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作者が転生?!~りっぱな悪役になってやる!  作者: 梅田遼介
「軍事演習」編
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第69話「軍事演習Ⅶ」

 右から左から、ルーノスの木剣が唸りを上げて襲いかかってくる。

 僕は必死にそれを受け止める。

 うーん、絶体絶命。


「どうです? 本気を出して頂かないと討ち取ってしまいますよ?」


 いい男だけにルーノスのニヤニヤが余計腹立つ。

 こいつ、僕が雇い主だってこと完全に忘れてるだろ!

 封建制のこの世界でこんな理不尽なことがあっていいのか?

 大体悪役のカルロがこんな扱いを受けるなんておかしいじゃないか。


 ……などと必死に戦いながらも下らないことを考えていた、その時。


『うわああ、奇襲だぁぁぁ』


 逃げていた青旗軍の兵たちがルーノスの後ろで叫び声を上げるのが聞こえた。





「――団長閣下、カルロ様より伝言。部隊は間もなく青旗軍と交戦に入るとのこと」


「承知した。よし、我々は今よりここを出て突撃を行う。なお相手陣から見られぬよう迂回して青旗軍の側背に回り込む」


「いよいよですね、団長。腕が鳴ります」


「うむ。出来る限り討ち漏らしの無いようにな。突撃!」


 砦を落としたFの率いる騎馬隊が本陣に逃げ込もうとする青旗軍の退路を断つ形で突撃してきたのは、そのしばらく後だった。





「何の騒ぎだ?」


 後ろの騒ぎに気を取られたルーノスが、攻撃の手を休めて僕から少し距離を取った。

 ふう、なんとかひと息付けたぞ。


「どうやら素直に退却もさせてもらえないようですね」


「どうだ、まだ大人しく負けを認める気にならないか?」


「とんでもない。むしろますます総大将を討つ以外に手がなくなりましたよ」


 ルーノスめ、まだ諦めないとは。

 どうしよう……。

 そうだ、まだ一度もやったことはないけどアレ・・をやってみるか。


 オリハルコンの剣などの武器に魔力を流し込んで使うことでその速度や威力を高める方法は、元々勇者が使う設定の技で今はカルロも使っている。

 ただしその方法だと、武器がどれだけ効率良く魔力を流せる素材で出来ているかによって威力が変わる。

 その点でオリハルコンは非常に優れているが普通の鉄などではかなり効率は悪く、さらに僕たちが今持っている木剣のような木ではほとんど威力は期待できない。


 それに対して僕の書いていた小説の中で、悪役カルロが主人公の勇者と戦う際の切り札にしようと考えていた必殺技がある。

 それは武器にではなく「自分自身の身体」に魔力を充填し、それによってその強化を図るというもの。

 いわば魔力による肉体改造(見た目が変わる訳じゃないけど)だ。

 まさに悪役、というか怪人の技っぽいな。

 これなら何とかいけるんじゃないか?


 今まで練習してこなかったからコントロールなんかは出来そうもないが、一撃ぐらいは出せる気がする。

 剣技大会の決勝戦で僕がFにやられた「いかずち」のような感じでいこう。

 よし、まずは魔力をためないと。



「――いいだろう。ルーノス、本気で相手をしてやろう」


「やっとその気になって下さいましたか。団長に敗れたとはいえ、私が2番なのか3番なのかをはっきりさせたいと思っていましたから嬉しいですよ」


「気を付けろよ、たかが木剣でも当たり所によっては怪我をするぞ」


「カルロさまのその真剣な眼差し、楽しみですね。どうぞ手加減なしでお願いします」



 ……ふう、このやり取りで何とか時間が稼げた。

 さっきまでの勢いで攻められてちゃ魔力を溜める余裕もないからね。

 せこい時間稼ぎだけど僕は悪役だから問題ない。


 僕は手にしていた木の盾を捨て、木剣を構えた。

 イメージは薩摩示現流、『二の太刀要らず』。

 必殺の覚悟で剣を振り相手の反撃は考えない、まさに「一撃必殺」の技だ。

 本で読んでそのカッコ良さにいつか使いたいと思ってたんだよ。

 


「……ルーノス、行くぞ」


「自ら盾を捨てられるとは、守りは考えないという訳ですか。いいでしょう、お相手します」


 

 僕とルーノスは馬上で向き合った。

 互いに目を見て、呼吸を計る。


 ――今だ。


 またがった白王を走らせると僕は全身に込めた魔力を一気に開放し、すれ違いざまに剣を振う。


「きえええええい!」


 裂帛の気合いを込めた僕の剣が唸りを上げてルーノスを襲う。

 そのあまりの速さと威力にルーノスは剣を振うことも出来ずただなんとか盾をかざすのみ。

 

 その結果。

 僕の振るった必殺の剣はルーノスの盾を捕え、見事に――砕けた。

 そりゃもう木端微塵。


 まあそりゃそうだ、僕が持っていたのはただの木剣、砕けて当然。

 同時にルーノスが持っていた木の盾も割れちゃったけど、僕の手には木剣の柄の部分が残るのみ。


「いやあ、もの凄い一撃でした。このルーノス、感服しました。で、これからどうされます?」


 最初はあまりの勢いに唖然としていたルーノスも、馬を返して状況を見たらまたニヤニヤしてる。

 まあそうなるよね。

 僕は盾も捨ててもはや手ぶらの状態、それに対してルーノスの右手には木剣。

 こんなの勝負になる訳ない!


「そりゃあ……逃げる」

 

 僕は白王に走るよう合図を出し、そのまま走り出した。

 こういう所だけ悪役っぽくて困るなあ。

 兵たちをほっといて逃げるのは問題だけど、大将が討ち取られるよりはましだ。

 

「この期に及んで逃げ出されるとは。お待ちくださいっ!」


 ルーノスが追ってくるけど白王ならなんとか逃げきれる。

 そう思っていると前から見慣れた姿が。

 

「カルロさま!」


 おお、Fじゃないか。

 まさに地獄に仏。

 ナルスの策で相手の後背に突撃を掛けたFが、僕の身を案じて来てくれたらしい。

 正直助かったよ。


「F、ルーノスの相手を!」


「御意」


 そして。


「後方から団長が来るとは用意周到ですね。参りましたよ、盾なしで団長に勝てる自信はありません」 


 ルーノスはFにあっさり投降し、この戦いは我が赤旗軍の大勝利に終わった。

 Fたち騎馬兵の活躍で陣に退却しようとした多くの青旗兵は討ち取られ、そのまま相手の陣を包囲した僕たちにマーカスの爺さんも素直に負けを認めた。


「勝ったぞーー!」


『おおおお!』


 僕ら赤旗軍の勝ちどきと共に、今回の軍事演習は無事に終了した。

 やれやれ、これで軍制改革もよりスムーズに進むことになるだろう。


「マーカス、F、ルーノス、さあ、帰ろうか」


「「「はい」」」


 こうして僕らはバルハムントに帰還した。




 ――ん?

 何か忘れているような……まあいいか!

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