第三部 84
霜柱立つ日まで 84
しばらくざわついた教室が
「立村先輩、もう始まっておりますが」
涼やかな佐賀はるみの声でほんの少し落ち着いた。
といっても静まるわけではなく、ただひそひそ話に打ち興じるのみ。立村の名をあえて誰も口にせず、ただちろちろ様子を伺うのみ。その一方で三年評議連中の男子たちがそれぞれ顔を見合わせてこそこそしているのが見え見えだ。
──お前ら打ち合わせてたのかよ。まさかあいつを仕込んでたのか?」
見事なタイミングとしか言い様がない。
評議三羽烏がなぜ遅く現れたのか妙だとは思っていたが、その理由が立村を口説き落とすことだったのか。いや、そんな暇ない。貴史はすぐに打ち消した。昼休み、冷ややかに拒絶していた立村の静かな表情を見た限り、性格を百八十度変換させてちゃらちゃら男の顔して現れるとは、まず思えない。
天羽たちの顔を見ていたら、完全サプライズとしか思えない表情で口をあわあわさせている。それでも天羽は無理やり落ち着こうとしているのか作った笑顔を振りまいている。やはりこれは、ガチンコだ。
「まあまあ、めでたいじゃねえの」と、天羽。
「けどさあ」と、更科。
「あの野郎」と、難波。
顔を見ずとも誰がしゃべっているかが一発でわかる。その間にも立村は扉を自然にまかせて閉めた後、片手をブレザーのポケットに突っ込んだまま、コートを抱え教壇に上がった。悠々と佐賀はるみに近づきその隣りからぐるりと教室一帯を見渡した。頭をからっぽにしたような脳天気な笑み……という表現を立村に思い浮かべることがあるとは貴史も思っていなかったが……で佐賀に話しかけたそうな顔をして様子を伺っている。何かやらかしそうな雰囲気はぷんぷんする。
耳元でささやく美里の声にひっぱられる。
「貴史、止めようよ」
「ああ?」
「ほら、手伝って」
言うやいなや両手を風呂敷振り回すようなしぐさをする。両手で布にこびりついたごみを払うようなしぐさだった。貴史も真似した。何か止めないとまずいような気は確かにした。
「あいつ何しでかす気だよ」
「わかんない!だって立村くんがなりきってるの本条先輩だもん」
全く答えになっていない返事を美里はする。三年評議連中がばたついている間にも立村はしらじらしく佐賀に語りかけている。薄ら笑いを浮かべている。
「詳しい事情はよくわからないけど、一応俺も評議の端くれだから、後ろに座ってるけど、文句ないでしょう?」
わざとらしい丁寧語を使うところは変わっていない、のだろうか。
──あいつ、いつもそうだったか?
貴史が知る立村は先輩は当然だが後輩に対しても腰が低かった。無礼なことを言われてもすべて飲み込んでしまうところがある。しかしこの大胆不敵な目つきはいったいなんなのか。薬でもやってるのか。とにかく三年D組で見せたことのない態度であることは確かだった。動揺しているのは目の前に座っている新井林も同じだろう。佐賀会長が答える前に割り込んだ。
「あんた今更何しに」
頭を何度も回し、先輩としての礼儀も忘れて怒鳴る。貴史だったらたぶんぶんなぐっている。しかし完全に頭が春になってしまった立村の返事は
「一応、年上を敬えってことを忘れるな」
ときた。
「伊達にお前を仕込んだわけじゃないだろう。最後の評議委員会、出たって問題ないだろう」
そこまで言い放ち、佐賀はるみの隣りで鼻で笑うようなしぐさをしてみせた。
──立村、やばい。極めて、変だぞ。
「変だよ立村くん、どうしちゃったんだろう!」
「美里、本条先輩っていつもああなのか? あんなアホ面するのかよ」
「でも立村くんみたいなことはめったにしない!」
美里と早口でやり取りしている間にも、立村の目つきはだんだん怪しく変化していく。佐賀はるみの隣りで新井林をばかにしたような態度で見据えている。
「あとで新井林くんにおもいきり嫌われちゃうよ。どうするのよもう!」
美里のささやきなんか知ったことではない顔で、立村は
「悪いけど、そこ、どいて」<
新井林の肩を力込めて押しやった。様子をひそひそ声の中見守る女子たちがかすかに驚きの声を挙げる。鬼の先輩そのもの。なぜ新井林がぽかんとした顔でぺったり座ったのかわからない。
そのままゆっくり立村は貴史と美里の並んで座っている席に近づいた。
──ここ、一番後ろだもんな。D組の定めだ。
隣りでむっつりにらんでいる美里の代わりに何かを言わなくてはならない。心臓がうねる。昼休みひくっとして貴史から逃げようとしていた、あの立村とは違うと確信した。どう出るか。どう行くか。様子見か、ジャブか。
貴史はじっと立村を見上げた。笑いはしない。まじめに尋ねた。
「お前、来たのか」
答えで貴史はどう動くかを判断するつもりだった。
まったくぶれることがない。ちゃらちゃらした態度で歌うように、
「なんとなく、来たくなったからきたってわけだけどさ」
