第42話
名前は「星の宴」
店内は薄暗く、いかにもデートスポットといったところだった。
店員は三人に気付くと、まっすぐに駆け寄ってきた。
「本日はありがとうございます、軍団長様」
「この前食べに来た時美味しかったから」ファ・ゴートが言う。
「ありがとうございます、どうぞこちらへご案内します」
奥にあるVIP席へと案内された。
「ご注文はいかがなさいますか」
「この前のやつでいいかな、羊のなんとかと言っていたけど」
「はい、承りました」
「ゴートお兄ちゃんはよくこういうところ来るの?」ラ・プレが聞く。
「クェトゥアの店はけっこう回ったよ」
「まあ、ほとんどこいつと一緒だな」リザ・ナッシュを指しながら言う。
「あーなんだかうざいくらいに趣味が合うんだよな」リザ・ナッシュも毒づいた。
「お兄ちゃんは二人とも仲がいいよね、ラ・プレはうれしいぞよ」茶目っ気たっぷりに言う。
『全然仲良くないから』ハモってた。
それを見てラ・プレが大笑いしていた。
「二人とも絶対仲いいよ、二人がほんとに私のお兄ちゃんだったらよかったのに」
「ほんとの兄妹もいいけどさ、それだと結婚できないじゃん」リザ・ナッシュが言う。
「結婚??」ラ・プレが驚いたような声を出した。
「結婚かー、考えたこともなかった」
「ラ・プレは彼氏にしたい人の条件とかある?」
「うーん・・・・」
「大切にしてくれる人かな」
『大切にします』また、はもっていた。
「ゴートお兄ちゃんも、ナッシュお兄ちゃんも大好きだよ」
「あ・・・ありがとう」ファ・ゴートが言った。
「なに代表して言ってるんだよ、俺も言われているって」
三人で話していると料理と飲み物が出てきた。
「わーおいしそう!」ラ・プレがはしゃいだ。
「ほんとおいしいから」ファ・ゴートが得意げに言った。
「羊肉の香草焼きです」ウエイターが説明した。
「いっただっきまーす」ラ・プレが元気よく料理にかぶりついた。
「おいしー!!」幸せそうな顔をしてラ・プレが言った。
「うまいよね、ここ」リザ・ナッシュも同意しながら食べた。
三人が食べ終わると、ミルフィーユケーキが出てきた。
「あれ?だれか頼んだ?」
「こちらは、当店からのサービスとなります」ウエイターがそう言ってお辞儀をした。
「きゃー、ミルフィーユ好き!!」ラ・プレが言った。
「ありがとう、悪いな」ファ・ゴートが代表して言った。
「皆様はイグニクェトゥアの希望ですから」
緑軍団長ユ・ネルは作戦後の休暇にも関わらずユ・ガルーダで空を飛んでいた。
「まだまだだな」
そのスピードはパク・ドラゴンをはるかに超え、ラ・カーム軍のグリフォン部隊をも超えているが、ユ・ネルは満足していなかった。
スピードを出せば空気抵抗も増して体がぶれる、また軌道修正も難しくなり目的地点へ到達が難しくなる。
それを魔術によってコントロールしているがユ・ネルにとってはまだ不満なスピードであった。
ユ・ネル直属の魔術兵団四千名がユ・ガルーダに特化した訓練をしている。
現在イグニクェトゥアで対策が急がれているグリフォン部隊対策にもなっている。
魔術兵団もユ・ネルと一緒に飛ぶことが好きだったし、今回の休暇も一緒に飛ぶという申し出があったが、命令によって全員休暇させている。
・・・一万機のグリフォンか、荷が重いな。
考えながらユ・ネルは上昇を続ける。
青い空を飛ぶのは好きだった。
風魔法使いになる前から、空は憧れだった。
ドラゴンに乗って飛ぶよりも、自身の魔法で飛びたかった。
魔術学院からアカデミーへと進学してもただ、飛ぶことだけを極めていった。
風魔法の中でもマイナーな分野であるが、ユ・ネルは空中からの集団攻撃という分野を切り開いていった。
その功績が認められ、いつしか軍団長にまでなっていた。
・・・どうする。
高度限界で高速飛行しながら考えた。




