秋
秋、いつもと変わらない秋。
すすきが風に揺れているのを見ながら歩く。
夏休みが終わり、学校が始まっても僕の人生は退屈だった。
蝉の五月蝿い声が聞こえなくなったと思ったら、クラスの虫どもが騒ぎ出す。
そして、草むらにいる虫達も奏で始める。
それは蝉に負けず劣らずの五月蝿さだった。
しかし、その五月蝿さも忘れるほどあの少女のことを四六時中考えていた。
そして、今日も歩く。
あの少女に会うために歩く。
そんなある日、僕は不意に山に登りたくなった。
子供の頃よく登った山。
そして登る。
道には彼岸花が沢山咲いている。
僕の行く先を案内するかのように咲いている。
僕はその案内について行くことしかできなかった。
その道を登って、登って、やっと頂上に着く。
そこには一面に彼岸花が咲き乱れていた。
しかし、ある一箇所のみ彼岸花が咲いていない。
そこにはあの少女が座り込んでいた。
少女はまだ僕に気づいていない。
少女の横顔が目に映る。
笑っていない。
ただじっと彼岸花を眺めている。
僕はその顔に見覚えがあった。
それは頭に引っかかっていたものの正体。
僕は彼女と過去に会ったことがある。
そんな気がした。
しかし、名前が思い出せない。
いくら考えても思い出せない。
すると、少女がこちらに気づき笑顔を見せる。
すごく美しかった。
見惚れた。
心が締めつけられた。
こんな感覚初めてだった。
ヒラヒラと落ち葉が落ちてくる。
綺麗な椛の葉っぱ。
一瞬だけ僕の目を奪う。
気づくと少女はいなくなっていた。
僕は家に帰って確かめたいことがあった。
駆け足で山を降りる。
降りている途中、木からどんぐりの実が落ちる。
2つのうちの1つだった。
そのどんぐりはもう二度と木についているどんぐりと会うことはできない。
僕はそのどんぐりをポッケにしまい山を降りる。
家に着くと、自分の部屋にあるアルバムを取り出し見る。
1人の写真が多かったが、稀に複数人で撮った写真がある。
その中の1つに少女と撮った写真があった。
それは彼岸花が咲き乱れている場所で少女と2人で撮った写真だった。
秋、僕が少女のことを思い出した秋。