きわめて南雲チックに答えてきた。
思わずかちんと来る。一発張ったおしてやりたい気持ちをこらえる。さすがに教室で本能に任せて張ったおすのはまずいだろう。奥歯をかみ締める。その隙間を縫ってもうひとり、明らかに抑えられない奴がひとり割り込んだ。美里しかいない。
「立村くん、何よいきなり! あんたって今ごろ、どうして」
しかたない、やらせておく。
立村が正気に戻るのを期待したが甘かった。
美里の前ですら同じ「似非南雲」的態度だった。
「だってさ、羽飛が来いっていうからしょうがないしさ」
立村は美里を面白そうな顔で見下ろした。完全になめきった調子で。
「だから、悪いけど羽飛の隣に行くから、それでいいだろ。椅子だけでいい」
危うく貴史も腰を浮かして拳を振り上げかけたが、次の言葉でなんとか思いとどまった。
「どうせ清坂氏、自分でノート取ってるだろうし、俺が書いたもんなんて役立たないだろ」
──やっぱりこうかよ。
こうやって自己卑下する奴だ。根っこは変わっちゃいない。何か理由があるはずだ。貴史は自分に言い聞かせた。
──しゃあねえ、お前が何してえかわからねえけど、俺も容赦しねえ。
立村はゆっくりと貴史の隣りに座った。厳密に言うと斜め後ろ側なのだが、縦列が崩れているためほとんど隣に近い。顔をつらっとした風に見やったのを合図に、まずは一発言葉で張った押してやることにした。
「立村お前、何考えてるんだ!」
やはり表情は変わらない。薄ら笑いも消えない。貴史が畳み描ける。
「委員会、みんなお前のこと待ってたってのにな!」
立ち上がった。がっと見下ろした。しかし動じない。
──お前、美里がここまでどんなにお前のことを!
さらに言いたくなるのを押さえた。そのかわり手が出た。軽くだが叩いた。効果なんてなかった。さらに斜め前席から難波も立ち上がっている。加勢してくれそうな気配がなみなみと溢れている。それを押さえたのが隣りの天羽だった。すぐに片手で制しつつ、また作ったお笑い笑顔で立村に近づき、ちょこなんとしゃがみこんだ。これで正気に戻るんじゃないか、その願いは砕かれた。
「悪いけどさ、俺も話終わったらさっさと帰るからさ」
へらへら笑いで足を組み、立村はまたあっけらかんと答えた。
「送らなくちゃなんない相手がいるからさ」
「はあ?」
評議連中全員で口をそろえて立村に問うた。立村は完全に壊れている。貴史の頭にひらめいたものはただそれだけだった。隣りの美里がはっと気づいた顔ですぐ表情を能面に戻したのを、貴史は確かに見ていた。
──お前、ほんとに、何様のつもりだよ。
場合によっては絶交も前提だ。まずはこの会が終わるまでは。
──だれがてめえを逃がすかよ!
立村の豹変した態度に戸惑うのは評議委員連中だけではないはずなのに、生徒会の面々はすぐ我に帰って話を着々と進めていた。手際がよい。
「時間が限られておりますので、先に進めさせていただきます」
先手を打とうとするのが見え見えだが、全く周囲の状況を把握していないのかわざと鈍感な振りをしているのか、立村は気の抜けた声で高らかに尋ねた。
「どこまで話進んでいるのか、聞いていいですか」
当然、ヘアバンド女子の渋谷はぶち切れた。
「他の方に確認されたらいかがですか」
甲高い声で
その間にも隣りの美里が貴史の背中から手を回すように、立村へノートを手渡そうとしている。その手をあっさり振り払う立村。目をくれようとしない。
「時間がないんでさっさと教えてくれたってかまわないでしょうに」
またわざとらしい丁寧口調でせせら笑い浮かべつつ打ち返す立村に、渋谷の表情はつりあがった。これは一戦ありそうだ。止めねばならない。これぞ貴史の直感だ。
──てめえこの馬鹿が!
美里の差し出したノートを引ったくり、即座に貴史は隣りの立村の後ろに回り、ぼっこりぶん殴った。音が立つほど。小学校の頃と同じレベルだ。せめて怒るかと思いきや、立村は後頭部を軽く押さえるようにして振り返り、
「痛いな、まあいいよ、とにかく。やることやったらさっさと帰るから、そのつもりでな」
薄笑いは全く消えない。わざとなのか、何かねじが一本抜けているのか。ぽかんとした顔で答えてくる。普段なら「ごめん、俺が悪かった」と頭を下げるだろうに全くその気配すらない。貴史が次は頬を叩いてやろうと手を準備しようとすると、
「帰るだと? 立村!」
第二弾が待っていた。難波が振り返りつかつか踏み込もうとするのを、轟がそそくさと近づいてすぐに片手を押さえた。無理やりひっぱっていき元の席に着かせなだめている。
「時間がないんだから、早く早く」
不服そうな難波を尻目に、轟は真剣な目を立村に投げかけた。その眼差しを立村が受け止めた時、一瞬だけ素に戻ったように見えた。貴史の目にはそう映った。
──轟が一枚かんでるのか?
