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ゆめみる少年と前を向く少女  作者: 遅めの果物
クラスメイトと夏休み!
14/36

栞さんと初デート?

(やばい、本当に緊張する…)


 デート当日、俺は約束の駅へと来ていた。まだ神崎は来ていない。まあ、それもそのはず、現在の時刻は午前10時20分、約束の時間の40分前である。きっと、この話を誰かするとほとんどの人はバカなのか、と口にするであろう。当たり前だ、事実、バカなのだから。

 それから待つこと30分と少し。


「あ、ごめんなさい、待たせちゃいました?」


 マンションのある方向から小走りで来た神崎が、こちらに寄ってきてそんなことを口にする。


「いえ、全然待ってませんよ。それに、来るのが早すぎた俺が悪いんですし…」


 事実を言えば30分ほど待ったのだが、そんなこと言えるわけもないし、何より俺が早すぎたのが悪いのだ。


「良かったです。それでは、行きましょうか」


 そういって、神崎が改札を通る。俺もさっきの間に切符は買っておいたので、神崎に着いていくようにして改札を通った。




「とりあえず、昼食にしましょうか」


 電車を降りた俺達は、適当なご飯屋さんに入って、昼食を済ませることにした。


「すいませーん、これ二つください」


 何を食べるか決めた俺と神崎は店員さんを呼び、注文をする。初めてのデートが楽しみだ…とはいえ、話すことがない。やけに長く感じる無言の時間が、それから5分ほど続いた。


「美味しいですね!」

「そうですね」


 料理が運ばれ二人とも料理に少し手をつけたところで、神崎が笑顔でこちらにそう言ってくる。その後も会話という会話はなかったが、もぐもぐ。という効果音がつきそうなほど可愛らしく料理を食べている神崎を見ているだけで、今日来て良かったと思えてきた。


(可愛らしいなぁ…)




「いいよ、俺が出すから」


 二人ともが食べ終わって会計に行くと、神崎が財布を取り出そうとしていたので、静止の言葉を声に出す。


「でも…」

「いつもご飯ご馳走になってるから、そのお礼です」

「まあ、それなら…」


 納得してくれたようだ。元々俺が払うつもりだったが、この台詞、意外と言うのに勇気が必要だった。


(まさか、この人生で口にすることがあるなんてな)


 こんな美少女にこんな台詞を言えるなんて、俺の人生、意外と捨てたもんじゃねえな。

 そんなことを考えながら、水族館へと歩いていた。




「おぉ、すごいな」


 俺は水族館へ着くと同時に、その建物の大きさに驚嘆させられていて、無意識の内に声が上がった。どうやらそれは神崎も同じなようで、「おおー」という言葉と共に目を輝かせている。


「それでは、早速入館券を買いに行きましょうか」


 そう言った神崎に先導され、入館券売り場へと向かった。入館券を買おうとして、財布をカバンの中から取り出そうとする。…と、神崎がそれを手を伸ばして静止してきた。


「どうしたんですか?」

「今日は私が誘ったので、私が払いますよ」


 神崎が平然と、さも当たり前かのようにそう口にする。だが、そんな訳にはいくまい。


「いや、デートしてもらってるだけで嬉しいし、充分お礼になってるから」

「でも、ご飯代も出してもらいましたし、ここは私が…」

「いや、本当にあれは俺がお礼したかっただけだし、好きで、(神崎がうさぎを)好きだから、あげただけだから!」

「ぅ…」


 顔を赤らめた神崎の口から言葉が漏れる。俺も少し経ってからその理由(わけ)に気づき、顔を赤く染める。


(や…やばい…これだったら俺が神崎の事を好きみたいじゃないか)


 おそらく神崎はその程度のことわかっているだろうが、訂正しないと俺の気が済まない。なんだか胸がそわそわとする。


「いや…これはですね…俺が好きにあげたっていう意味で、神崎さんがうさぎを好きだからあげただけというか…いえ、だけってわけではなく、普段のお礼といいますか…」

「…ふふ、そんなこと、わかってますって」


 顔に赤みを残したまま、神崎がはにかみながらも微笑む。


(その微笑みはやばい…)


 神崎の顔を見ると、顔が赤くなって熱を持つ。心臓が高鳴るのを感じ、しばらくは神崎の顔をまともに直視できないだろうと自覚する。


(あ…そういえば…)


 今思い出したが、これは入館券売り場での出来事だ。入館券売り場というぐらいなのだから、水族館に入りたい人はここに集まるわけだ。…つまりは、当たり前なのだが周りに人がいて…

 気づいた時にはもう遅く、周りの人々から様々な目を向けられていた。邪魔だな、という視線などもあったが、ほとんどの視線がイチャイチャしているカップルを見るような、生暖かな目をしていた。

 神崎もそのことに気づいたのか、プシューと音を上げそうなぐらい顔を赤くさせ、俺の服の裾をつまみながら下を向いていた。


「す、すいません。高校生の2つください!」


 俺はなんだかいたたまれない気持ちになり、急いで入館券を買って入口の方へと早足で歩いて行った。

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