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作者が転生?!~りっぱな悪役になってやる!  作者: 梅田遼介
「迷宮探索」前編
58/81

第56話「回復役」

急に寒くなりましたね。

風邪に気をつけましょうね。

この時期よくひくんですよ(^_^;)

「あなた、私もそこへ連れて行きなさい!」


 またもやビシッ! と僕の鼻先に人差し指を突き付けて、キトラが言う。




「一緒に行くって? 君は何しにダンジョンへ?」


 僕が聞き返すと三日月や先輩たちが割り込んでくる。


「何しに、とかいう問題じゃねえよ。無理だ無理。闇の司祭なんかと一緒に戦えるかよ」


「そうですよ。いつ呪いかけられるか分かんねえし、下手すりゃアンデッドにされちまうかも」


「俺も反対です。闇の司祭なんていつ裏切るか分かりません。信用できない以上仲間にはなれませんよ」


 闇の司祭、ってそんなに嫌われ者なのか。

 3人のこの言葉に、キトラは傷ついたような表情を浮かべる。


「あなた達好き放題言ってくれるじゃない? でも闇の神がイコール悪という訳じゃないのよ。光の神のみたいに『何でもかんでも正しくあれ』っていうのじゃなくて、『目的のために手段は問わない』というのが闇の教義の主旨なだけだから。絶対悪いことをしなきゃいけない訳じゃないんだから!」


 うーん、言ってることは分かるけど微妙だな。

 悪いことをしなきゃいけない訳じゃないけど、別に悪いことをしてもかまわない、ってことだからな。

 ベース先輩なんかはどう見ても意味が分かってない。

 先輩の頭の周りをはてなマークがくるくる飛び回っているのが見えるようだ。


「それに私だって治療ヒールの呪文も使えるんだから! 呪いや傷つけるだけが闇の呪文じゃ無いんだからね!」


 へえ、闇の司祭も治療の呪文が使えるのか、そりゃあ知らなかったな。

 ちょうどパーティーに回復役がいなかったから、これは結構いい話しなんじゃないか?

 僕がそう思っていると、慌ててベース先輩が止めに入った。


「無理無理無理。闇の司祭に治療なんてさせらねえよ! 治療するなんて言いながら、呪われてるかもしれねえんだから怖くて任せられないっすよ!」


「あなた、だいぶ頭が弱そうね。そんなのだからいつまでも下っ端なのよ。わたしの事知りもしないのに横からゴチャゴチャ言わないでよ」


「だ、誰が下っ端だぁ?!」


 この美少女闇司祭、口が悪いな。

 下っ端呼ばわりされたベース先輩気味悪いのを忘れて怒り狂ってる。

 それを横から見てた女盗賊のピックがバレないように下を向いてこっそり笑ってるし。

 ひょっとして、ベース先輩はみんなに馬鹿だと思われてるのか。




「ベース、そう怒るな。でキトラと言ったか、君は本気でダンジョンに行く気なのか?」


「だからそう言ってるでしょ! あ、ひょっとしてわたしの力を疑ってるの? いいわ証明してあげる」


 キトラはそう言ってぐるっとまわり見回すと、ドラム先輩に目を止めた。


「あら、あなた腕に怪我をしてるじゃない。丁度いいわ、わたしが治してあげる」


「いや、結構だ。こんな傷すぐに治る。そりゃあもう、一瞬でな。だから気遣いは無用だ」


 そう言われてみるとドラム先輩、確かに腕に軽い怪我をしているぞ。

 さっきのスケルトン兵士との戦いで剣がかすったみたいだな。

 でもドラムは本気で嫌なようで、全力で拒否している。


「わたしが一瞬で治してあげるって言ってるの! ゴチャゴチャ言ってないでこっちにいらっしゃい!」


 黒髪の美少女司祭(ただし闇の)は、問答無用でドラム先輩の腕を掴んで引き寄せた。


「さあ、治療を始めるわよ。痛くしないから大人しくしなさい」


「ひいっ!」


 ドラム先輩は注射される前の子供のようにギュッと目をつぶって全身が緊張してる。

 それを見ている三日月とベース先輩は怖がって2、3歩離れながらも眼は釘付けだ。


「行くわよ」


 そう言うと、キトラはメイスの柄に付いた黒い光沢のある球をかざす。

 そして傷の上に片手をかざしながら呪文を唱え始めた。

 次第に何やら黒い霧のようなものが、微かに手のひらから流れ出て傷を覆うように見える。

 僕の方に背を向けているからあまりよく見えないけど。

 

