第28話
「キューゼル、一時間後に俺が半分連れて突っ込む、南部方面軍と連携、俺のフォロー頼む。編成は終わっているな」
「はい、団長。しかし敵軍は戦線が伸び始めています。完全に伸びきってしまえば自然とこちら側の優勢となります」
「それでは、遅い。理由は勘だ」
「了解しました」
ラ・カーム王国の採用する鎧は黒をベースにしている。
北部方面軍は左胸に赤の王国紋章が施されており、ラ・カーム王国の子どもたちの中では北部方面軍の鎧は英雄の証とも言え、尊敬の目で見られていた。
対するイグニクェトゥアの採用する鎧は白をベースにしており、五軍はその名の通り名前と同じ色のラインが左胸に施されており、それぞれの魔法属性の名誉を背負っている気概があった。
両軍とも編成と呼び名は対応しており、十名を単位としてそこに小隊長がおり、十個の小隊百名を束ねる中隊長、それを十個束ねる大隊長、大隊十個総勢一万人を束ねる師団長、その師団長を軍団長が束ねていた。
北部方面軍には七師団が存在する。
その七名の師団長を北部方面軍団長ダナ・カシムと副官のキューゼルが統括していることになる。
ダナ・カシムは七名の師団長と七十名の大隊長を呼び作戦を伝えた。
「ロゼの第一師団、キースの第二師団、ナーガの第四師団、ロイの第七師団は俺と一緒に突っ込む、残りはキューゼルとともに俺を援護してくれ、南部方面軍もじきに到着する」
第一師団・第七師団は騎馬隊であり、第二師団は弓兵、第四師団は軽歩兵であった。
機動力に優れた四師団が選ばれたということになる。
残りの第三師団は重歩兵、第五師団は攻撃魔法、第六師団は防御魔法中心の構成となっている。
「敵さんは五軍全て投入してきているが、戦線は伸びつつあり、俺らが突っ込んでいる間に南部方面軍の航空部隊が来援すれば半分は削れるはずだ」
「乱戦になれば敵も魔法は使えなくなるはずだが、イグニクェトゥア兵士ごと俺らを丸焼きにすることもありうる、常に動き続けろ、半日持たせれば南部方面軍主力も合流するから数的にもこちらが優勢になるはずだ。」
「なにか質問があるか?」
「ありません!」第一師団の師団長ロゼが代表して歯切れよく言った。
「よし、今回の戦いは歴史の教科書に載る、末代まで恥をさらさないように頼むぞ」
「はい!」集まった七十人以上の幹部はそれぞれの思いを込めて大きな声で呼応した。
・・・今回の戦いの後北部方面軍がどれだけ残っていられるか。すまないな、みんな。ダナ・カシムは心の中でそう呟いた。




