第4話
魔術院は五大魔法のうち、一つの系統について一つの術式が唱えられるものをテイマー、三つ以上の術式を唱えられる者をマジシャン、五つ以上であればマスターと認定していた。
魔術院からマスターと認定されるのは一年に一名出るか出ないかであり、マスターの認定を受けたものはたいてい、魔導士として生きることになる。
しかし、この少女ミルシャは水系統のマスターとして認められながらも、近衛団に入団した。
たしかに、近衛団に入団するには少なくともテイマーでなければならないが、現在在籍している三千人の近衛団の中でもマスタークラスの者は教官職を除けば皆無である。
ミルシャについては、十五歳でテイマー、十六歳のうちにマスターまで登りつめ、天才少女は魔導士として生きると誰もが思っていたが、魔術院からの推薦もあり近衛団に入団していた。
この人事については疑問の声が多々あったが、十八歳にして王家の教師になるのを見て、周囲もこのための人事であったかと納得した。
王女や皇太子を守るのは近衛団の仕事であったし、今回に関しては王女には防御結界についての教育が必要である。
さらに、年齢的にも若い人からというものも考慮されたであろう。