第23話
「私の場合は、普通では見えないマナの流れを感じ取るの」ラナが話し始めた。
「そうすると、世界がマナで満ち溢れているのが分かるんだ」
「この部屋の中もクアナ湖もあふれるようなマナで満ちていて、意識を集中するとそれに反応してくれるんだよ」
「それをミスリルロッドに集めて、あとは詠唱しようとする術式を完成させるために集中するんだ」
「水魔法のラ・エンチャントなら・・・」
事前に用意していた剣をさっと掴み、目の前に置く。
ラナの髪の毛が一瞬浮き上がったと思うと、ミスリルロッドが光りマナの流れが普通の人にも分かるような輝きを帯びて剣に流れる。
剣自体も光を帯び、閉じられていた目が開くと同時に流れが止まり、術式が完成した。
「きちんと説明できてないかな、こんな感じだよチナちゃん。」
言いながら、水属性がかかった剣をチナに渡した。
「チナちゃんもやってみなよ」
ラナに促されて説明のとおり、エンチャントの術式をイメージする。
チナにはマナを感じ取ることはできないが、チナ以外の四人にはマナが集まっているのが感じられていた。
「ラ・カーム、剣を貸してあげて」ラナが言った。
「あ、うん」
チナの前にラ・カームの短剣を置く。
エンチャントの魔法は魔術師として認められる最低限の術式で、マナの量もそれほど必要とされていない。
しかし、今チナが行っているエンチャントはかなり膨大なマナが集まっている。
「暴走する?」四人がそう思った瞬間爆発的なマナの集中とともにラ・カームの短剣にマナが流れ、短剣が鈍く輝きだした。
「ユ・プラスエンチャント・・・」ミルシャがそうつぶやいた。
ユ・プラスエンチャントは、ダナ・カシム団長やシュナイゼルが持っている武器と同様特別な魔法を武器に付与する魔法である。
また、この魔法を詠唱できる者は風魔法のマスター(最高位)の称号を得ると言われている。
チナはあまりにも膨大なマナをコントロールした代償か、顔が蒼白になって今にも倒れそうになっている。
ラ・カームが体を支え、ようやく立っているようだ。
「今日の授業はここまでにしましょう、チナさん、よく頑張りました」
「はい・・・」そう答えるとチナはそのまま意識を失った。




