第70話「忘れ物」
※8/24追記 長い間更新が開いてすいません。ただいま続きを執筆中です。ある程度溜まったら投稿再開しますので、もうしばらくお待ちくださいませ。
軍事演習が終わり、僕たちはバルハムントの僕の屋敷に着いた。
「この度ばかりはすっかりしてやられましたわい。のう、ルーノス」
例によって誰の断りもなくソファにどっかりと座りこんだ将軍のマーカスがこぼす。
「本当ですよ。せめてカルロさまの首でも頂こうと思ったら、逃げ出すんですから驚きましたよ」
ルーノスの奴がまたイラッとくるニヤけ顔でこっちを見てくる。
そりゃ逃げるだろ!
なんせこっちは丸腰になっちゃったんだから。
「軍を率いる将たるもの、目の前の勝負に溺れることなく冷静に大局を見極めんとな」
僕のセリフがなんか言い訳みたいに聞こえてやだな。
でもさすがに忠誠心の高いFはそれに大きく頷いてくれた。
「私の突撃を分かった上でこちらにルーノス卿をおびき出してくださった手腕、さすがはカルロさまです」
そうだろうそうだろう、やっぱりFは分かってるな。
今度給料上げてやろう。
「そうですかね? 偶然逃げた先に団長がいただけのように見えましたが。まあいいんですけどね」
それに対しルーノスは疑わしげな眼差しでこっちを見てくる。
なんだよ、その眼は。
自分の雇い主で身分も上のこの僕にそんな態度取っていいと思ってるのか?
お前、大体負けたくせに偉そうなんだよ!
絶対給料下げてやるからな。
封建社会の貴族で且つ悪役であるこのカルロを見くびったらどうなるのか、思い知らせてやる。
「まあ、良いではありませんか。それより久々の演習、この老骨にはチトこたえましたわい」
僕とルーノスの小競り合いを見ていたマーカスの爺さんが、さも疲れたという風に首を回した。
確かにこの年だ、軍事演習は大変だったろう。
「そうだな、では今日はもう帰ってゆっくり休め――」
僕がそう言いかけた時、マーカスがその言葉をさえぎった。
「家で休むのもよろしいですが、久々に酒でも飲みながらゆっくり語り合いたいものですな」
そう言ってニヤリと笑う。
ぁ、この爺さんのこの顔は。
「ムーランルージュか」
「なるほど、久々に一杯やるのも悪くありませんね」
僕の言葉にすかさずルーノスが乗ってきた。
こういう所は気が合うねえ。
まあ給料ダウンはちょっと考えてやるとするか。
「では私はここで失礼させて頂きます」
空気を察したFがすかさずここで撤退しようとするが、そうは問屋が卸さない。
「Fよ、そう言わずにお前も来い。今日の反省会を兼ねた打ち上げだ」
「そうじゃよ団長、せっかくの軍事演習じゃからちゃんと振り返らないとのう。特にそちらの見事な作戦を詳しく聞きたいものじゃの」
マーカスがそう言った途端、入口の扉が勢い良く開いて声がした。
「その作戦を立てたのが誰か、皆さんすっかりお忘れなんじゃないですかぁ?!」
―-あ、ずっと何か忘れてると思ったらこれだった……。
全員で開いた扉の方を見ると、そこには――軍師のナルスが立っていた。
やばい、明らかに怒ってる。
「ぉ、おう、ナルス、遅かったじゃないか。待ってたんだぞ」
「そうじゃ、お主の話を聞きたくて待ちわびておったんじゃ」
取り繕う僕の言葉にすかさず乗ってくるあたり、やはりこの爺さん百戦錬磨だ。
「あはは、なにが待ってた、ですか! わたしの事なんかすっかり忘れて帰った癖に!」
ダメだ、ナルスには見破られてる。
「な、何を言うかと思えば。お前のことを忘れてたなんてわけないじゃないか」
「カルロ様、私は言いましたよね。陣でご報告をお待ちしてます、と」
「あれ? そうだったか。俺はすっかりここで待っていると勘違いしておった、すまんすまん」
僕の言い訳に、ナルスは冷たいまなざしを返してくる。
「ほほう、勘違い、ねえ。お陰様でえらい目に合いましたよ。馬嫌いの私が騎士の後ろに乗せられて」
「そうか、そりゃ大変でしたね。でもよかったじゃないですか。後ろに乗せてもらえて」
そう言ったルーノスをナルスが睨みつける。
「ええ、全くですね。偶然北側の哨戒に行った騎士の一人が通りかかったからいいようなものの、そうでなければ一人で歩いて帰らなきゃいけない所でしたから」
いかん、ナルスが完全にヘソを曲げている。
機嫌なおしてもらわないと、まだまだやることは残ってるしバルハート城も建てなきゃならないし。
うーん、何かいい手は……。
「それはそうと、これからワシらは打ち上げに行くんじゃ。軍師殿、お主もどうじゃな?」
「そうだ、それがいいですよ。綺麗な女の子が揃ったお勧めのお店です。軍師殿もどうですか?」
「行きませんよ、私は。そういう類のお店には興味ありませんので」
マーカスとルーノスの誘いもけんもほろろに断られる。
そりゃそうだよな、ナルスは元の世界の僕と一緒でオタクで引き籠もり気質だもの。
そう言う意味で気持ちは分かる。
あ……そうだ!
「まあ待て、ナルス。ちょっと来い」
僕はそう言ってナルスをそばに引き寄せた。
そして耳元でこっそり囁く。
「実はその店にリリィという娘がいてな。お前の人形の原型にピッタリだと思うんだが」
「え、本当ですか?」
しめた、喰いついた。
「ああいう店には珍しく素直で明るい娘でな、前に行ったとき人形の話で盛り上がったんだ」
「へえ、そんな娘が」
「一度見るだけでも見てみないか?」
「まあ、カルロ様のそういう部分は信用してますから。分かりました、行きますよ」
良かった、「そういう部分は」という言葉には引っかかるがなんとか連れ出すことには成功した。
後はリリィが上手くやってくれることを祈ろう。
ヤバい、思わず信長買ってしまった…
これからちょっとだけ更新減るかもしれません。
いっその事リプレイ小説書いてみるかな?




