表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
作者が転生?!~りっぱな悪役になってやる!  作者: 梅田遼介
「軍事演習」編
67/81

第65話「軍事演習Ⅲ」

 

「そろそろかのう」


 マーカス将軍は青い軍旗を掲げた軍勢の前に立って丘の上の砦を眺めて呟いた。

 その傍らには近衛隊長のルーノスが控えている。

 しばらくすると青空の中、砦から一筋の黒い煙が空に立ち上ったのが確認できた。

 それを見てルーノスがマーカスに言葉を掛ける。


「上がりましたね」


「うむ。よろしく頼むぞ」


「はい、では行ってまいります」


 ルーノスはマーカスに軽く頭を下げた後、兵たちに向けて声を張り上げた。


「行くぞ! 攻撃部隊は俺に付いて来いっ! 敵との遭遇もあり得る、各部隊長は気を抜くなよっ!」


『はっ!』


「では行くぞ!」


 こうしてルーノスは兵を率いて陣を出た。

 丘の南側を迂回するルートを取る。

 ちなみに赤青それぞれの陣から丘の上の砦までの直線距離は約1.5キロメートル。

 それほど距離はないとはいえ、かなり急な坂を登らなければならない。

 平坦な丘の南北の迂回ルートを取ると相手の陣まで約5キロメートルだ。

 マーカスとルーノスが率いている青旗の軍勢は騎馬と歩兵、弓兵の混成部隊のため1時間程度はかかることになる。



「いい天気だな、日差しが温かい」


 ルーノスは騎馬の上で思わず呟いた。 

 木々の間から覗く空を見上げれば雲一つない冬の青空だ。

 風もあまりなく南からの日差しが当たるので寒くないのは有り難い。

 夏場なら木の葉で日が遮られるのだろうが、冬の今は葉が落ちて日差しが降り注いでいる。

 このアラモスの丘自体はあまり木の生えていない草原だが、そのふもとには森林が広がっている。

 今ルーノスが兵たちを率いて進んでいるのはその草原と林のちょうど境に当たる部分だ。

 林の中を歩兵や弓兵と共に進んでいるために、騎乗している彼にとってはのんびりした進みになる。


「しかしあちらの方は妙な訓練ばかりしておりましたな。ルーノス卿もご覧になりましたか?」


 傍らで共に騎馬に乗った副官が話しかけてきた。

 年は30代後半、口ひげをはやした真面目そうな男だ。

 彼もまた近衛騎士団で隊長を務める騎士だった。


「ああ、見た。歩兵を整列させてひたすら歩かせていたな」


「ええ、同じ所をグルグルとまわって、歩幅やその動きまで揃えさせようとしていたようです。あれで一体どう戦うつもりなのか、お笑い種ですな」


 可笑しそうな副官の言葉に答えずルーノスは黙り込む。

 彼らのあるじであるカルロがそれほど意味のないことをしているとは思えなかった。

 ゲルグ子爵の犯罪を暴いた時の手並みなどを見て、ルーノスはカルロを底の見えない不思議なところのある人物だと考えるようになっていたのである。


(あの訓練にいったいどんな意味があるのか、カルロさまがどのような策を取ってこられるのか?)




 その行進訓練はカルロ(=リョウスケ)が元の世界の本で読んだ知識を元に「歩兵の統率こそ戦争の勝敗を左右する」と考えて行ったものだった。

 基本的にこの世界の歩兵は一般人を半ば無理やり徴用したもので、戦意には乏しい。

 少しでも自軍が不利になったと見ると蜘蛛の子を散らすように逃げてしまい、戦線が維持できなくなるのは日常茶飯事だった。

 騎馬の民であるバルバロイとの戦いでは統率の取れない歩兵が騎馬の動きについていけず、振り回されるうちに陣形を維持できなくなって結局歩兵が逃げて負けるというのがパターン化している。

 マーカスが騎馬に乗る騎士を歩兵と分離することに不安を持ったのも、指揮官である騎士がいなくなると歩兵の統率を取ることがより困難になるのではないかという懸念からだった。

 それに対するリョウスケなりの答えが歩兵に対する行進訓練だったのだが、この時のルーノスには知る由もない。


「まあ何にせよ指揮官である騎士のいない歩兵弓兵など烏合の衆、当たって負ける訳もない」


 ルーノスがそう傍らの副官に言ったその時、前が何やらざわざわしているのに気がついた。




「どうした? 何があったのか報告せよ」


 その言葉に一人の騎士が前から馬を駆けさせてやってきた。

 ルーノスの横に馬を寄せて報告する。


「歩兵の中に、敵らしき騎馬の姿を見たと言って騒いでいる者がおります」

 

「なに? それでその数は」


「それが一騎だけだと」


「一騎だと? それは何かの見間違いであろう。騎馬が一騎のみで行動するなどありえん」


 副官が馬鹿げた話だと言うように呆れ顔で言うが、当のルーノスは難しい顔をして考え込む。


(騎兵を一騎だけで動かすだと? ただでさえ少ない騎兵を偵察のために裂くとは考えにくいが……頂上の砦を狙わず騎馬隊がこちらを迂回してきているのか? だとすればこちらの思う壺だが)


 そう考えていると副官が声を上げた。 


「砦から赤い狼煙が上がりました。やはり騎馬で砦を狙ったようですな」


「そうか、とすればこちらの計画通り。その後には歩兵や弓兵が援護のために向かっておろう。その分本陣は手薄のはず。急いで向かうぞ!」


 ルーノスは部隊に進軍速度を上げるように命じた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