美咲ちゃんとデート!?(2)
「にぃ、美咲達なんだか周りの人にすごく見られてるね」
歩くこと少し。俺達は実家の近くでは最大級のショッピングモールに行くために、電車に乗っていた。俺は小声で美咲に言葉を返す。
「じゃあ、俺の方にもたれてくるのやめろ。肩に頭を乗せるのもな」
「えー、やだ。にぃにもたれてたらなんか安心するもん」
奇しくも神崎と電車に乗ったときと似たような状況になっていたのだが、コイツの場合は疲れてるとかじゃなく自然ともたれかかってきていて、なおかつそのせいで視線を集めていることに気がついてないらしい。
「オマエが俺にもたれてくるから周りの視線を集めてるんだよ」
「えー、そうなの?じゃあ、視線なんて気にしないでいいや」
なぜその発想になるのか。俺には全くもって理解できないが、美咲がいいならそれでいいだろう。
(……でも、憂鬱だなぁ……)
俺は美咲の彼氏とでも思われているのか、嫉妬の目が周りから飛んでくる。この視線に耐えながらの電車は、意外と辛いものがある。と、経験則から、そんな気持ちに陥っていた。
「にぃー!こんなのどーお?」
「ま、まあ……いいんじゃないか?」
ショッピングモールについた俺は、美咲に連れられ服屋さんを回りながら、美咲の試着ファッションショーを見せられていた。
「んー、でもねー……次の店行こっ!」
「はいはい、分かった分かった」
「何その反応!もうっ、悪いにぃにはこうしてやるっ!」
美咲が腕を組んでくる。いつものことなのだが、今はショッピングモールにいるのだ。周りからの目が痛い。
「くっつくなって、こんな所で」
「なんでー?」
「なんでってな…」
「あー!分かったー!」
美咲が左の手のひらに右の拳を打ち付けてそう言い、その後大声で叫んだ。
「にぃ、美咲で興奮したんだねっ!!!」
「よーし、美咲ちゃん。服買ってあげるからちょーっと黙ってようかっ!?」
何を言い出すのかこの妹は。人が沢山いる場所で何を叫びだすのかこの妹は。
「ほんと!?言質取ったからね!?」
「ほんと、ほんとだから。そうだ美咲、息抜きにアイスでも食べに行かないか!?買ってやるからさ!?」
「行く行くー!」
周りからの目が痛い。刺すような視線どころか、これ以上美咲が何かしでかしたら俺がころされるかもしれないような視線だ。俺はアイスと服で美咲を誘惑し、その場からそそくさと逃げ出した。
「おいしー!」
とはしゃぐ美咲の手の中には、13アイスクリームのカップアイスが握られている。
「にぃ、ありがとねー!」
「どういたしまして。ところで美咲、さっきみたいなことを人がいる場所でするのはやめてもらえないか?」
「さっきみたいなこと??」
「腕を組んできたり、変なことを叫んだりだ」
俺がそう言うと、美咲が「えぇ!?」と言いながら息を吸い込んだ。
「もしかしてにぃ、本当に美咲でこうふ…むがっ!?」
美咲がまた叫ぼうとしていたので、口を押さえて阻止する。
「それをやめろって言ってるんだ」
「はーいっ!でも、にぃの腕に抱きつくのはやめないよー?」
「なんでだよ」
「それが一番安心するんだもーん!」
「……はぁ、好きにしろ」
「やったー!」
叫ばないのであれば。と、周りからの多少の視線は耐えることにした。
「じゃあ、他のお店も見に行こー!」
と、アイスを食べ終えたらしい美咲が言う。
「わかったから引っ張るな」
「にぃ歩くの遅いのー!」
「はいはい」
俺は歩くのは遅い方だが、美咲と俺の身長差を考えたら普通はこんなぐらいがちょうどいいだろう。これだけの元気がどこから湧いてくるのか。それが不思議でたまらない。
「あ、あそこの店とか良さそう!いこーっ!」
「はいはい…ってこら、走るな、危ないだろ」
こうしてまた俺は、美咲のファッションショーに付き合わされることになった。
「にぃ、今日は本当にありがとう!」
家に帰る途中。駅から家まで歩いていると、美咲が笑顔でそう言ってきた。電車代など諸々含めて1万円近く、結構痛い出費になったが、久しぶりに会った妹にこれぐらいはしてやってもいいだろう。それに……
(この笑顔が見れただけで、俺は良かったと思えるよ)
「ああ、どういたしまして」
「お礼に美咲がハグしてあげるねっ!」
「あっついからくっついてくんなっ!」
(口ではこう言ってても、俺は意外とシスコンなのかもしれないな)
そんなことを考えながら、俺はダラダラと家に向かって歩いて行った。
なんと、なんと!この作品はじめてのレビューを先日頂きました!レビューを書いてくださったミミマル様、本当にありがとうございます!これからも頑張っていこうと思っていますので、どうかよろしくお願いします!




