第31話
「グリフォンは五百機か・・・」イグニクェトゥア本陣で指揮を執るカイ・ロキが呟いた。
「地上部隊もあと一時間あれば、赤軍が敵を突破し包囲戦になるかと思います」副官のアクサが言った。
「しかし、ダナ・カシムはなぜ紫軍を攻めたかな」
「赤軍より組みやすいと考えたのでは?」
「それもあるが・・・」
紫軍は雷魔法の術者がそろっており、対空攻撃に特に有効である。
もし、グリフォン部隊に増援があれば、パク・ドラゴン部隊では防ぎきれず紫軍の術式が必要になる。
今までの情報からも、グリフォンが五百というのは少なすぎる。
「はめられたか・・」カイ・ロキがつぶやいた。
「カイ様どういうことですか?」アクサ・シロが尋ねた。
「紫軍に伝令せよ、リザ・ゼロを最大限に放出した後撤退しろと、他の部隊も順次撤退、黄軍については、パク・ゴーレムを出せるだけ出し、殿を務めるように」
「カイ様・・・はい」アクサはカイの意図が分からなかったが、カイの判断については現状絶対であった。
リザ・ゼロは雷魔法の最高位術式で強烈な竜巻・雷が発生する。
ただ、効果が大きすぎ紫軍が最大限で行えばこの戦局では両軍ともに戦闘不能になるだろう。
「カイ殿は俺の軍が持ちこたえられないとでも思っているのか」リザ・ナッシュは激高した。
しかし、撤退となれば、紫軍だけがこの場に残るわけにもいかない。
リザ・ナッシュはリザ・ゼロのため魔術兵団を集め指示をしながら、自身は現在の最前線である四層付近まで赴いた。
「せめても」リザ・ナッシュは言い、自軍の将兵を数百人は倒したであろう北部方面軍第一師団長ロゼの前に現れた。
「リザ・ナッシュか」ロゼが愛馬とともに、リザ・ナッシュに突っ込む。
その瞬間、リザの放ったリザ・グラウンドの雷が天空を割き、ロゼを貫く。
「くっ」
その言葉を残し、ロゼの体はこの世から消滅した。
地上でのこのやりとりは数十分であったが、その間に航空戦では劇的な変化が表れていた。
グリフォン部隊が七千機まで膨れ上がり、パク・ドラゴン部隊はほぼ壊滅していた。
「このまま、イグニクェトゥア軍本体を叩く」南部方面軍団長アリヌ・リセは配下に合図をし、そのままイグニクェトゥア軍方面へ向かった。




