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ゆめみる少年と前を向く少女  作者: 遅めの果物
クラスメイトと夏休み!
25/36

前沢ダイキの憂鬱

[あんた、夏休み中に一回も実家に帰ってこないつもり?今週の木曜日には帰って来なさいよ]


 と、母さんからメールが来たのは、突然も突然、火曜日のことであった。




(しっかし、どうすっかなー…)


 木曜日に帰ってこいっていうのは、あまりにも急すぎる。友達と予定を立てているわけではないが、もし立ててでもしていたらどうするつもりだったのだろうか。


(あ……)


 そこまで考えて気づく。


(やべ…神崎とデートの約束したんだった…)


 そう、一週間に一度のデート。それは、木曜日に行われているのだった。


(栞には悪いけど、事情を話して、謝るしかないか…)


 と。そう考え、どう謝るか、良い案が浮かばず四苦八苦していると、不意にインターホンが、軽快な音を鳴り響かせた。


(…誰だろうか?)


 そう考えながら玄関のドアを開けると、そこには、今ちょうど話がしたい相手が立っていた。


「か、神崎…さん、何用で?」


 やはり、一度いけると言ってしまった約束を断るのは気がひける。そのせいで謎の言葉遣いをしてしまい、神崎が少し不思議そうに顔を傾げる。……だが、すぐに俯き…いや、俺に頭を下げ、言葉を発した。


「あの…今週、実家に帰らないといけないんで、デートにいけません…すいませんっ」


 ……まさかの言葉に俺は驚き、目を見開いていた。


「あの…さ、実は、俺も実家に帰れって言われてて、謝りに行こうと思ってたんだ」


 この偶然、なんと言葉にするべきか


「そうなんですか!?じゃあ、いけるじゃないですかっ!」


 嬉しげな声で、神崎が言う。ただ、何を言いたいのかは分からなかった。


「いけるって…何にだ?」

「デートですよっ!」

「それなら実家に……」


 そこまで言って俺は思い出す。


(そういや、俺ら、実家も隣同士だったわ…)


 ……この偶然、なんと言葉にするべきか……




「じゃあ、木曜の9時に駅集合でな」

「はい、わかりましたっ」


 ……神崎と一緒に実家に帰る約束を取り付けた俺は、とぼとぼと、すぐ目の前のドアまで歩く為に何歩もかけて、歩いていた。


「あ、よかったら、今日もお昼ご飯一緒に食べませんか?」

「喜んで」


 もう俺は、断ることを諦めてしまっているのかもしれない。いや、あの味を食べたら、断れなくなってしまうのだ。胃袋を掴まれるというのは、これほどのものだったのか。人間の食べ物への執着心、おそるべし…




(俺ら二人で帰ったら絶対母さんに誤解されるよ…)


 俺のお母さんは、なんでもハイテンションで乗り切って、誤解が始まると解くのは難しいくせに、早合点するのだけは人一倍早い。悪い性格ではないのだが、息子としては厄介だ。


(あー、実家に着くまで母さんと会うことがありませんように) 


 俺は、神崎のご飯を待ちながら、そんな憂鬱なことを考えていた。


「大輝さーん、出来ましたよー」


 どうやら、こんな憂鬱なことを考えるのも終わりらしい。




「ご馳走様でした」

「お粗末様でした」


 ご飯一粒も残っていないお茶碗を見て、神崎がやはり嬉しそうに運んでいく。その後ろ姿にお礼の言葉を言う。


「美味しかった、ありがとう」

「いえいえ、喜んで頂けたようでなによりです」


 そんな平和な、それでいていつまでも続いて欲しいと思う時間が、もはや日常になりつつあった。

 そんなことを考えている時、ポケットに入れていたケータイが、「ヴー」と、音を鳴らし、震えた。なんだろう、と思い、確認しようとすると、俺の背筋に物凄い嫌な予感が走った。


[なあ、大輝、お前の家着いたんだけど、居ないのか?]


 と、良吾からメッセージが届いていた。やけに静かさが増したように感じるこの空間で、耳を澄ませる…と、隣の部屋からインターホンの音が聞こえてくる。


(今何時だ!?)


 そう急いで時間を確認すると、1時半を回っていた。そこで、俺はあることに気づく。


(良吾と遊ぶ約束の時間、きちゃってるよ)


 やばい、と。そう感じた俺は、鳥原に急いでメッセージを送る。


[ちょっと待ってくれ、すぐにいくから]


「神崎さん、今日は本当にありがとう、急用ができたから、今日はお邪魔させてもらいます、本当に、このお礼はまた」

「わかりました、私こそ、付き合ってもらってありがとうございます」


 きっと良吾はエントランスで待っているはずだ。謝りに行かなくては。そう考えて勢いよく神崎の部屋を飛び出し…


「……なんで、ここにいるんだよ!?」


 ドアを開けて真正面、いや、正確には斜め前に立っていた人物。それは、紛れもなく鳥原良吾であった。


「いや、言ったじゃん、家着いてるって」

「なんでエントランス抜けてるんだよっ!?」

「まあ、そこはちょちょいと」

「ちょちょいと何したんだよ!?」


 興奮している俺を良吾がまあまあと抑える。


「それよりお前、お隣さん家で何してたんだ?」


 それを言われて、俺は思い出す。俺は良吾に、神崎の家から出てくるのを見られたのだ。と。


「こ、これはだな…お昼ご飯を食べさせて頂いてたんだよ…」


 動揺しつつも、あくまで事実を告げる。


「ふーん、ま、いいけど。それよか遊ぼうぜ!」

「あ、言うの忘れてたけど、遅れて悪かった」

「いいってことよ!」


 やはり、良吾は優しい。何より、良吾が深く追求してこなくて助かった。やっぱり、気遣いとかうまいんだよな、こいつ。


「じゃ、入って入って」

「お邪魔しまーす!」


 それとも単に、気づいてないだけかもな、良吾のことだし。





(あの時、エレベーターに乗ってた神崎さんはこの階で降りたよな…?)


 もしかして、と考えていたが、本当のことだったのかもしれない。その根拠として…


(この階に、神崎なんて苗字、一部屋しかないぞ…)


 まだ予想の範疇に過ぎないが、もしかしたら、から、おそらく、に変わった推理をしながら、俺は家に帰っていった。

はい。突然ですが、質問コーナーやめます。

……いえ、やめるといったら語弊がありますね。本当に質問が来た時か、作者が言いたいことがある場合にのみさせていただきます。


さて、良吾名探偵誕生です。今回の話は、久しぶりにゆめみるを書いたので、なかなか文章が下手だったり、登場人物の話し方に違和感があったりするかもしれませんので、もしありましたら、感想や誤字報告で書いてもらえると嬉しいです。


最後に、ご視聴ありがとうございました。どうか、ポイントやブックマーク、感想、レビューも、どうかよろしくお願いします。

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