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ゆめみる少年と前を向く少女  作者: 遅めの果物
クラスメイトと夏休み!
13/36

栞さんの恩返し

「で…なんの要件なのでしょうか…」


 神崎に呼ばれて家に入ったのだが、肝心の要件を聞かねば話にならない。女子相手にこちらから振れる話題も持ち合わせていなければ、勇気も持ち合わせていないのだ。


「ぬいぐるみのお礼の件なんですけど…」

「そ、それはもういいですって。こっちからあげたのにお礼なんて要りませんよ…」


 覚えられていた。しかも、今更になってまだお礼をしたいと言われるとは思ってもいなかった。


(どんなことを言われてもやんわりと断ろう)


 俺はそんなことを考えていた。……神崎の言葉を聞くまでは


「明々後日って用事ありますか…?よかったら、一緒に水族館へ行きたいんですけど…」

「 ぇ…?」


 唐突すぎる言葉に、気の抜けるような声が口から漏れ出す。


「そ、それは、二人でってことですか?」

「う…うん。そうなんですけど…」


 まさかのお礼にデートときた。そもそも、お礼は断ると決めていた俺だが、どちらも条件が対等ならばそれは遊びやデートの類となるので断りはしない。なんだったら喜んで行く。


(まあ、素直に喜べるかはわからないが…)


 なんて理屈を並べてみたが、ただ違和感ないように前言撤回したいだけである。端的に言えば、デートをしてみたいだけとも言えるだろう。…そもそも、お礼にデートというのは何かおかしいような気もするが…まぁ、そんなことは捨て置いて良いだろう。


「ぁの…その…良い、ですか…?」


 神崎が非常に顔を赤くし、上目遣いで問うてくる。


(か、可愛い…)


 正直、これを目にすると断ることなどできない可愛さを今の神崎の顔は秘めているのだが、肯定するにしてもなんと言葉に表せば良いのかがわからない。そもそものコミュニケーション力と女子耐性が低いのもあり、正解の返答を導き出すどころか、候補の一つも湧き出やしない。


「まあ、それは良いんですけど…」

「それでは、11時に駅集合でお願いします。お昼ご飯も食べに行きましょうね」


 神崎が、笑顔でそんなことを言ってくる。


(やばい、緊張してきた)


 今のうちから緊張していたのでは明々後日にはどうなるのだろうか。


「じゃあ、せっかくなんでご飯、食べていって下さいよ」


 結局、俺は疲れていたのでご飯を作る気力も出ず、神崎のご飯をご馳走になった。




 翌日。昼に良吾からメッセージがきた。

 

 [今から圭介と飯食いに行くんだけど、大輝も行くか?]

 [わかった、どこに行けば良い?]


 なんやかんや、学校外で友達と昼ごはんに誘われるのは初めてである。


 [えーとだな、マンションを出てすぐの大通りの右っ側にあるラーメン屋わかるか?]

 [うん、ま○と屋だよな?]

 [そうそう、そこ集合で]




 用意を済ませ、良吾に指定された場所へすぐ向かうと、もう二人は着いていた。


「じゃ、入るか」

「うん」


 友達との外食が初めてなもので、何をしたら良いかがわからない。いや、何もしなくて良いのだろうが、食べている途中の会話が何を話したら良いものかわからない。


「あ、俺このAセットで」

「僕もAセットでー」

「じゃ、じゃあ、俺もそれで」


 店に入った俺達は、注文をする。とはいえ、ここに来たことがないので、二人に合わせるしかない。


「ここのラーメン、めっちゃ美味いんだぜ」

「うんー、美味しいよー」

「そうなんだ、楽しみにしとくわ」




(たしかに、これは美味そうだな)


 注文して少しすると、具沢山のラーメンが運ばれてきた。鳥の出汁を使っているらしく、この店では牛の出汁を使ったラーメンと対をなす人気メニューのようだ。


「「「いただきます」」」


 ラーメンが運ばれてきて、すぐに俺達は全員ラーメンに手を伸ばした。


「…美味いな」

「だろ?オススメだったんだよ、ここ」


 ラーメンに少し手をつけると、俺の口からは自然とそんな感想が出ていた、野菜がたくさん入っているのに、一つ一つに味が染み込んでいる。かといってラーメンのスープは野菜の味だけでなく、鳥の出汁がきちんと良い味を出していた。少し太めの麺に、スープが絡まり、また良い味を引き出していた。