ちらと、そんな予感がした。口に出す間もなくすぐ消えた疑問だった。
無理やり話を戻そうとする渋谷が慌てている間に、今度は霧島ゆいの弟、キリオがさっそく甲高い声で返事をした。、
「今、天羽評議委員長に、今後の評議委員会に関する位置付けを確認していたところです」
立村は膝を組んだまま頷いた。自分の机にかばんと折りたたんだコートを載せたまま、
「そうか。つまり今後、評議委員会を生徒会のみなさん、どうしたいわけなのかな」
「立村くんいいかげんにしなさいよ!」
美里が止める。周囲もざわつく。貴史もにらむ。それでも立村は崩れない。
佐賀はるみがひとり、揺らがずそのまま答えた。
「立村先輩ならそのことをご存知のはずです。生徒会としてはこれから先、評議委員会のみなさんが中心となって開いてきた交流会を、今度は私たちの手で運営したいと考えてます」
「それで? 天羽、お前なんて言った?」
ぎょっとしたのか天羽が立村に向き直った。後ろ向きに方向転換し、穏やかに説明した。「まああれだ。俺もそのことには異存がないんだが、ただ、俺たち評議委員会には経験っつう財産がてんこもりだろ? だからなあ、ここんとこで、協力しやしませんかとだな」
頷いてみせ、今度は教卓前の新井林に呼びかけた。
「新井林、お前は?」
「女子中心の生徒会では荷が重いっていうのが俺の考えです。経験のある評議委員会が今年一年手伝うのが自然だと、俺は思います」
さっきのやり取りで毒気抜かれたのか新井林の奴、丁寧語で答えている。
「じゃあなんで、それが議題になってるわけ?」
「あ、俺のもの何するんだ」
気がつけば貴史の机に置いてあったカンペンケースを立村は引き抜き、自分の机を叩いてリズムを取っている。立村以外の奴ならよくあることがが、こいつに限ってそれはありえないことだった。すぐ取り戻そうと手を伸ばした。
「こいつ、手癖悪すぎ」
「誤解招く表現するなよな」
あっさり返してくれた後、立村は足を組みなおした。膝に机の上のコートとかばんを両方重ね、前かがみに様子を伺うような振りをした
「新井林の言い分も、天羽の考えも俺は正しいと思うけど、生徒会のみなさんは何がご不満なわけ」
不敵な笑みを保ったまま、立村は教壇に固まる生徒会女子たちに向かい、語りかけた。
──こいつ、実は狙ってやってるんだろ?
最初は度肝を抜かれたけれども少し冷静になればわかることだった。貴史はすぐ美里のノートを開いた。メモを見せた。
──何が狙いなんだ?
美里もすぐ返事を書いてよこした。
──わからないけど、絶対、正気だと思う。
いや、正気なのはわかる。たった一時間でこんなに性格を転換することができたら、立村の三年D組生活はもっとカラフルなものとなっていたはずだ。こういうへらへら野郎だったら貴史は最初から友だちになっていなかったかもしれないが、南雲グループにもぐりこんで一定の評価は得られていただろうに。
立村の挑発なのか天然なのかわからない口調。それに動揺していないのは、貴史の見る限り佐賀はるみだけだった。いらただしげにヘアバンド女子の渋谷が言い放つ。
「私が聞いたところによりますと、評議委員会がすべて行ってきたことを、四月以降はすべて私たち生徒会が引き継ぐということになっていたようですが。藤沖先輩、そうですよね」
渋谷に対してではなく、佐賀に向かって藤沖が頷いた。決して立村のほうを見ようとはしなかった。
──藤沖も何も、あんなに怒るこたあねーだろうに。あれで立村いじけちまったんだぞ。人間暗い過去のひとつやふたつあるだろって流せねえのかよ。
後の祭りではあるけれども、ため息つかざるを得ない。立村は首をゆらゆらしたり首筋をもんだりといかにも退屈そうなポーズを取りつつ、わざわざ藤沖に対して、
「藤沖、悪いんだけど、俺そんな話したか? 新井林と次の代で協力しあえばそれでいいって話はしたけどな」、
「こいつとしゃべることはない。話を続けろ」
かたくなな藤沖に、貴史は一発ハリセン作ってぶん殴りたい衝動に駆られた。
佐賀はるみは藤沖の言葉をすぐに引き取り「はい、わかりました」と答えた。
立村の顔を真正面から見つめながら、穏やかに。
「私も本当は、評議委員会のみなさんにお手伝いしていただきたいのですが、先生たちのご意見が」
少し余韻を持たせるような口ぶりで、ちらと霧島弟の方を見やる。すぐ言葉のリレーが始まるタイミングのよさ。霧島弟は承知の顔で続けた。
「先生たちは評議委員会よりも生徒会の方に、どんどん活動してもらいたいみたいなことを話してましたよ」
「それはどうして?
