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作者が転生?!~りっぱな悪役になってやる!  作者: 梅田遼介
「悪役転生」編
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第8話「増税」

今日2話目の投稿です。

いよいよカルロが悪役としての役割をし始めます。


ブックマークしてくれた方、そして評価をして下さった方、ありがとうございます!

本当に頑張るモチベーションになります☆

 ドッヂと屋敷に帰った僕は、執務室にピカールを呼び出した。


「ご用でしょうか?」


「ピカール、今ここの税率はどうなっている?」


「農民は収穫の4割をカルロ様に納め、商人や職人は収入の2割の金額を納めることになっております」


 農民は四公六民で、現金収入のあるものは2割を税として納めるということか。


「今の財政状況を教えてくれ」


「財務状況は良好とは申せません。この辺りは水はけが悪くて農地を広げられず、その為不作になるとすぐに食糧不足が起きて税収が減ります。今年は豊作ですので一息つけそうですが」


「現金収支はどうだ?」


「良くはありません。このバルハムントは王都から遠く物流に難があります。物価が高い上に特産と呼べる物もありませんので、商工業はあまり発達していません」


 やはりそうか。

 社会インフラが整っていないので生産性が低い。

 どうにかしないと安定した領地経営は難しく、そうなると勇者や魔王とのことがおろそかになる恐れがある。

 5年後には大イベントもあることだし、今から備えておかないとな。


「ピカール、告知を出せ。今年は税率を1.5倍に上げるとな」


「えっ?! カルロ様、何をおっしゃいます。そんなことをすれば国中が大混乱になります」


「構わぬ。今年は大豊作なんだろ?」


「それはそうですが、この税率は先代様のころから一度も変えられたことがなく――」


「豊作であれば生きて行けるだろう。農民はその収穫の60%を、商人職人はその収入の3割を納めるように触れを出せ」


「お考え直し下さい、そのようなことをすればカルロ様の名声は地に落ちます!」


 そりゃあそうだろう。

 今年は大豊作で豊かな暮らしが送れると喜んでいると、いきなり税率が1.5倍になるんだ。

 国中の民がカルロを恨み、抗議の声を上げるに違いない。

 それを考えると、正直心が痛む。


 でも僕は悪役、カルロ=ド=メリチ辺境伯だ。

 他人から嫌われることを恐れるわけにはいかない。

 カルロが嫌われれば嫌われるほど、勇者カズマの人気が高まる。

 立派な悪役になってこの物語をエンディングへと導くと決めたんだ。


 僕の作った小説を完結させるために。


「かまわない。民の声などに耳を傾けるつもりは毛頭ない。すぐに告知せよ」


 一瞬ピカールはもの言いたげな目で見つめたが、僕が意思を変えぬと悟ったのだろう、何も言わずに頭を下げて部屋を出て行った。




「ふう……」


 靴を履いたままソファーに寝ころぶ。 

 正直疲れた。

 肉体的に、ではなく精神的に。

 人に嫌がられることをする、というのは辛いな。


 もともと僕は人と争うのが嫌いだ。

 ずっと人の顔色をうかがって生きてきた。

 そんな僕が悪役として生きるというのはかなりキツイことだな。


 でも僕は自分で決めたんだ。

 悪役として生きていく、勇者のライバルとしての役割を全うすると。

 りっぱな悪役になってやるんだ。




 寝ころんだまま机の上のベルを鳴らす。

 チリンチリン――


「どうかなさいましたか?」


 すぐにメリッサが入ってきた。

 ソファーに寝っ転がった僕を見て首をかしげている。


「何でもない、ただ少し疲れただけだ」


 メリッサは少し考えたのち、僕に微笑みかけた。


「ピカールさまから少しお聞きしました。しかしカルロさまにはお考えがあっての事でしょう。私はカルロさまの事を信じておりますので」


 ……ああ、味方になってくれる人がいる、っていうのはいいものだ。



「すまないな。そうだメリッサ、お前の知り合いに魔法が使える者はいないか?」


「魔法、でございますか。私の遠縁にあたるものに一人おります。まだ年若いのですがそれなりに才能はあると聞いておりますが」


「そうか、実は俺に魔法の使い方を教えてほしいんだ。頼めるか?」


「実は少々変わり者でして、お役に立ちますかどうか。こちらに呼びましょうか?」


「いや、ここではピカールがうるさい。近々俺が自分でその者の元に行こう」


「かしこまりました、では連絡を取ってみます。あと、マーカスさまと新しくカルロさまお付きの隊長になられたふぃ、フィッツ……」


「フィッツジェラルドか」


「そうでございます。その方が着任のご挨拶に伺いたいとおっしゃっておられます」


「呼び方は『エフ』でいい。俺もそう呼ぶからな。通してくれ」


「ではマーカスさまとFさまをお通しします」




 メリッサが出て行った後、マーカスに連れられてFがやってきた。


「失礼いたします。この度は近衛隊長に任じて頂き、まことにありがとうございました」


「そう硬くならなくていい。そこへ座れ」


 直立不動で挨拶するFにソファーに座るように促した。

 マーカスは言われる前からとっくに座っている。


「マーカス、手間をかけたな」


「いえいえ、こんなもの紙切れ一枚書くだけの簡単な仕事ですじゃ」


 マーカスに続いてFが話し始める。


「身分も低く、近衛に移籍して間もない私をお引きたていただきまして――」


「そういう堅苦しいのはいい」


 なおも礼を言おうとするFを僕は手で制して、マーカスに話しかけた。


「で、この後の手筈は考えたか?」


「それが、なかなかいい手を思いつきましてな」


 マーカスがニヤリと笑う。


「ほう、どんな手だ?」


「ワシが近々近衛騎士団長の座を辞すると発表いたします」


「ふむ、それで?」


「その後任を、近衛の中から決めると。具体的には隊長5人による剣技大会を開き、その勝者を新たな団長にする、というのはどうでしょうな?」 


「それはなかなか面白いじゃないか!」


「そうでしょう、ふふふ」


「マーカス団長はお辞めになるのですか?」


 盛り上がる僕とマーカスを見て、Fは目を白黒させている。


 そりゃそうだろう、自分が隊長の着任あいさつに来た場で突然、団長が辞める話をしだすのだから。


「辞めるのではなく、将軍に昇進させるのだ。その後任の団長にはF、お前になってもらう」


「そ、それはいくら何でも」


「フィッツジェラルドよ、これはカルロ様たってのご希望なのじゃ。断るわけにはいかんぞ」


 マーカスは明らかに面白がってるな。


 ここは僕も乗っておこう。


「お前に勝たせるための剣技大会だ。負けるんじゃないぞ、F」


「そ、それは努力いたしますが、しかし」


 焦るFを横目に、僕とマーカスの悪だくみは加速する。


「俺もいいことを思いついたぞ、マーカス」


「ほほ、なんですかな?」


「5人ではトーナメントもキリが悪い。俺も参加させてもらおう」


「ほう、カルロ様も腕に自信がおありですかな?」


「そう捨てたものではないぞ。なあFよ?」


「辺境伯様の実力はかなりのものです。大抵の者が敵うレベルではございません」


「それは面白い、では決勝でカルロ様とフィッツジェラルドが当たるように細工しましょうかの」


 僕とマーカスは顔を見合わせてほくそ笑んだ。


 マーカス、お主も悪よのう。

お読み頂いてありがとうございます。

ブックマーク登録、評価などよろしくお願いします☆


明日も2話投稿しますのでお楽しみに!

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