2段目
確かに、僕は答えを言った。π/2と。
そして、白い光に包まれた。
しかし、目の前にはさっきと同じ風景が広がっている。
まあ、そもそも答えたところで何にもならない、という可能性が高い。
「ね〜え〜、ホントにさっきのって、合ってるの?」
「合っている。間違いは無い」
「実は、違ってたりして?」
「否定しきれないが可能性は零に限りなく近い」
「でもさ、何にも起きなかったもん。絶〜対、違う」
「君はなぜ一次元で物を考える」
「イチジゲン?」
「つまり、一視点という事だ」
「イッシテン?」
「だから、一つの考え方しか出来ないのか、という事だ」
物分かりが悪い。苦手だ。
「ここでの論点は、問題の答えではない。ここがどこか、どうすれば出られるか、この式の意味は何か。この三つだ」
「ほえ?」
そう言ったきり、それは言葉を発しなくなった。
僕は落ち着いて考える。
そもそもここはどこか。ここに来る前の最後の記憶は・・・覚えていない。記憶が曖昧になっている。学校からの帰り道だったかもしれないし、登校中だったのかもしれない。あるいは寝ようとしていたのかもしてないし、起きたところだったのかもしれない。
次に、どうすれば出られるかだ。試に壁を押してみる。硬い。古城の壁、と言った所か。壁を壊す道具は無いだろう。荷物は何も持っていない。
となると、やはりこの数式が何らかの意味を持つのだろうか。
そう思い、もう一度壁に書かれている数式を見てみた。
そこに書かれていたのは『Σ^{n}_{k=1}{i^k}』
「おい、ここはさっきまでとは違う場所らしい」
そう藤原に言ってみた。
「どうして分かったの」
「数式が変わっている」
「どれどれ」
そう言ったきり、声が聞こえなくなった。
僕は式の意味について考えてみる。
多分、『^』は指数という事だから、シグマに付いている方は上に書く文字の事を言っているのだろう。『_』は下に書く字の事だろうか。
そう考えるとこれは、1からnまでのそれぞれを乗数とした虚数単位の和、という事になる。
虚数単位iの2乗は−1。3乗は−i。4乗は1。
四つに条件分けをすれば簡単か。
「これって、数式なの」
どこからか声が聞こえてきた。
「ああ、恐らくそうだ。意味としては、1からnまでのそれぞれを乗数とした虚数単位の和、ということだろう」
「ほえー。で、その心は」
「そんな振りに乗ってやるような気概は、生憎ない。もう少し考えさせてくれ」
「ぶー」
抗議の声は無視する。
nが4の倍数なら、解は0か。nを4で割った余が1なら解はi。その余が2なら解はi−1。3なら解は−1。
これで合っているだろう。
「答えは、nを4で割った余が0なら0、1ならi、2ならi−1、3なら−1」
僕がそう言うと、この前と同じように体が白い光で包まれた。