即座に切り返す立村。今度は渋谷が受けて立つ。
「私たちもその辺はわかりませんけれど、ある先生が言ってましたよ。先生が言う以上は、それに逆らうことはできないと、私も思います」
見事な生徒会のチームプレイ。立村のかき回しぶりをあえて気にせず冷静に返す余裕がある。かすかに関係ない連中からは「さすがだよねえ」とのささやき声すら聞こえる。立村がまた口を開こうと足を組み替えようとした時だった。
藤沖が不意に立村へ振り返った。
「うるさすぎるぞ、立村、お前いったい何しに来た。真剣に話をしようとしているのになぜ茶化す。ったくたまってるんじゃねえのか? いいかげんにしろ!」
元生徒会長の激昂も残念ながら立村には通じない。たぶん今の立村には正論は通じない。
貴史が思っていた通り、立村の答えは笑みを浮かべたままの楽しげなものだった。
「茶化してなんかいないけどな。あとでお前から答辞の原稿をもらうつもりではいるけど、もうできた?」
教室の面子から突然納得のため息が広がる。そうだったこいつは、
──立村の奴、卒業式、英語で答辞読むんだよな?
評議連中が顔を見合わせている。確か難波から聞いた話だ。藤沖が日本語の通常答辞を、その上で立村がおこぼれの英語答辞を披露するはずだった。となると、まだ原稿手に入れてなかったのか? まさかとは思うが、もう卒業式まで一ヶ月もないはずなのだが。
──こいつ間に合うのかよ?
全く別の心配が湧き上がるが、立村のねじは完全に外れてしまっている。
「そうだ、藤沖悪いけど、俺は毎日、風呂場とベッドできっちりと抜くもの抜いてるよ。心配していただかなくても結構。あっちの欲求不満が原因じゃあないから、その点誤解なきように」
「馬鹿が!」
藤沖が吐き捨てるように罵倒した後、また席を元に戻して座り直すのを、立村は勝ち誇った表情で眺めていた。また足を何度も組みなおして落ち着くポーズを探っている。
ふと隣りの美里の顔をのぞき見ると、なぜか俯いている。
「どうしたよ」
「ありえないよ、絶対に」
「はあ?」
「だって、あんなの、立村くんじゃないよ、絶対」
貴史の顔を何か伝えたたげに見上げる美里だが、それ以上何も言わなかった。
──はあ? 美里の奴何真っ赤になっちまってるんだあ?
見ると女子連中の立村を見やる目つきが妙にとんがっている。かすかに、
「なにあのスケベ、最低」
「あそこまで救いようのない委員長とは思わなかったよね!」
とかささやきが聞こえる。あっそっかと、思い当たる。ばかばかしい。
──あんくらい普段からスケベに言い返せる奴だったら、もっとあいつの人生変わってたっての。俺ももっといろんなことしゃべってたっての。男なら誰だってあんくらい言い返すだろ? ったく、女子連中なあに、立村の本能覗き込んであせってやんの。
男子連中の卑猥な共感にも反応せず、ただ斜め隣りの立村は不敵な微笑みを浮かべたまま、じっと生徒会連中を眺めやっている。むしろその態度が一切変わらないことの方が、脅威のはずなのに。貴史は肩越しにちらと立村の様子を伺った。両手を組んで膝のかばん上に置き、獲物を狙っている眼差しは、三年間一緒だった立村には見かけたことのないものだった。
立村が黙ったので、その間に渋谷が議事をどんどん進めていった。
この間、佐賀はるみはほとんど言葉を発していない。
「私たちが決めているわけではないので、事実だけお伝えしますが先生たちは、現在の生徒会にかなり期待してくださってますし、実際四月以降の行事に関しては私たちが担当することで決まりだとおっしゃってます。新入生を迎える会もそうです。去年までは評議委員会さんの方ですべて担当していただきましたが、まだメンバーが整っていない段階でそういう大きな行事を担当するのは無理があるのではないかということです」
天羽が大きな身振り手振りで相槌を打つ。
「いやあ、そんなことはなかったよなあ。なあ、難波、更科、そうだろ?」
