第62話「回想」
迷宮を出た僕たちは途中で美少女闇司祭キトラと別れ、バルハムントに帰った。
冒険者ギルドに寄って探索の報告をする。
「へへへ、なかなかの金額になったぜ」
三日月は嬉しそうだ。
そりゃそうだ、キトラに「わたしは分け前はいらないからその分はあなたに上げるわ」と言われて自分だけ2人分もらったんだからな。
先輩二人が苦労して運んだ蜘蛛の巣もちょっとした金額で売れたそうだ。
先輩たちは帰り道の間ずーっと糸巻車状態の剣を片手で掲げてなきゃいけなかったんだから、死ぬほど辛そうだったけど三日月はそんなこと全く気にしてない。
しかも分け前は最初の約束通り、先輩二人とピックを合わせて一人分だけだ。
ベースは「もうぜってえ俺たちは姉御と一緒に山は踏まねえっす」とか言って泣いてた。
こうしてそれぞれに分け前を配り、僕は隠れ家に戻った。
「えっと……暁さま、お帰りなさい」
エルサが出迎えてくれた。
まだ僕を「暁」と呼び慣れていない、初々しい姿がかわいい。
久しぶりで僕も緊張する。
ホントは抱きしめてキスを、と思ったけどなんとなく照れくさくて出来なかった。
「ただいま。寂しくなかったか?」
「すこし。でも近所を散歩したりして面白かったです。だいぶこの辺りに詳しくなりましたよっ」
「そっか、一人にさせてゴメンな。でもまたこれから屋敷に戻らなきゃいけないんだ」
「あ、そうですよね……。でも大丈夫です」
エルサは気丈に答えてくれる。
これからエルサをいつも一人にさせておくのは可哀そうだ。
でも連れて帰るわけにもいかないし。
うーん……。
「エルサ、おじいさんとおばあさんはどうしてる?」
「手紙ではおじいさんはだいぶ良くなったみたいです。最近会ってないから詳しくは分からないですけど」
僕は懐から今回貰った報奨金の分け前を出してエルサに渡す。
「このお金は?」
エルサは中を覗きこんで僕に聞いた。
「エルサ、それを持っておじいさんたちのところに帰っておいで」
「え? それって……」
エルサはたちまち涙ぐむ。
「違う違う、エルサに出て行けと言ってるわけじゃない。一人ぼっちじゃ寂しいだろうし様子も気になるだろうから会っておいで、って言う意味だ」
「でも……よろしいのですか? それにこんなに沢山」
「ああ、構わない。それでね、エルサ。おじいさんの加減が良さそうだったら、二人をこっちに呼び寄せないか?」
「それは、あの、やっぱりお店もありますし」
「うん、だからこっちでお店をやってみないか? 俺が金は出すから」
エルサは驚いて目を丸くしている。
そりゃそうだ、いきなりだもんな。
僕も今思いついただけだし。
でもこれはけっこういい考えじゃないか?
おじいさんとおばあさんがこの街に来れば、エルサもいつでも会えて安心だろう。
暇な時間はたっぷりあるんだからエルサがお店を手伝えるだろうし。
「でもそんなご迷惑をおかけするわけには」
「いいんだよ。俺はエルサを幸せにするように努力する、ってドロアと約束したしね」
「カルロさま……」
「じゃなくて暁だ、って言ったろ」
エルサは何も言わず僕に抱きついた。
思わずこのままベッドに……とも思ったが、やっぱり最後の一歩が踏み出せない。
ああ、なんてふがいない。
僕はいつまでチェリーなんだろうか(涙目)。
「さ、とにかく一度帰って相談してごらん。俺はいい考えだと思うんだけどな」
「はい、ありがとうございます! よく相談してみます」
「そうだな。じゃあ俺は屋敷に戻るから、家を出る時は戸締りをしっかりな」
「はい、行ってらっしゃいませ」
僕は仮面を置き、服を着替えて覆面をして隠れ家を出た。
適当なところで覆面を取り、屋敷に戻った。
「まあ、いったい今までどこに行ってらしたんですかっ!」
屋敷に着くといきなりメリッサに見つかった。
いや、もう子供じゃないんだから別にいいじゃないか。
そりゃ何も言わずに出て行って何日も留守にしたのは悪かったけどさ。
一応置手紙も書いておいただろ、「ちょっと出かける、探さないでくれ」って。
「いったいどういうおつもりですか? 仕事を全部おいて出て行かれるとは!」
すぐに禿げ、じゃないピカールが血相を変えてやってきた。
いやピカールがハゲなのは本当だ。
ただ僕が優しさでそう呼ばないようにしてあげてるだけなのに、そんなに怒らなくても。
これで「ダンジョンに行ってた」なんて言ったらよけい怒るんだろうな、言わないけど。
「あー、わかったわかった。疲れてるから部屋行って寝る」
僕はメリッサとピカールをほっといて自分の寝室に向かう。
途中で会ったミレアさんに紅茶を入れて持ってくるように頼んで、部屋に閉じこもった。
もともと僕はヒッキ―気味だからね。
部屋で一人になるとホッとする。
「お待たせしました。ここに置いておきますね」
しばらくしてミレアさんが紅茶を持って来てくれた。
横にはクッキーが添えてある。
こういう心遣いが嬉しいよ。
さすがはお母さん、ってとこだな。
