第7話「ドッヂ」
2週間連続2話投稿の4日目です。
よろしくお願いします☆
マーカスが退出した後、僕は塩味の晩御飯を食べた。
その後することもないので寝室でくつろいでいると、レイナがやってきた。
「お風呂の準備が出来ましてございます。お入りになりますか?」
そうだ、この国の貴族にはお風呂の習慣があるんだ。
僕自身がシャワーより湯船に入るのが好きだから、お風呂がある設定にした。
お風呂だとちょっとムフフな話も書きやすいしね。
「そうか、ではそうさせてもらおうか」
レイナについて風呂場へ行く。
おぉ、広々している!
さあ、服を脱ごうとしたらレイナが手伝ってくる。
おいおいおいおい。
「れ、レイナ、ここはもういいぞ」
「お背中を流さなくてよろしいのですか?」
いやいやいや、それなんてエロゲ?
いきなり17歳の女の子にお風呂で背中流してもらうなんてチェリーな僕にはハードル高すぎだよ。
心構えができてない。
「よい、自分で洗うから大丈夫だ」
とっても後ろ髪を引かれたが、涙を呑んで断った。
とても大切なフラグを自分でへし折った気がする。
はあ~。
少しさびしい気分ながら、湯船でリラックスする。
さあ、これから何をしていこうか。
Fとは出会えたが、もっと仲間を探さないといけない。
パーティーのメンバーとしては、仮面の傭兵「暁」。
金の為なら何でもするという正体不明、謎の傭兵だ。
後はどんな非道なこともためらわないダークエルフの戦士、ザーリッシュ。
この辺りとは早めに仲間になりたいものだ。
他には小作人のドッヂ、これはすぐにでも会えるだろう。
それと外交と補給を任せる人材として軍師のナルス。
これだけ会えたら人材としてはとりあえずいいかな。
あ、魔法を教えてくれる人は探さないとな。
もう一人、絶対に会わなければいけないのがシャーロット王女。
フランツ国王ジョアン3世がカルロを味方に引き入れるために王女を許嫁にする。
ところが物語の後半でカルロはジョアン3世を幽閉し、自分がフランツ王国の国王の座に付こうと画策するんだ。
カルロの企みに気付いたシャーロット王女は勇者に助けを乞い、それをきっかけに恋に落ちた二人が結ばれて新しい国を建てるところが物語の結末になる(予定)。
小説が始まる時にはすでにカルロとシャーロット王女は婚約していたから、勇者が転生してくるまでの5年の間になんとかシャーロットとの婚約を成し遂げておかないと。
他にもやらなきゃいけない事は色々ある。
どうしても外せないこと。
それは、そう、ズバリ酒池肉林。
カルロはプレイボーイという設定だ。
次から次へと女を変え、女の子を泣かしていく。
女の子たちとムフフ。
お姉さんたちとイロイロ。
という事は、僕がいつまでもチェリーじゃいけない、という事だ。
これはゆゆしき問題だと思わないか?