すぐに更科が答える。子犬の笑顔は最大の武器。貴史も改めて思ったが、更科の愛想のよさは評議委員チームにとってかなりの武器だったのではないだろうか。霧島ゆいの手綱を引き締め、動揺するクラスメートを落ち着かせ、謎の大物女子評議の阿木を……貴史からしてひそかに評価しているだけだが……ためらうことなく後釜に乗せ、親友の難波の面倒も見る。もちろん立村のフォローもする。やはりこいつは只者ではない。
「そうそう。もともと評議委員会はみな気心しれてたから、細かいことはどんどん三月のうちに片付けてたし、かえって生徒会の方が大変なんじゃないかなって俺は思いますよ。俺たちは一年付き合ってるけど、生徒会のみなさん、半年しか」
姉は押さえられても弟は別か。霧島弟が立ち上がりぴしりと言い返した。
「それは去年たまたまでしょう。ま、去年の段階で、一人すごい騒ぎで入れ替わりがあったってことは聞いてますがね。その後は櫛の歯が抜けるがごとく、ばりばりと評議委員さんたちが入れ替わっていって、チームワークを取るのが大変だったんじゃないですか。それも、最後は委員長までも」
「私も同感です」
すぐに言葉を挟む渋谷。霧島弟とは犬猿の仲と聞いているがビジネスライクな関係としてはうまく行っているのかもしれない。ちらと「委員長」である立村を皮肉めいた目でにらみすぐ戻した。同時に教室内の視線がすべて立村に集まった。動じないのは立村のいつものこと。全く知らぬ存ぜぬでにやついている。何か不穏な予感がある。貴史は振り返った。ささやいた。止めた。
「立村、黙れよ」
不思議そうに立村が言い返す。
「何もしゃべっちゃいないのにな」
──しゃべるつもりだろうが! 狙ってるだろうが! お見通しだぞそんなこと!
とはいえ、立村もすぐに嘴を挟むつもりはないらしく、ふむふむ頷きながら様子を伺っている。時折、見慣れた生真面目な表情がよぎる。すぐにとってつけたようなへらへら笑いに切り替えている。
天羽が、これぞ「ザ・芸人」と言いたげなポーズで立ち上がり説明に入った。
「まあまあ、それはいいとして。生徒会のみなさん、まずは評議委員会の立場もわかってくれるとうれしいなあということでいいっすか? 最近の評議がころころ入れ替わっているってのは全くもってその通りで、お恥ずかしい限りなんですがね。だけどご存知っしょ。去年から俺たち評議委員会では、生徒会と委員会同士の風通しをよくするためにあえてそうやってるってとこを、ですねえ」
無理やり割り込んだのは渋谷だった。
「あえて、ですか?」
すぐに奪い取ったのは霧島弟だった。
「そんなわけないでしょう。よほど人間関係でごたつかない限りは代わらないのが今までの評議委員会だったんじゃないですか」
主導権争い、天羽は冷静だった。落ち着いて切り返した。
「団結力が必要な集団ですから、ベストな人材を要所要所で入れていくってのも、またひとつの方法ではないかなということです。あ、それとですねえ、みなさん勘違いしてるようですが、評議委員長が代わった件については別になあ、個人のつるし上げなんかじゃないってどうして何度言ってもわかってもらえないのか、俺にはそこんところ、ちょいと、謎」
ふたたび立村に視線が集中した。前提条件としてここでへらへらしている野郎がすべての悪の根源であることを、誰もが認めている証拠だろう。天羽の長話は続く。
「たとえば前の年、本条先輩がしきっていた頃ならまた話は別なんですよねえ。ありゃあ、あの人にくっついていくのは普通の奴じゃあ絶対無理。もし今回みたく切り替えなんぞしたらああた、一発で終わっちゃいますよねえ。だから俺もそれはそれでいいと思いますがしかし。俺たちの代で言えば、もし前評議委員長のままで持っていって、そのまま終わっちまった場合だと、残りの面子のやることがなくなっちまう可能性、出てきますわな。立村ともそのあたりきっちり話をしたんですがね。つまり俺たちの代で言えば、みな三年連中はそれぞれの個性ってかそういうものが豊富だったってことで、全員の個性を幅広くですね、生かすような形に持っていきたいってこと。それでまず前期は立村が基盤をこしらえて、評議委員会同士の外部交流会なんぞを行って盛り上げて、後期は俺こと天羽忠文がですね、ゆっくりと生徒会のみなさんと協力してさらにすんばらしい青大附属の交流をおこなっていこうじゃあありませんか、と、ま、そういったところです」