 そこから俺達は、食卓にズルズルという音だけを鳴らしながら、ラーメンをすすった。




「なあ、二人とも、明後日またプール行けるか?」


 みんなが食べ終わった頃に、良吾から声がかかる。


「いけるよー」

「俺もいけ…」


 いつものように肯定の返事を返そうとするが、あることを思い出す。


(あ…明後日ってデートの日じゃん)


 今まで用事という用事がなかったので、遊ぶのを断ることがなかった。だが、今回は断るしかなかろう。


「ごめん、やっぱ行けないわ」

「へー、大輝にしては珍しいな。どっか行くのか?」

「まあ、水族館にな」

「友達とか?俺達意外と話してるの見たことないのに…珍しいな」

「ま、まあ、友達じゃあないんだけどさ…」

「もしかして、彼女か!?大輝も居るのかー…」

「ちげーよ。お隣さんとだ」

「え?お隣さんと?珍しいな…これは裏がありそうだ」


(あ…やべ…)


 言ってから気づいたことだが、別に真実を言う必要などないのだ。適当に嘘をついて誤魔化せばよかったのだ。


(今から取り消しても余計に怪しいだけだしなあ…)


 これは俺の癖だ。友達を作ったことがないので、コミュニケーション力が圧倒的に欠如している。なので話すことは大体真実であり、嘘をついた方が良い場面でも良い嘘が頭の中に浮かび上がってこない。


「ま、仕方ないか。じゃ、明後日は圭介と二人だな」

「おっけー」

「ごめんな、また誘ってくれたらそんときは行くわ」

「別に良いよ。遊ぶのを断られる程度で怒るやつなんかいねえって」


 こんな言葉が良吾の口からすんなりと出てくるのは、そうあるべきと思うべくもなく、当たり前だからとしか思っていないからだろう。


「ありがとうな」


 その後、俺は良吾達と一緒に俺の家へ来ていた。


「悪いな、何度も大輝の家来ちゃって」

「いいよ。別に困ってないし、遊べるならそっちの方が楽しいし」


 その後も、特に変わったことはなく時間は過ぎていった。いつものように遊んだ俺達は、いつもの時間になると、いつものように帰っていった。


(楽しかったなぁ)


 俺は、そんなことを考えていた。いつもと違うことが良吾達に起きているとは知らずに。



「なあ、あれ、神崎さんじゃないか?」


 俺は、エレベーターが開くと共に、こんな場所で見かけるとは思っていなかった人を見かけ、衝動的に圭介に話しかけていた。


「そうだねー、ここに住んでるんだー」

「つまり、大輝は神崎さんと同じ中学校で、同じマンションに住んでいるってことか?」

「しかも、同じ階だねー」


(もしかして………いや、まさかな)


 俺は、頭の中に浮かんだ可能性を振り切るように頭を振り、圭介と共に歩き出した。

「おーい、大輝。質問返信コーナーだぞー」

「またやんの?これ」

「当たり前だろ、これから毎回やっていくぞ」

「まじかよ…本当に怒られない?」

「それじゃー質問だよー。何でゲームやご飯屋さんが現実にも在るものなの?」

「それはな…作者が、考えても良いのが思いつかないし、何より読者様がわかりやすいものが良いと思っているから、らしい。一応名前は出してないけどね」

「そーなんだー、それじゃーまた次回ー」

「これ、本当に俺いる必要ある?」

「それはあるでしょー、だって…」

「ごめん、やっぱその先は言わないでくれ。俺のメンタルが削られるから!」




というわけで、ご視聴ありがとうございました!

良吾君が何かに気づき始めているようですね…これからどうなっていくのでしょうか。私もワクワクが止まりません。


最後に…この作品を少しでも面白いと思ってくださった方、ポイントや感想、レビュー、ブックマークをしてやって下さい!お願いします!

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