほど強い光をあてられている。
目が覚めてからかれこれ三時間は経過しているだろうか。
誰の気配もしないし、眼は痛いし、いい加減退屈になってきた頃、
遠くから足音が近づいてくる。
ヒールを踏み鳴らす音が、僕の足元で歩みを止め、話しかけてくる。
フワッとした女性の声で、
「貴方がそうなの?ふぅん。
意外と地味な男なのね。
それに子供じゃない。
もっと強そうな人だと思ってた。」
「勝手に連れてきて何言ってるんですか。早く家に帰してくださいよ。」
あとできれば光を弱めてほしい。
「そんなこと言って…
こっちはわかってるのよ。貴方が薄荷じゃないって言うなら、これはどうなるのよ!」
そういってその女性は、僕の指を、切り落とした。
「があああああああああああああ!!!」
痛い、いたい、イタイ!!
まともに頭が回らないほどの激痛に、苦痛に耐えかねている中、
「うそ…なんで…」と女は困惑しているようだった。
困惑したいのは僕の方だが、何か言おうにもまとまる前に激痛によって書き消されてしまう。
痛みにのたうち回っている中で、女は仲間を呼びに走っていく。
痛みのせいで何時間にも感じた数分あと、女は仲間を呼びつれて、部屋に入ってきたが何かを言い争ったまま、
責め合い、怒鳴り合っている。
「早く…早くどうにかしてください」
僕は痛みに耐えながら、なんとか話しかける。
その声でグループの一人がこちらにかけより、こう言った。
「貴方には今から、不死身になってもらいます」
意味がわからなかった。