──あのな天羽、さいしょっからそれ言えよ。
やっぱり、悔しいが天羽は見事だ。誰もが納得させられる話をきっちり並べ立てることができる。立村にこれができたかと考えると、どう考えても無理だ。それでもすぐに反撃に出るのがヘアバンド女子の渋谷だった。
「私が聞いた話とは全然違いますね。どこでそういう話になったのでしょうか。評議顧問の先生から聞いたところによりますと、ちっとも三年の評議委員がまとまらなくて大変だったので、あえて選挙を行っただけだということでしたが」
ああ言えばこう言う。イーブンの戦い。立村がひたすらじっと佐賀はるみに目線を向けているのだけが気にかかる。
突然、佐賀はるみが渋谷と霧島に向かいかすかに首をかしげ、何かを訴えるしぐさをした。すぐ気づいたのか渋谷も言葉も飲み込んだ。ゆっくり、生徒会長佐賀はるみは口を開いた。
「本日、評議委員会のみなさんにご同席いただいたのは、私たち生徒会に先生たちがこっそり教えてくれたことを、できるだけ早くお伝えしたかったからなんです。今渋谷さんと、霧島くんが話してくれましたように、実は私たちの間でもこれからどうすればいいのかと、困り果てていたところなんです」
霧島が何かを言おうと口を動かしたが、また制するようにかすかに首を振り微笑んだ。威圧感なし。霧島もおとなしくうなだれた。
「私たち、今まで、どういう風にすればいいのかと藤沖会長にお尋ねしたり、先生たちに相談したりしていたのですけれども、それがよくなかったのかもしれません。いつのまにか先生たちが先の予定を組まれてしまったんです今回あえてこのように、生徒だけの集まりを開くことを先生たちに許していただいたのは、そのあたりにも、理由があるんです」
まん丸の編みこみ髪に手を触れた。何度見てもあの髪形は貴史のハニーである鈴蘭優を思い起こさせるものがある。その一方天羽がシャープペンシルをくるくる指先で回し、難波がふくれっつらをし、更科が頬杖ついてあどけなく振舞うのだけが浮いている。
──こんな茶番劇終わったらさっさと帰って優ちゃんのLPエンドレスで聞きてえよ。
「本当だったらきちんと、先生たちが評議委員会のみなさんに説明を行って、今後は生徒会中心で持っていきましょうって話をしてくださる、そういうはずだったんです。でも、私」
くしゃみを押し殺すように、両手を口に当てる。やはりこういうところが鈴蘭優そっくりだ。どうしても鈴蘭優基準の目だと、佐賀はるみに甘くなってしまう。しょうがない。そういう趣味なのだ。
──これだけ頭よくてだぜ? 顔も優ちゃん似だったら、あの巨乳最悪性格女子なんかかなうわけねえだろが。立村もなんであんな奴に惚れたんだか。
「ごめんなさい、私、うまく言えなくて。でも私、それって評議委員会のみなさんに対して、失礼なことじゃないかって思えてならなかったんです。だってそうしたら私たち、せっかくここまで私たちに協力してくださった評議委員会のみなさんを裏切ることになってしまいます。私、それだけは、どうしても、したくなかったんです。私、だから」
「よっくわかったでしょう? 天羽先輩」
なぜかまた、渋谷が割り込んだ。なぜこいつは妙に目立とうとするのだろう。正直、あの杉本とかいう馬鹿女子の顔と重なるものがある。似たもの同士にも見える。
「いいですか、今回のこの会は、佐賀さんのおかげで成り立ってるんですよ。本当だったら評議委員会なんてさっさと終わってしまって当然なんですよ。特に最近あんなごたごたがあった以上、先生たちの判断で本来の職務を全うする集団に戻ってもらってよかったんですよ。それを、佐賀さんがいくらなんでもそれはって言い張ったから、私たちもしかたなく、そうしてるんですよ。いいですか。私たちは、本当だったらこんなこと、しなくてよかったんですよ」
──なんだかこいつ、こけおどしみてえだわ。
美里にメモで伝える。
──なんなのあのヘアバンド。
すぐ返事が来る。
──あの子が泥かぶってるだけ! 会長が全部仕組んでるの!