「うわあああああっ!」


 それを見ていた三日月とベースが突然、叫び声と共にさらに後ずさった。

 二人で抱き合いながら、信じられないものを見たというような表情でキトラの顔を見ている。

 恐怖で声も出ないようだけど、何がそんなに……。

 僕がそう思っていると、キトラがゆっくりこっちを振り返った。


「終わったわよ――」


「うわああああお!」


 思わず僕も驚いて声を上げてしまった。

 こっちを向いたキトラの目が――瞳だけじゃなく目玉全体が漆黒に輝いていたからだ。

 怖い、怖すぎる。

 これって完全にホラー映画の世界だよ。

 ピックも目を見開いてドン引きする中、猫耳娘のクノップだけが興味津々で話しかける。




「その眼、すごいですね」


「ああこれ? ちょっと待って」


 キトラはそう言うと、ゆっくりと目を閉じてしばらくまぶたを手で押さえていた。

 そうしてしばらく待った後、ゆっくり目を開くとそこには元の美少女司祭(ただし闇の)の姿が。


「これはね、わたしが特別に闇の神と契約を結んだことの副作用みたいなものね」


「副作用、ですか?」


「そう。闇の神、と言っても一人じゃないの。多くの神々がいるわ。その中でわたしが仕えているのは『軍神』とも呼ばれるグラディス。ここに球がついているでしょ?」


 キトラはそう言ってメイスを掲げ、柄に付いた球を見せた。


「この球はヘマタイトといって軍神グラディスを象徴する石よ。別名『血の石』とも呼ばれるわ。そして、それと同じものがここにも埋め込まれてる――」


 そう言って自分の額を指す。

 そこには確かに黒い光沢を放つ宝石が飾られている。

 あれって埋め込まれてるのか。

 痛くないのかな?

 ちなみに僕はピアスも絶対無理なタイプだ。


「この額のヘマタイトはグラディスと特別な契約を交わした証よ。その契約でわたしの力は大きく強化されているわ。しかもこのおかげで、球が手元になくてもある程度の呪文を使うことが出来るの。その代わり、呪文を使うと目がヘマタイトと同じようになってしまうの。一時的なものだけどね」


 キトラはクノップにそう説明すると、僕の方を向いた。


「あなた、わたしになぜダンジョンに行きたいのか、って聞いたわよね? それには理由が2つあるわ」


 そう言うと僕に向けて人差し指を立ててみせた。


「1つ目は、新しいダンジョン、しかもS級ならいろんなモンスターが出るでしょ? いいのがいたらスケルトンの代わりに使い魔にしたいの。あなた達が壊したんだから当然協力するわよね?」


 そう言って悪戯っぽく笑った後、次は2本目の中指を立てた。


「2つ目は、今ちょっと詳しいことは言えないけど調べてみたいことがあるの。これはあなた達の調査にもかかわってくるかもしれない事よ。どう、あなた達もわたしを連れて行って損はないと思うけど?」


 うん、確かに治癒ヒールの呪文は魅力的だ。

 呪文使うたびにあの黒目を見なきゃいけないのかと思うとちょっと憂鬱だけど。

 でもまあなんといっても普段は簿少女だし、普段は。


「あかつき~、やめとこうぜ。なんかオレ、気味が悪いよ。ただでさえ……アレなのによ」


 三日月はそう言って一瞬だけチラッとクノップの方に目をやった。

 いまだにクノップの事が苦手らしい。

 イメージと違って三日月は意外とこういうのダメなんだな。

 人をいじるのは好きなくせに、実は自分がヘタレっていう奴いるよね。


「そうですよお頭、姉御の言う通りでさあ」


「俺はお頭に従います。傷はしっかり治ってますし」


 ベース先輩は反対、ドラム先輩は消極的賛成ってところかな。


「ピックはどうだ?」


「アタイはどちらでも。『軍神』に仕える闇の司祭、とか正直カッコいいですもんね」


「あら、ありがとう。貴女なかなか見込みがあるわね」


 ピックも積極的賛成ではないけど反対はしない、か。

 見た目は幼女だがさすがに女盗賊、肝が据わってるな。

 クノップはどうだろう?


「ボクはいいと思います。先ほどの呪文の効果も間違いありませんし、お話を聞いているとかなりの実力をお持ちのようです。闇魔法に付いていろいろ聞いてみたいこともありますしね」


「あなた、やっぱり話が分かるわ。わたしもあなたのような理知的なタイプの女の子、好きよ」


 女の子って言っても、クノップは見た目はともかく中身は30だけどな。

 まあ言うと怒られるから黙っておくけど。

 それにこの美少女司祭だって実年齢は分からないしねえ。


「じゃあ多数決で決まりだな。キトラ、よろしく頼む」


「暁さん、ね。こちらこそよろしく」


 キトラはゴスロリ調のスカートをつまんで優雅に礼をして見せた。

 凄い美少女だけにサマになるな。


「おい、暁、マジかよぉ。絶対ロクなことにならないと思うぞ」


「そうですよぉ、やめときましょうよお頭」


「あなた達は黙ってなさい、バカなんだから」


「お前、バカってなんだよ! バカっていう奴の方が――」


 あーもう、騒がしいなあ。

 こうして僕らのパーティーに回復役が加わった。

 さあ、ダンジョンに向かおうか。 

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