第59話
その後ラ・カームの率いるダ・ゴール軍はダ・ゴールのある南海岸、現在王都ラーのある中央平原、金の算出される中央山地、北部森林の一部までを支配地域としたところで正式に『ラ・カーム王国』と名乗った。
ただ、ラ・カーム軍の進撃が続くにつれて、イグニクェトゥア側の戦い方も変わってきた。
ラ・カーム(その時はすでに王と名乗っていたが)一人に対しては確かに、数万の軍勢でも敵わないが、その他のラ・カーム軍はイグニクェトゥア正規兵に対して脆い。
そこで、最前線よりも後方に回り込んでのゲリラ戦や輸送部隊などの兵站破壊工作などを始めるようになった。
イグニクェトゥアの作戦により、ラ・カーム軍の侵攻スピードは緩慢となり、ついには北部森林までで完全に止まってしまった。
その当時ラ・カームはすでに二十五歳となっていた。
初代ラ・カーム王はその後も度々イグニクェトゥアを侵攻するが、一進一退が続き三十歳となったとき、忽然と歴史からその名前が消えた。
ラ・カームの持つ剣は「ソード・オブ・ラー」と名付けられ、その後代々王家に伝わることとなる。
その類まれな能力と一代でラ・カーム王国を創った実績から初代王を神と崇めるものも多く、現在でも初代王が生きているという伝説を信じる者もいる。
「ある程度のことは僕も知っています・・・、けど、ソード・オブ・ラーにそんないきさつがあったのですね」ラ・カームは青ざめた顔でそう言った。
「ソード・オブ・ラーは呪いの剣です、今もラァ様やラナ様の生命、お二人にかけられている回復魔法をも吸い取ってラ・カーム殿下に力を与え続けている」
「ソード・オブ・ラーを破壊すれば・・・」
「おそらくは、力の流れが止まるでしょう」
ソード・オブ・ラーを破壊する。
ラ・カーム王家を守護する存在であり、王国の象徴でもある剣、それを破壊することは王家の人間でなくても王国の人からすれば考えられることではない。
キヌアがイグニクェトゥア側の人間であり、ラ・カームを騙している可能性もある。
ただ、ラ・カーム自身に起こっていることは、今の説明で最も納得のいくことであった。
そして、ラ・カーム自身が漠然とそう感じていた。
「やるしかないよね、ラ・カーム様」サーシャが元気よく言った。
「サーシャ、君は関わらないでいいよ、これは僕の戦いだし、王家の問題だよ」
「ラ・カーム様、私のこと心配してくれています・・・?」
「それはそうだよ、ソード・オブ・ラーを破壊するなんて、企てただけでも、王国であれば死罪だよ、サーシャを巻き込むわけにはいかない」
「うん・・・でも、もーここまで連れてきちゃったんだから、私も同罪だよ」
「ばか、ありがたいけれど、ロズオブニアにいれば王国は手が出せないから」
「私がラ・カーム様のためになにかしたいっていうのは理由になりませんか」
二人の会話が平行線になりそうなので、キヌアが割って入った。
「どちらにしても、ソード・オブ・ラーを破壊するにはそれなりの準備と覚悟が必要です・・ラ・カーム殿下がそうされるならですが、今日はゆっくりとお休みください、サーシャも殿下を客室にご案内して」
「はい」ラ・カームはまだサーシャを説得していたかったようだが、キヌアの言葉に従った。




