表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/5

その5『良子のママよ永遠に』


 さてさて、ここは生真面目キーマさんのパソコン前。

 古き良き時代のテンプレとも言うべき、王道RPGを小説として描いているタクローのサイトへとやってきた。実は、キーマさんは懐かしい思いを感じながら、誤字の多いこのお話をブクマまでして読んでいたのだ。しかし、今日は酷かった。

「うわ、何これ」

 まず、魔王の喋り方。うーん、これは味? こういう魔王がいないって確証はないしね。

 患者って、賢者のことだよね。

 浜の剣って……破魔の剣ってことだよねっ

 「良子のママ」って「よし、このまま」ってことだよね!

 っていうか、キラキラ刻んでいく、って何? これって削除でいい感じ!?

 もしや切り刻む?他に何か意図するところでもあったりする訳!!?

一瞬悩みはしたが、キーマさんは最近実装された誤字報告のボタンをすぐに押していた。


 ところ変わって、卓郎は飲み過ぎて頭が痛い。背広のままベットに突っ伏し、まどろみ、鼾を掻き、うとうとし、寒気を感じていた。さらに、動きたくないのに、尿意を感じ始めている。起きなくては……。むっくり起き上がった卓郎は用を足して、すっきりした後、小説サイトを開いてみた。サイトを覗くことが何となく癖のようになっているのだ。

 新着誤字報告があります。

 誤字か……。

 卓郎はずきずきする頭を押さえながら、全ての誤字を確かめることなく採用し、そのまま朝までの眠りに就いたのだった。

 とりあえず、影の魔王『卓郎』は酒に溺れ自滅した。



 なんとか形勢逆転を果たした勇者一行は再び城へと報告に向かった。

「王様、これが魔王の遺髪にございます。どうぞお確かめください」

跪き、頭を床すれすれにまで擦りつけ、勇者一行は深々と頭を下げていた。ここまでするのは、もちろん礼儀からでもあるのだが、あの小さい少年の呪いを実はまだ恐れているからだった。ここまで頭を下げていれば、見たくない者も見なくてすむ。目を瞑っていることにも気付かれない。

「よくやった。褒美を授けよう」

魔王の遺髪を確かめた王様は声高らかに勇者たちの労をねぎらった。

「ありがとうございます。実は、我々もお願いしたきことがありまして……」

「よかろう、言ってみるが良い」



 その国にはかつて魔王を倒した英雄の銅像がある。この世を闇の手から救った英雄は今も称えられ、足下には平和を願うためのコインが置かれ続けている。

 

 これは、卓郎の小説最後の一文である。しかし、卓郎は知らない。その銅像が良子のママであることを。


 勇者たちは思ったのだ。あの煌めく老婆が神の使いだったのだろうと。そして、最初に現れた時に、無下に扱ったせいで我らに呪いが降りかかったのだろうと。




「崇めるべきは、あの老婆の姿をした光の女神です」

四人の猛者が口を揃えて国王に嘆願したのだ。



最後までお付き合い下さいありがとうございました。

ちなみに卓郎は「『よし、このまま行けるところまで行くぞ』その声と同時に飛び出した目映い光が容赦なく魔王を『切り刻んでいく』」と書きたかったようです。まぁ、意味としてはキラキラでも通じるのかもしれません。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 笑えました! 小説の世界と作者の世界というメタフィクション的構造の中で、誤字というねじれ要素で笑いを誘う手法、とてもうまい(なんか偉そうな物言いですいません)なぁとひたすら感心しております…
[良い点] とても楽しく拝読しました。個人的に「良子のママ」が一番の笑いどころでした。 もう銅像にこれ以上相応しい人物はいませんね。 [一言] 企画から拝読しました。卓郎さん、スマホ執筆お疲れ様です…
[一言] 企画運営お疲れさまです。 こちらの企画のおかげで、とても素敵な作品に出会えてほくほくしています。 瑞月さんの作品、なろうで執筆している方であれば、もうみなさん「あるある」と首を赤べこのよう…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