第16話
舗装された街道から、未舗装の道へ入って行ったが、それでも魔術院の馬車に大きな揺れはなかった。
今回の合宿は三人に避暑を兼ねた国内見学を行ってもらうものであるが、警備は厳重であった。
三人の乗る馬車の遥か前に第一陣が走っており、その後に第二陣、そして三人の乗る馬車、その後ろにも馬車が走っていた。
さらに空からは、七匹のバク・ドラゴンが警戒していた。
どこかで異常を検知すればすぐにシュナイゼルに連絡が行われるようシステムが出来上がっていた。
次の休憩所に到着したのは夕刻の五時過ぎであったが、まだ空は明るかった。
「ここで食事を含めて一時間の休憩となります。あと二時間でクアナ湖に着きますからね」
「海よ、海」ラァが言った。
「はい・・海ね」もう訂正する気もラ・カームにはなかった。
「さすがにつかれたよー」とラナ
「疲れたよね」とラァ
「とりあえず、みんなで旅館に入ろうか」ラ・カームが言った。
「うん」二人とも口をそろえた。
旅館のオーナーが一行を迎えに来ていた。
「皆様のご来場、誠に光栄でございます」
「王都からの長旅、さぞお疲れでしょう。短時間ではございますが、ゆっくりなさってください」気のよさそうなオーナーが満面の笑みでそう話した。
「ありがとうございます」一行を代表してシュナイゼルがそう言った。
「あの方たちが千年伝承の皇太子たち?」旅館の従業員はざわついていた。
「かわいいー、おもちかえりしたくなる!」まだ二十歳まえの女性従業員が言った。
「あなたもバカね、あの方たちに不用意に近づいたら命ないわよ」
「でも、あんな髪の毛の色初めて見た。王室の方はほんとに白いのね」
「たしかに、綺麗・・・」
「まだ十歳でしょ?かわいいけど、すごいしっかりしているように見える」
「たぶんあなたより百倍賢いと思うわよ」
「ひどいなぁ。でもほんとに雲の上の人ね」
「そうね、神様みたいに言う人たちもいるみたいよ」
「そうかもしれないわ、エメラルドグリーンの瞳で見られたら、なんでも言うこと聞きます!」
「そうそう、あの黒い髪の騎士様が近衛団のシュナイゼル様らしいわよ」
「えーーーーーーーーーーあのシュナイゼル様!」
「王都でシュナイゼル様に口説けない女性はラァ様とラナ様だけってもっぱらの噂よ」
「あの顔で剣と魔法の達人なんだもの、誰でも付き合いたいでしょう」
「こんな田舎によくも来られたものね」
「クアナ湖は王室の方の専用の保養地なのよ、あなた地元でそんなことも勉強してなかったの?」
「まだまだ勉強中です」