「ありがとう。ルチアちゃんは元気か?」
「おかげさまで大変元気にしております。我がままばかりで困らされてますけど」
「そっか、元気盛りだからいいことだよ。何か生活で困っていることはないかい?」
ミレアさんは大きく首を左右に振って言った。
「とんでもありません。本当に良くして頂いて、どれだけ感謝してもしきれませんわ」
ミレアさんは深々と頭を下げて出て行った。
久しぶりにゆっくりとベッドに転がりながら考える。
思えば悪役カルロ=ド=メリチ辺境伯として転生して来てから、ずいぶん大勢の人たちに出会った。
友達もいなくて毎日ただ会社と家を往復していた元の世界の僕とは大違いだ。
出会った人たちの中には僕が書いていた小説「勇者転生」の登場人物も多いけど、そうでない人もたくさんいた。
最初に出会ったのは17歳のメイドのレイナ。可愛い子なんだけどまさかBL好きでカルロ(僕)やF、ルーノスを見てハアハアしていたとは。しかもいきなり恥ずかしいところ見られちゃったし。
次がメイド頭のメリッサ。すごくいい人で本当に僕のことを考えてくれるけど、最近ちょっと口うるさいのが玉にキズ。まあお母さん、って感じかな。
執事のピカール。単にこの屋敷の事だけじゃなく、領内の行政にも力を発揮してくれる頼れるハゲ。ハゲっていう事を気にしてるから面と向かっては言わないけど。真面目で融通が利かないのが困りもの。
F、近衛騎士団長。フィッツモーリス=フィッツジェラルド卿というめちゃめちゃ呼びにくい名前のこの王国最強の騎士。美男子で真面目で堅物、女性慣れしてない。でも頼れる男。
将軍のマーカス、元近衛騎士団長で宇宙戦艦ヤ〇トの初代艦長っぽい白髭の頑固ジジイ。しかも悪戯好きで悪乗りするところがある。でもこれも有能で作戦指揮は任せられるだろう。
仮面の女傭兵、三日月。僕の小説に出てくる仮面の傭兵、暁の互換だと思われる。金に目がなく意地汚い。でも腕は立つ。最高の双丘を備えたプルンプルンのボインボイン。眼福。
カルロの小作人の息子、ドッヂ。田舎者でドンクサイが忠誠心が高く信用できる。身体が大きく怪力で斧や棍棒を振り回す。僕が「カルロ」兼「仮面の傭兵、暁」であることを伝えている数少ない一人。
猫耳の魔法使い、クノップ。メリッサの姪にあたる猫人間と人間のハーフ。見た目は若いが実年齢は30歳の研究者。尻尾が生えてるかどうかは不明。初歩的だが超強力な魔法を使う、僕の魔法の師匠。
近衛騎士団1番隊の隊長、ルーノス。このバルハムントの街で最強と言われた剣士(ただしFに負けたけど)であり、結婚したい男ナンバー1。色男で女性にモテるところは腹が立つが、役にも立つ。
僕のペットである白王とレウス。白王は葦毛の巨大な馬で、僕の愛馬。賢くて力強い。レウスは火の精霊であるサラマンダーの赤ちゃんで、普段は目に見えない。僕と契約を結び、火の魔法のパワーをくれる。
ベースとドラムのコンビ。僕の悪役としての先輩たち。もともと人さらいなんかをしていた野盗だったが、暁に負けて配下の悪の組織「野ウサギ団」の幹部になった。悪党なのになんだか憎めない奴ら。
ホビットの盗賊、ピック。先輩たちと同じく野ウサギ団のメンバーで、見た目は幼い女の子だが中身は結構なしっかり者。盗賊としての腕は確かで、僕(暁)と野ウサギ団との連絡役。
僕の軍師役、ナルス。軍略だけでなく外交と補給も担当する。人形が好きで、彼の作る木彫りのフィギュアはなかなかの出来栄え。お城や土木工事なんかの設計も担当している。
闇の美少女司祭、キトラ。今回のダンジョン探索で出来た新しい仲間(?)。見た目は超絶美少女なんだけど、人骨を集めてスケルトンにするのが趣味(?)。かなり気が強い。
そして僕の愛人になったエルサ。僕のファーストキスの相手(ただしそこ止まり)。王都リュアンの娼館から身請けして、今は僕が暁として作ったバルハムント内の隠れ家に住んでいる。とてもいい子。
後は僕と三日月が先輩たちから助け出し、ここのメイドになったミレアさんと娘のルチア。ちなみにミレアさんは美貌の未亡人でルチアちゃんは美少女だ。
うん、これぐらいか。
僕の周りにいる人や仲間になった人を挙げるだけでこんなにいるのか。
一部人じゃないのも交じってるけど。
他にもムーランルージュのお姉さんのロゼアさんや、小鹿亭の歌姫フェリシアちゃんとかも外せない。
そういや最近会ってないな。
みんなそれぞれいいキャラクターだ。
この人たちとこれからどんな物語を作っていこうか……。
作者としてそんなことを考えてる間に自然に寝てしまっていた。
今日は今まで登場したキャラを振り返ってみました。
いかがでしたでしょうか?
年末で何かと忙しく、なかなか書く時間が取れない上に、ずーっと放ったらかしにしていたゲームを引っ張り出してみたら思いがけなく面白…いや、なんでもありません。
とにかく頑張って書いていきますので、応援よろしくお願いします☆




