vsゴブリン!
さて。
困ったぞ。何が困ったかって?外を見れば一目で分かる。
私は今、小屋の中に立て籠もっている。何故か。
「ゴルゴル!ルルルゴ!」
「ゴルルル!ゴル!」
「ゴル!ゴル!」
恐らく私が倒した小鬼の仲間なのだろう。復讐に来たのかは分からないが、小鬼の群れに小屋を包囲されてしまったのだ。
その数約10匹。頑張れば倒しきれないことも無いが、それには危険が伴う。
一匹一匹相手をするのなら何の問題も無いのだが、いっぺんに襲いかかられてしまうと対処しきれずに負けてしまう可能性が高い。今はまだ小鬼達も警戒しているのか、直接小屋に乗り込んでくる気配は無いが、それがいつ途切れるかは分からない。
この世界に転生してから1週間と1日。早くも命の危険に晒されてしまった。
さぁ、どうしよう。
今の私には集団を一掃するような力は当然無い。なので必然的に各個撃破の戦略を取るしか無い。
となると……悩んでいてもしょうがない。相手が仕掛けてくる前に、こっちから仕掛けてやろう!
こんな時の為に遠距離攻撃用に岩を蓄えて置いたのだ。でも、数はそんなに無い。小鬼の数よりは多いけど、外したりしたらすぐに岩が尽きてしまう。
慎重に、正確に、確実に殺す気でいこう。
……それ!
「ゴギャ!?」
よっし!頭を狙ったのだけど外れて胸の辺りに命中。でも、胸に当たっただけでもかなりのダメージにはなる筈。
…うん。間違いない。その小鬼は苦しそうにもがいた後、動かなくなった。これで岩による投擲の威力は保証された。
「ゴルゴル!?」
「ゴル!」
ふふふふ。慌てふためいているな。今がチャンス!
「ギャッ!?」
「ギャル!?」
ぼーっとしている小鬼から狙いを定めて投げる!この調子で……!
「ゴルルル!ゴル!」
バキッ!
げっ!?あいつ私の投げた岩を打ち返した!?
元々私が投げた岩の速度が速かっただけに、打ち返された岩の速度も早く、私の作った小屋の壁を簡単に貫通して後ろにある木にめり込んでしまった。
やばいな。あれが直撃してしまうとたまったものじゃないぞ。
「ゴルゴル!ゴルルルルル!」
しかも私の投げる岩が打ち返せることが分かったからか、全員手に持っている棒を前に掲げ始めた。
思ったよりも知恵はあるし、統率が取れているようだ。でも、それなら!
「ゴルゴル!」
バキッ!
「グギャ!!?」
2つ同時に投げてやればいい。岩は勿体無いが、この際とやかく言ってはいられない。1発目は流石に打ち返したが、2発目は対応しきれずにそのまま胴体に直撃。これで残りの小鬼は6匹。
最初に比べると生存確率はかなり上がった筈!
「!……ゴー、ゴー、ゴルルル!」
が、本番はここからだ。とうとう奴らが突撃をかましてきた。が、焦るな私。奴らの移動速度は遅い。小屋に到着するまで少しでも数を減らそう!
「グギャ!?」
「ギャッ!」
残り4!
「ゴル!」
くそっ!外した!
「ゴルルルルル!」
バキッ
打ち返されたかっ!このくそ!秘技乱れ投げ!
「ゴルギャガッ!!?」
残っていた岩を手当たり次第に投げてやる。下手な鉄砲数撃ちゃ当たるだ!これで残りは3匹!
バキバキバキバキ!!!