僕がそうしたいという訳じゃなく役柄的に仕方ないんだ。
早急に解決すべき問題として心に刻んでおこう。
そんなことを考えていたらのぼせた。
ちょっとクラクラしながら風呂をあがって寝室に戻り、そのまま寝てしまった。
翌朝、転生3日目。
今日は朝から屋敷の周りを散歩する。
近衛兵がついてくるといったが断った。
秋になって空が高くなっている。
周りに見えるのは小麦畑だろうか、もうかなり穂が色づいて来ているようだ。
今年は大豊作だってピカールが言ってたな。
すると大柄な男が薪を割っているところに出くわした。
麦わら帽子をかぶった男が、巨大な斧で薪を割っている。
身長はおよそ190センチ、縦にも横にも大きい。
顔は実にいかついが、内面は優しいことを知っている。
彼は僕の小説に出てくる仲間のドッヂだからだ。
「ドッヂ、精が出るな」
「ああカルロ様、おはようごぜえますだ。もうお加減はよろしいので?」
ドッヂは汗を手拭いで拭きながら頭を下げた。
彼は小作人の息子でこの時点では18歳、カルロのところで働いている。
カルロを心から尊敬しており、最後まで裏切ることのない数少ないメンバーの一人(予定)だ。
腕っ節が強く棍棒や斧を持たせると戦いでも頼りになる。
パーティーメンバーとしても活躍してくれるだろう。
「ああ、もう大丈夫だ。それよりドッヂ、この後は忙しいか?良ければ俺に付いてきてほしいのだが」
「大丈夫でさ。仕事はまた後からやりますだ」
ドッヂを連れて屋敷のある小高い丘の上に歩いて行った。
丘の上から眺める景色は中世ヨーロッパがいろいろ混ざったような風景だ。
農場の所々では巨大な風車が回っている。
眼下には赤茶色のレンガ屋根が並ぶバルハムントの街並み。
辺境の地方都市ではあるが、メリチ辺境伯領では最大の街だ。
いくつかの丘を取り囲むように街が広がっているのが分かる。
中心部に見えるドームはサン・ペリエ大聖堂。
光の教団の教会で、町のシンボルだ。
町からは放射状に道が伸びている。
舗装はされていないので、馬や馬車がとおっているところには土煙が上がる。
すごい、僕が小説を書いていた時に思い描いていた通りの世界がここにある。
街並みも、風車も、農園も、大聖堂も。
それを眺めていたら、ダメだ、涙が出そうだ。
ここは僕が作った世界だ。
小説がアニメ化や実写化されたらこんな気分になるんだろうか。
「カルロ様、どうかされましただか?」
「いや、なんともない。ドッヂ、首都リュアンまでは何日かかる?」
「そうですね、早馬なら3日、馬車では5日、歩くと7日ほどですだ」
やっぱりずいぶんかかるなあ。
情報の伝達と行軍の速度は重要だ。
道を整備すると物流も活発になるだろう。
「あれがホムルス川だな」
街の東側を大きな川が流れている。
名をホルムス川といい、はるか北のバルバロッサ山脈から流れてきている。
メリチ辺境伯領はホルムス川に水資源を頼っている。
大いなる恵みを与えてくれる一方、ひとたび決壊すれば大きな洪水被害をもたらす諸刃の剣でもある。
僕のイメージはエジプトのナイル川だ。
その向こうには広大なルイードの森が広がっている。
「最近のホルムス川はどうだ」
「このところ大きな洪水は起きとりません。ただ相変らずこの辺りは水はけが悪く難儀しとりますだ」
そうか、よく見ると街の周囲には湿地が多い。
これが発展を妨げているのかもしれないな。
そういえばこの辺りには大きな屋敷が並んでいる。
「ドッジ、この街の丘の上に住んでいるのは金持ちが多いのか?」
「さいです。金持ちは山の手、貧乏人は丘の下に住むのが普通ですだ」
僕はドッヂを連れて丘の下に行ってみた。
頬に大きなガーゼを当てて包帯で巻いているせいで、僕がカルロだとはばれていないみたいだ。
市には店が立ち並び、お客を呼ぶ大きな声に犬の鳴き声。
買い物カゴをぶら下げた主婦たちが行きかう。
丘の上の静かな街並みとは違い、ここには庶民の生活があった。
「この辺りは湿気が多かったり水はけが悪かったりしないか?」
「うちはこの近くですが、おっかあはカビが生えるだの水の流れが悪いだのいつも文句を言っとりますだ」
やっぱりな。
これも水はけの悪さと関係があると見ていいだろう。
小説書くときは水はけまで気にして書かないもんなあ。
でも実際そこに住むとなると大変だ。
これも改善の必要があるな。
「そうか、それでみんなの暮らしぶりはどうだ?」
「農民やってるもんは、今年は大豊作間違いなしだからゆっくり生活できる、って大喜びですだ」
ドッヂも嬉しそうにニコニコしている。
そうか、今年は生活に余裕がある、か。
次の投稿は10時過ぎの予定です。
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