前沢家の日常
「あらー、お帰りなさい、美咲」
「疲れたー…って、にぃ!?帰ってきてたんだー!」
そう。この美咲と呼ばれているこいつは俺の妹で……俺とは真反対の性格をしている。何より厄介なのが……
「おう、帰ってきたぞ」
「やっーとにぃが帰ってきたー!にぃ、大好きだよー!」
「邪魔だ、くっつくな」
「にぃ冷たーい、でも美咲、そんなにぃも好きだよっ!」
「はいはい、そうですか」
このブラコン具合だ。いや、ブラコンというよりかはただただ懐いている。の方が正しいか。思春期の妹は、必ずと言って良いほど兄を嫌うと聞いた事がある。だとすれば、こいつの思春期はいつ来るのか。少なくとも、中学三年の今でも、思春期は来ていないらしい。こうやって無駄に懐いて、隙があればくっついてくる。
「美咲は今までどこ行ってたんだ?」
「クラブしてたんだけど、暑くて暑くて、にぃ、美咲の体を冷やしてー!」
「なんで冷やすためにくっついてくんだよ、ほれ、扇風機の前にでも座ってろ」
俺は、しっしっ、と蚊を払うような仕草をして、美咲を追いやった。
「あ"ーー!ずずじーー!」
「うっせえ、扇風機の前で叫ぶな」
「にぃがいげっでいっだぐぜにー!」
「叫ぶなって言ってるんだ。誰も涼むなとは言ってない」
美咲はなんでも勢いで押し切ってしまおうとする癖がある。恐らく母さんに似たんだろう。
「あれ?大輝身長のびた?お父さん抜かされちゃったんじゃないかしら」
「にぃおっきくなったんだ!でも、にぃの見た目が変わっても美咲はにぃが好きだよーー!」
「うるせえ、チビ。それにくっついてくんな!」
「チビ言うなー!成長期なんだよ、成長期!今から色々成長するんだからー!」
「わかった、わかったから離れろ!」
やはり美咲の相手をするのは疲れる。
(顔だけは可愛いのにな、こいつ)
そう、顔だけは可愛いのだ。これも母さんの血を継いでるからなのだろうか。
「にぃ、美咲を見てどうしたのー?」
俺は、無意識に腕にくっつく美咲のことを見ていたらしい。
「なんでもねーよ」
「はっ!もしかして、私に恋しちゃった!?でも、ダメだよ…兄弟でなんて……」
「誰がするか!ボーッとしてただけだ、ボーッと」
「でもさっき、にぃのいやらしい視線が美咲の胸に向いてたよ!」
「はっ、無いくせに何を言うか」
「成長期だって言ってるでしょー!!!」
「わかったわかった」
「私も大きくなるんだからね!ボンキュッボンになるんだからね!」
「わかったから離れろ!」
やっと美咲が離れたところで、はぁ、とため息を一つ。
「そういえば、父さんはいつ帰ってくるんだ?」
ふと疑問に思ったことを口に出す。
「今日は早いって。5時ぐらいじゃ無いかしら?」
「そうなんだ。ありがとう」
「そんなことより大輝、お昼食べた?」
「まだだけど」
「じゃあ、作ってあげる。たまにはお母さんの味も食べたいでしょ?」
「にぃのお昼ご飯!?美咲も手伝うー!」
「ご馳走様でした。お袋の味って感じがして、美味しかった」
「そりゃあお袋だからね」
「え!?にぃ、美咲への感想なし!?」
「あー、そうだな。作ってくれてありがとう」
「にぃ、味は!?味の感想は!?」
「あー、そうだな。うん。そうだな」
「にぃー!?すごく不安な答えなんですけど!?」
冗談だ。美咲は基本何でもできる。料理の腕も確かで、美味しかった。
「冗談だよ。美味しかった、ありがとう」
「でしょでしょー?もう、素直じゃないんだからー。じゃ、美咲にご褒美あってもいいよねー?」
「別にいいけど……何するつもりなんだ……?」
「それはねー……」
美咲の口角がニヤリと上がる。
「美咲とデートしよっ!」
「いやだ」
「なーんーでー!」
「妹とデートして何が楽しいんだよ」
「にぃの初めてのデートをこんな美少女が貰ってあげようとしてるのにー!」
「貰ってくれなくてもいい。ってか、初めてじゃねーし!」
「えぇ!?にぃ、彼女さんいるの!?」
「いねーよ」
「なーんだ、にぃの妄言かぁ」
「ちげーよ!」
「じゃ、準備してくるから、待っててねー!」
「ちょ、美咲…」
「諦めたら?大輝。昔のお母さんもあんなのだったけど、多分何言われても諦めないわよ」
「……はぁ、しゃーねえか。じゃ、美咲が来たら行ってくるわ」
「行ってらっしゃい。帰って来たら、初デートの話、詳しく聞かせてね?」
……こうして俺は、妹とデートすることになった。
第二のヒロイン、美咲ちゃん登場!!!
…嘘です。実妹です。とはいえ、美咲ちゃん、元々いなかったんですよね。
作者が最近ハマっていた小説……題名を丸々出すのはアレですので、「絆され」と書いておきます。その「絆され」のヒロインのグイグイと攻める様を見るのが日課みたいになっていまして。で、その「絆され」が本編完結したんですよね。まあ、それは嬉しいことなのですが、やはりというか「絆され」ロスに陥りまして。「絆され」が投稿されるまでの間、自分の小説でヒロインの様な女の子を出して発作を抑えようとした次第でございます。パクリにならない様、ブラコンや実妹属性をつけました。勝手に他人様の小説を出してしまったので、批判が来た場合、このあとがきは即削除させていただきます。もしかしたら、美咲ちゃんも亡き者になるかもしれませんので、ご了承ください。




