第61話
朝食が終わると、ラ・カームは屋敷の裏手に出て体を動かしていた。
柔軟を終えてから、愛用の短剣を取り出し上段・中段・下段と反復して剣の動きを確かめる。
一時間程度基本動作を終えた後は、技の連携の練習に入った。
最初はゆっくり、徐々にスピードを上げていく。
ラ・カームの剣技は圧倒的なスピードが持ち味で、その上に剣にかかっているエンチャントの雷属性もある。
キヌアの屋敷からサーシャとキヌアが見ていたが、キヌアですら称賛の声が上がるほどラ・カームの剣は速く美しい軌跡を描いていた。
本気でラ・カームが剣を繰り出すと目で追えないほどであった。
ラ・カームは合計三時間ほどの稽古を終えてキヌアの屋敷に戻った。
「ラ・カーム様お疲れです」言ってサーシャが冷たい果実水を持ってきた。
「ありがとう」ラ・カームは美味しそうに果実水を飲んだ。
「ここに来るまで稽古できなかったから、ちょっと体を動かしたくて」
「すごい動きですよー、ラ・カーム様、ダナ・カシム団長より上なんじゃないですか?」
「団長にはまだまだ追いつかないよ、ちょっと前だけど手合わせしてもらったときに強さが分かったんだ、圧倒的な差がある・・・実戦の差というのかな・・・」
「でも、シュナイゼル団長にも勝ったんだし」
「あれは、シュナイゼル団長が手加減してくれたからだよ」
「ラ・カーム様は謙遜しすぎですよ、まあそこがいいところなんですけどね」
「決めたみたいですね」サーシャは言葉を繋げた。
「うん、ソード・オブ・ラーは僕が破壊する、その上で、イグニクェトゥアとは和平を結ぶ、それが僕のすべきことだと思う」
「ラ・カーム様なら絶対できますよ、私はなんだってやります!」
二人ともそれがどれほど大変なことか、十分に分かっていた。
ソード・オブ・ラーは現国王ラ・ヌカが常に帯剣していて、話し合いでどうにかなる筋合いではない。ソード・オブ・ラーは一本でラ・カーム王国を築き上げた剣であるし、ラ・ヌカ国王自身も剣の腕前は相当なものである。
そして、仮にソード・オブ・ラーを破壊できたとしても、イグニクェトゥアとの和平となると全く糸口も見いだせない状況である。
ラ・カームは千年伝承の皇太子といえども、国王ではなく、ラ・カーム王国を代表する立場にはない。
それでも、ラ・カームの目は輝いていた。