「ですから私たちとしては、みなさんにここではっきりと約束していただきたいんです。これから先、先生たちがいろいろなことをおっしゃるでしょうがそれを佐賀生徒会長の責任にしてぶつぶつ言うのはやめていただきたいということです。天羽先輩、先日からずっとお願いしてましたけれども、なぜ会長のやり方を責めようとするんですか? 会長は観た通りおとなしい感じだし、どこかの誰かとは違って押しも強くありません。でも、青大附中のことを一生懸命考えて、それから私たち生徒会のことも、もちろん委員会関係の人たちのプライドも慮って、それで一生懸命うまくいくようにしてるんです。佐賀さんが生徒会長になってから、目立ったトラブルって、これまでありましたっけ? 評議委員会は今まで特別な地位に置かれてましたけれども、話を聞けば内部でいろいろなごたごたが起こってしまい、先生たちの手を借りなくてはいけないほど困った事態に陥っているという話も、この前噂で耳にしました。そうですよね、霧島くん」
振られた霧島もふくれっつらで頷いた。すぐに狐顔を尖らせて甲高い声で言い放つ。
「僕はもっと詳しいことを知ってますが、あえて評議委員会の名誉のために控えます。現在青大附中において誰がリーダーになるべきか、それをここではっきりさせる必要があると私は思います。もちろん、今まで評議委員会が行ってこられたことを否定はしませんが、現状維持のままでは全く何も変わりません。先生たちの考えを最優先に考え、これからは生徒会長である佐賀さんを中心とした生徒会執行部をもっと盛りたてて頂きたいのです」
──あーあ、こりゃもう評議チーム全滅だなこりゃ。
他人事のようだが、隣りでへらへらしている野郎のことが重しで頭がうまく働かない。
「やっぱりこれ、なんか言ったほうよくない?」
また美里が貴史にだけ小声でささやく。
「何をだよ。正論だろ。あとは他の奴らがどう出るかだろ」
「けどこのままだとまずいよ。せっかく、みんながんばってきたことを全部生徒会の人たちが奪い取っちゃうってことなんだもん! もう、天羽くんたちどうするつもりなんだろ。貴史、あんた何か言ってやりたくなあい?」
「わからねえってんなこと言われたって」
「もういい、あんたどうせ関係ないんだもんね!」
美里もまたふくれっつらでそっぽを向き、そのついでに立村をのぞきこんだ。もちろんすぐ目を逸らした。語りかけることはない。
──天羽がどう出るか。だわな。あとは、あいつが。
立村が足をしょっちゅう組み替えてはにやつきつつ佐賀はるみを見つめている姿がどうしても目障りでならない。ああ、とにかく一発正面からぶったたきたくてならない。廊下にひっぱりだして正面からさしの勝負をしたいところだが、はたせない。
天羽がのんびり口調で周囲をなだめつつ立ち上がった。
ほっとした。周囲の吐息が物語っている。
「まあまあまあまあそうそうかっかしなさんなって。ま、生徒会のみなさんが一生懸命やってくれてるってことは俺も感謝してますが。まあ評議委員会の連中ってのは、血の気が多いっていうか、生まれながらにドラマチックな奴が多いっていうか、とにかく個性派の集団なもので事件が多発するってのはしょうがないことなんですわな。なあ、更科?」
大きく頷く更科。わざと見えるように笑顔を振りまく。
「俺たち評議委員会、厳密に言うと今の三年世代がとんでもないキャラの持ち主だったことは認めるし、先生がたにあきれられたってのも、まあしょうがないかってことで、おっけとしますわな。ただ、それはあくまでも、俺たち三年の話であって二年とは関係ねえんじゃえかなあ、と、評議委員長として思うんだがどうですかねえ? 会長?」
佐賀はるみは首をかしげ、戸惑った風に答えた。その声も甘い。
「ごめんなさい、私にはそれ以上、先生たちを止めること、できそうにないんです。だって私たち生徒会は、先生たちのいいなりなんです。むしろ、止めることをお願いしたいのは、私たちの方なんです、でも」
突然佐賀は目の前にいる新井林をじっと見つめた。横から見ている貴史にも分かるくらい露骨な色目だった。新井林が肩をひくっとさせているのが見て取れた。あいつら何年付き合っているんだろう。それでもまだときめいているということか。すごいったらない。
「どちらがよくてどちらが正しいとか、そういうのはうまく言えないんですけれども、ただ私、今までずっと先生たちの言う通り、あと渋谷さんや霧島くんたちに手伝ってもらったりして生徒会長を務めてきましたが、一度も困ったことが起こってないのは本当なんです。もちろん、最初のお話通り生徒会と評議委員会が協力する形でのやり方で進めてもいいかと思ったのですけれども、そうするとやり方がそれぞれ違うのでまた、トラブルが起きてしまいそうな気、するんです。だから」
また言葉を切り、今度は同じ愛らしい瞳を天羽に投げかけた。
「だから、私、このままみんなが喜ぶ形で進めるのなら、先生がたの言う通り、そのまま生徒会が今まで評議委員会のしてきたことを預かる形にするのがいいかなって思ったんです。私、間違ってるでしょうか。それの方が誰もけんかしないですむし、誰も悪者にしなくてすむし、きらわれないですむし。傷つかないですむのではないでしょうか」
──全くだわな。正論だろ。
申し訳ない話だが、佐賀はるみの発言に疵を見出すことはできなかった。
隣りの美里に一言でも口を滑らせたら半殺しに遭うだろうがしょうがない。貴史の本音だ。
「私、今までたくさんトラブルの経験をしてきました。それでいつも思っていたのですけれども、一番最初のきっかけが起こった時、誰かが我慢して問題を起こさなければ、大抵の場合ものごとってそれだけで終わってたんです。だから私、いつも自分のところで問題が大きくならないようにすればいいって、思ってたんです。もちろんそればかりじゃいけないっていうのもわかってましたし、生徒会長になった以上それなりに覚悟はありました。問題が起こる以上は、ちゃんと対処しなくっちゃって、思ってました。でも、本当はみんな、仲良くしていたいんじゃないかなって思うんです。変なことなんて起こさないで、みんな仲良く楽しくしていたいんじゃないかなって」
──そうだよ、すっげえ単純な真理じゃねえか。
頷きそうになるのを美里に無理やり引き戻される。腕を引っ張られる。
佐賀はるみの言葉は凛と響く。
「今回は先生たちが、半ば強引に評議委員会の人たちに話をつけるからっておっしゃってくださったのですけれども、私あえてそれ、断りました。それって失礼だと思うんです。でも、よくよく考えるとそれの方がみんな仲良しでいられるはずなんです。生徒会が努力してみんなを率いるようにして、評議委員会のみなさんはクラスをまとめることに専念していただいて、それぞれがやるべきことをきっちりとやるようにすれば、きっと、青大附属はいい学校になるんじゃないかってそういう気がするんです。私も評議委員だったことあるのでそれはわかります。だから、なおさら、私思うんです。評議委員として、クラスのみんなを笑顔にすることが一番大切なことなんじゃないかって。そのことに集中してもらう方が、きっとみんな、幸せになるんじゃないかって思ったんです」
──そうだ、その通りだ!
