大輝くん、彼女さんとの初対面
[大輝くーん、ついたよー]
家でのんびりとしていると、啓介からメールが届いた。
今日は土曜日。昨日実家からこちらに帰ってきた。……のだが、神崎はまだ帰っていない。…というのも昨日、
『私は日曜日までこちらにいますので、先に帰っておいてください』
と、突然言われた。それならば、と俺も残ろうかと思ったのだが、啓介達と遊ぶ約束をしていたので、神崎の言う通り、先に戻ってきていた。
[わかった。今行く]
俺は啓介に返信して、部屋を出た。
「あれ?良吾は来てないのか?」
啓介を迎えに行くと、その疑問が最初に浮かんだ。良吾は待ち合わせ時間よりも少し先に来るタイプだ。啓介は、いつも時間ピッタリに来る。だから、今日は啓介と良吾が一緒に来たのかと思っていたのだが、違っていたらしい。
「良吾くんは見てないよー。まだ来てなかったの?」
「ああ、まだ来てない」
「珍しいねー、良吾くんが遅れるなんて」
「まぁ、とりあえず……」
先に部屋に上がっとくか?と聞こうとしたが、言葉を途中で切った。何故なら、奥から良吾が歩いてくるのが目に映り込んできたからだ。……なぜか、隣に知らない女の人もいたのだが。とりあえず、先に啓介に知らせる。
「あ、良吾が来たみたいだぞ。ってか、あの人誰だ……?」
「あ、僕は知ってるよ。でも、なんで良吾くんはかのじ……」
「悪い、遅れた!」
啓介が言い切る前に、良吾が大きな声をあげた。
「いや、ほとんど遅れてないからいいけど……「へぇー、君が大輝君?」」
良吾の隣の人と言葉が重なる。こんな時、最初に謝罪の言葉が出てきそうになるのは日本人だからだろうか?
「あ、す、すいません」
「いえいえ、こちらこそー」
「……って、あんた誰ですか!?」
「おー、見事なノリツッコミ」
相手は感心しているが、俺は結構真面目に誰かがわからない。もし会ったことがあるのなら失礼だろうが、どうにも記憶にない。俺のそんな念を受け取ってくれたのかは知らないが、女の人が自己紹介を始める。
「私はねー、鳩ヶ谷 立花って言うんだ。好きな事は人と話すこと!嫌いな事は特にないかな。ちなみに、良吾の彼女やってます。よろしくね♩」
そんな自己紹介をされて、俺が第一に受けた印象は「やりづらそう……」と、そんな印象だった。
少し前まではぼっちだった俺に、こんなぐいぐいくる人と話せるようなスキルはないのだ。
「俺は、前沢 大輝って言います。好きなことはゲームで、嫌いなことはない……です。よ、よろしくお願いします」
やはり、人と話すことに少し慣れても、初対面の人と話すのは難しい。どこか固くなったりしてしまう。相手も、俺の態度からそれを感じ取ったのか、フォローを入れてくれる。
「まあまあ、そう固くならずにー。敬語なんて使わないでタメ口でいいよ。あ、私のことは気軽に立花って呼んでね」
「あ、ああ……じゃあ、俺のことも大輝って呼んでくれ……よ、よろしくな、立花」
「うん、よろしくね、前沢くん♩」
「いや、名前で呼ばねーの!?」
びっくりした。どれくらいびっくりしたかというと、自販機で水のボタンを押したのに何故か緑茶が出てきた時ぐらいびっくりした。
「いや、だって、初対面の人を名前で呼ぶとか、なんかアレだし」
「じゃあなんで俺に名前で呼ばせたんだよ!?」
見事なまでに矛盾していた。天邪鬼もびっくりである。
と、そんなどうでも良いことを考えていると、突然、立花さんが笑い出した。
「あはははは、話に聞いてた通り、本当に面白いね。これからもよろしくね、大輝」
「あ、ああ。よろしく……そ、そうだ。もうそろそろ、部屋に行かないか?」
なんとなく、名前を呼ばれるのは居心地が悪いような、ムズムズするような感覚を覚えたので、部屋に上がるように促す。だが、そこに立花が一言。
「やだ、初対面の女の子を部屋に誘うなんて……もしかして、大輝って意外と肉食系?」
「と、突然、何を言い出すんですか」
やっぱりこの人は苦手だ……と、再認識した時であった。
投稿が遅くなってしまって申し訳ないです。
Twitterにも書きましたが、今年は受験生なんで、勉強だったりと忙しく、投稿頻度が落ちてしまいます。これからはもう少し投稿頻度は上げますが、それでも遅くなる事をご了承下さい。