残った小鬼が私の小屋に辿りつく。元々の作りが甘い為、小屋は簡単に崩れ、私の身を守るものは無くなった。
「ゴルゴルゴル!」
「ゴル!」
「ゴゴルル!」
小鬼達は小屋を壊したことにより、私を完全に追い詰めたのだと勘違いしたのだろう。3匹は私を囲むように立つと、ヘラヘラと笑い始めた。
……愚かだねぇ。
きっと、この小鬼達はこれまで絶対的な死の危険に晒されたことなど無かったのだろう。だから目の前にある死の脅威を即座に始末することは無く、ヘラヘラと笑い、見下すことで優越感に浸る。
それがどれだけ命取りか。
どれだけ危険な行為か。
自らの命を危ぶめる存在は、可能な限り排除しなければならない。
自らに、生きる意志があるのなら!
「ゴ、ル…?」
「ルルゴ……?」
油断していた目の前の2匹の小鬼を思いっきり引っ掻いてやる。肉はえぐれ、血は出ているが致命傷には至っていない。むしろこれまでの攻撃に比べると圧倒的に弱い。
小鬼達もこの攻撃が大した威力を持っていないことを知ると、更に笑いながらながら私を見見下し、棒で叩き、蹴りを入れてくる。
それに対し私は反撃をすることも無く、ただただ攻撃を甘んじて受けることにする。
幸いにもこいつらは既に私を即座に殺すつもりはないらしく、どうやら痛ぶってから殺すつもりのようだ。
小鬼が私を即座に殺さない。
この時点で私の勝ちは決定した。
「ゴー……」
「ルー……」
小鬼達が私を痛ぶり始めてから暫くすると、私が引っ掻いた小鬼に異変が現れ始めた。そう、『感染』だ。
突然虚ろな目になった2匹を見て、唯一正気の小鬼は2匹を訝しげにしていると、
「ゴギャルル!?」
感染した2匹が正気の小鬼を襲い、殺してしまった。それはもう、ぐちゃぐちゃに。
感染した魔物は死人を敵とはみなさないのか、残った小鬼を始末すると何時ぞやの小鬼のようにフラフラとどこかへ行ってしまった。
他には誰かの気配は無いな。……よし。
初の防衛戦!私の完・全・勝・利!
小屋は壊されちゃったけど元々そんな強度は無かったし、また作ればよし!私自身にも目立ったダメージは無いし、何の問題も無し!
むしろ私でもある程度は戦えることが分かっただけでも儲けものだ。思った以上に投擲の力は強かったし、感染も中々馬鹿に出来ない。
後は能力のLvが上がってくれれば言うこと無しなんだけど、上がって無いかなぁ?
『観察Lv1 感染Lv1 SP120 LvP120』
ん?Lvこそ上がって無いものの、項目が増えている?SPとLvP?
んー……これ、もしかしてSPとLvPって意味の略だったりしないかな?
ほら、ゲームとかで溜まったポイントを振り分けると欲しい能力がもらえたり所持している能力を強化したり、とか。あんな感じのやつ。
でもさー新しく項目が増えたのは嬉しいんだけど、使い方が分からないんじゃどうしようもないんだよね。
何?SPを全て『観察Lv1』に全て振り分ける!……とでも念じればいいの?
あーもう。説明書かなんかが欲し……
【SP120を『観察Lv1』に振り分けます。『感染Lv1』の上限値に達成。『観察Lv1』を『観察Lv2』に強化します】
おぉ!?なんだ今のは!急に頭の中に声が響いて来たけど、喋っていた内容からして私の予想通りだったのか!?観察のLvが上がったとか言ってたけど、何か変化はあったのだろうか?
とりあえず試しに墓石を観察してみよう。
『人間によって加工された墓石』
おぉ!相変わらずシンプルな感じだけど得られる情報が多いのは嬉しい!
なら岩は?
『岩』
いや、うん。まぁそうだよね。岩にポテンシャルを求めてもしょうがない。でも植物なら!
まず雑草!
『アラカラネ草』
雑草に名前が付いた!次は木!
『アラカラネの木』
これにも名前が付いた!
いや、素直に嬉しい。転生してからこんなに興奮したのは始めてだ!
よし。これは他にも色々試してみるしかない!