何かがすとんと腑に落ちた。
──だよな、そうだよな? 俺たち、やるべきことをちゃんとやってりゃよかったんだよな。俺たち、やるべきことやってれば、こんなぐっちゃぐちゃにならないですんだんだよな!
美里が「ねえねえ、あんたなにか言ってよ!」と騒いでいるのも聞き流すだけ。
前で難波と更科が「このままでいいのかよ!」「ちょっとまずいよ絶対」とかひたすら天羽に相談しているのも無視だ。
貴史の中にどくどく流れる熱いもの。身体から勢い欲溢れてくるもの。全身が炎のように燃える。隣りの立村すらもうどうでもいい。
──なんで今の3Dが平和なのかってこと、やっとわかった。
立村が死に物狂いでがんばっていて、懸命に努力していて、ついにぼろぼろに果ててしまったのに、三年D組の空気は貴史がほんの少しちょいちょいいじるだけでどんどん楽しい方へ流れていく。はっきり言おう。笑顔が溢れている。教室に入るたびほっとする。今まで感じたことのない楽ちん感が流れている。立村が教室にいないにも関わらずだ。
──古川もんなこと言ってたな。
すでに立村抜きで百パーセントに満たされている三年D組。そのことに正直「わりいな」気分は残っている。菱本先生に褒められても、貴史の中ではまだ七十パーセントでしか満たされていなかった。違う。そうじゃない。今、クラスの連中がみな満タン気分を味わっているとすれば、答えはひとつ。
──俺が、クラスで、やるべきことをしたからだ。
ほんのわずか、ひとしずくの時間。勢いよくながれる思惟を貴史は受け止めた。
──俺が今までずっと逃げ続けて、立村に押し付けてきたことを、今きっちりやってるから、うまく回っているんだ。あいつがやるべきじゃないことをしかたなくやりつづけて、壊れてしまうまで、俺はそのことに気づかなかったんだ。何度もあいつが、俺の方が評議に向いてるって訴えた時に流しちまったから、あいつはぎりぎりまで力を使い果たしておかしくなっちまったんだ。俺が、やるべきことをやってれば、こんなことにはならなかったんだ。
「ねえ、貴史ってば!」
何度も呼びかける美里を貴史は返事代わりに見つめた。
「もう、あんたなんとか言ってよ」
「あのな、美里」
──美里もこんなに、ずたぼろにならないですんだんだ。俺が無理に立村とくっつけようとしなければ、こんなことには。
何かを発しようとしたとたん、佐賀の言葉が締めにかかった。
「ですから、私は」
突如、貴史の机にどんとコートがたたまれたまま載せられた。
──ああ? これ、なんだ。
斜め後ろから押し付けるかっこうで載せたのは立村しかいなかった。立ち上がる。
「おい、いきなりびっくりさせるなや」
呼びかけて見るが無視された。
「立村くん!」
美里も叫んでいる。同じく知ったことじゃないとばかり立村は背を伸ばし、すっと佐賀の座っている教卓へと大股に歩いていった。教室内のざわめきもなんのその、そのまま佐賀はるみの隣りに立ち、身をかがめて、
「悪いんだけど、いくつか訂正したいんだけど、いいかな」
にこやかに呼びかけた。
「立村先輩」
「立村、あの馬鹿が!」
「ホームズ、落ち着け、さっきも言っただろ様子見だよ」
「立村くんって一体何考えてるのよ!」
「あんた、礼儀ってもんを考えろってんだ!」
三年評議連中、および生徒会一同、みな騒ぎたけなわな中、佐賀はるみはきょとんとした顔でもって、他の生徒会連中に指先で何かを指示した。
「間違っていることがあればもちろん直します。立村先輩、お願いします」
立村の挑戦状を余裕の微笑みで受けて立った、そう見えた。




