夏
夏、いつもと変わらない夏。
蝉の五月蝿い声を聞きながら歩く。
学校も夏休みに入り、毎日が退屈でたまらない。
学校があっても退屈、学校がなくても退屈。
僕の人生は退屈で溢れていた。
しかし、僕は何かを求めて歩く。
ひたすら歩く。
あの時見たあの少女に会うために。
あの春の出来事以来、あの少女とは会っていない。
しかし、僕の心の中にはあの少女が今でもずっと残っている。
あの少女にもう一度会いたい。
そんな気持ちだけが僕を突き動かす。
そんなある日の夜。
僕はその日も少女を求めて歩き続けていた。
何も考えず本能のまま歩き続ける
すると、いつの間にか近くの小川に着いていた。
勿論周りには誰もいない。
そこには無数の蛍が飛び交っていた。
それはまるで僕を違う世界に連れてきたかのような感覚に陥る。
その中で一際目立つ光を放つ蛍が1匹いた。
いや、蛍にしては大きすぎる。
僕はそれに近づく。
するとそれが人間だと気づく。
しかも、僕が会いたくてたまらなかったあの少女だった。
僕が近づくと僕の存在に気づいたのか、焦ったように立ち上がり僕と距離をとる。
しかし、その時も僕に笑顔を向けていた。
春の時のように時は止まらない。
しかし、頭に何か引っかかる。
その引っかかるものを考えているとうちに少女は蛍の光と共に消えていった。
残ったのは僕と蛍の死骸だけ。
小川の流れる音が大きくなるのを感じ、僕は家に帰る。
家に帰る途中、いきでは見つけられなかった大きな大きな向日葵を見つけた。
それは太陽の様に美しかった。
あの少女の笑顔の様に。
僕はその笑顔を胸に刻みまた歩き始める。
いつの間にか僕はあの少女を求めていた。
あの少女は僕に生きる理由を教えてくれた。
それが決して叶わぬものでも、それだけで幸せだった。
夏、少女が僕に教えてくれた夏。




