第53話「廃墟」
すいません、土日は忙しくて全く書く暇がありませんでした。ですから書き溜めは全然出来ていません。何とか1話書けたのでアップ。
やっとこの辺りからファンタジーらしくなってくる予定です(今さら⁈)
旅を始めて3日目、平坦だった道が次第に坂道に変わってきた。
今は緩やかな上り坂の丘に差し掛かっている。
「おいお前ら、ここなんて言う場所か知ってるか?」
三日月が先輩たちに話しかけている。
あの顔は何か企んでる顔だな。
だんだん仮面越しでもそういうのも分かるようになってきたぞ。
「いや、知らねえっす。姉御は知ってるんですか?」
「そりゃ有名だからな。オルレアの丘、って知らねえか?」
「昔大きな戦があったところですかね。オルレアの戦いとかいう」
「なんだそりゃ、俺は聞いたことねえなあ。そうなんですか、姉御?」
お、ドラム先輩はなかなか物知りみたいだな。
それに比べてベース先輩はアレだな、早くからグレてたタイプだな。
きっと勉強そっちのけで悪い事ばっかりしてたに違いない。
「そうだ、昔ここで貴族同士のデカい戦があったんだ」
「それがどうかしたんですかい、姉御」
ベース先輩の質問に三日月がニヤッと笑う。
あーあ、罠にかかったな先輩。
「それがな、ここは……出るんだよ。夜になると、な」
「で、出るって何がです? 嫌だなあ、からかわないで下さいよ姉御」
「そ、そうですよ。俺達だってもういい年なんですからそんなの怖がったりしないですよ」
表情はそうは言ってないですよ、先輩たち。
「大きな戦いがあった、ってことはここで大勢の人が死んだってことですか?」
クノップがのん気に聞いている。
あの、そういう話題は広げなくていいから。
「……そうなんだよ。途中まで激戦だったんだが裏切りが出てな、それからは一方的な戦いになって」
三日月の話を聞いている先輩たちやピックの顔が真剣過ぎる。
「殺された将や兵たちの死体が無数に転がり、川は血で赤く染まったらしい。ほら、さっき通ったあの川だろう」
「ええええ?! 俺、あそこで水飲んじまいましたよお」
「そりゃあひょっとするとまずいかもしんねえなあ。それ以来、夜になるとその死体たちがうろつくんだそうだ。裏切り者はどこだ、ってなあ」
「やめてくださいよぉ、アタイそう言うのダメなんですよ!」
「な、何言ってんだピック、そんなの迷信に決まってる。ねえ、お頭」
ドラム、頼むからこっちに振るんじゃない。
僕は話しかけられたけど無視することにした。
正直、僕もこういう話は得意じゃない。
霊感は強い方じゃないけど。
「あれ? なんでそっぽ向いてるんだ暁? ひょっとして、お前もこういうの苦手、とかかなあ?」
なんでこいつはこんなに嬉しそうなんだ。
でもここで反応したら相手の思うつぼだ。
僕は徹底的に三日月を無視する。
「なんだか雲行きがおかしくなってきましたよ」
猫耳娘のクノップの声で空を見ると、なんだか急に黒い雲がかかってきている。
「こりゃマズイ、降られるぞ」
三日月の声に皆急いでマントのフードを被る。
荷物にも革布を掛けたところで降り出した。
僕らは馬を急がせたが雨脚はどんどん激しくなる。
これはとてもじゃないがフードやマントじゃしのげそうにない。
傘やレインコートみたいな雨具がないってのは不便だな。
「どこか雨宿りできるような所はないか?」
「お頭、あそこに建物が見えます!」
指さす方向を見てみると、丘を登って行ったところにうっすらと建物の影が見えている。
「よし、あそこで雨をしのぐぞ」
その建物を目指して移動した。
「こりゃあ、元は教会だったんですかね?」
近づいてみると、そこはかなり昔に見捨てられたと思われる廃墟だった。
ピックが言う通り教会として使われていたようだ。
扉は一応簡単なカギがかけられていたが、あっという間にピックが開けて中に入った。
「お、こりゃ何とかいけそうですぜ」
ベース先輩が嬉しそうに言う。
入ったそこはもともと聖堂だったと思われる広い部屋だった。
壊れかけた長椅子がいくつか並んでいる。
誰かが持ち出したのか、正面の棚には何も祀られてはいなかったが。
あちこち雨漏りはしているが、一応屋根も壁もあるし外にいるより全然ましだ。
僕らは雨が漏っていない所をさがして荷物を下ろして一息ついた。
ベースとドラム、ピックの3人が床板の一部をはがし、椅子を叩き壊して焚き木にして火を起こした。
ちょっと罰当たりだが寒さをしのぐためだ、いいだろう。
おかげで体を温めることが出来て快適だ。
「ちょうどいいところがあって助かりましたね」
「こりゃあ多分、前の戦いのときに壊された教会だな」
クノップの言葉に続いて三日月が周りを見回して嬉しそうに言う。
雨はだいぶましになったが日が陰ってすっかり暗くなってきた。
「そうですね、ずっと誰も使ってなかったみたいだ」
「なんかちょっと気味悪いですよねえ」
先輩たちはさっきの話のせいかかなりブルってるな。
「おい、お前たち、なんか食い物がないか奥の部屋のぞいて来いよ」
三日月がニヤニヤしながら先輩たちに言う。
「嫌ですよ! だいたいこんなところに食い物なんかある訳ないでしょうが」
「そうですよ、人が住まなくなってどれだけ立つと思ってるんですか!」
先輩たち、必死で抵抗してるな。
そりゃそうだ、僕だって絶対行きたくない。
結局焚き火で湯を沸かし、持ってきた食料で晩御飯を食べた。
「でもよ、こういう所っていかにも出そうだよな」
……また始まったよ、三日月の怪談話。
僕は知らんぷりを決め込むが先輩たちはばっちり反応してる。
だからいいように遊ばれちゃうんですよ、先輩。
「そ、そんなの出る訳ないじゃないですか」
「そうですよ、そもそもここは教会ですよ?!」
先輩たちの反応を聞いて三日月が嬉しそうに言う。
「お前らなんにも分かってないんだな。そもそも教会ってのは霊の集まる場所だろうが。しかもあちこちの椅子や床に刀傷や血のりの跡があった。気付かなかったのか?」
「ええ? 全然気づきやせんでした。ドラム、お前は気付いたか?」
「いや、気付かなかった。そんなのありましたか?」
先輩たちは左右に首を振る。
あーあ、完全に三日月にはめられてるよ。
「アタイ、言われてみれば確かにさっき壊した椅子にも傷があったような気がする」
ピックがこわごわ言い出す。
クノップは一人で本を読んでいるけど、ピックはしっかり取り込まれてる。
それを聞いた三日月がさもそうだろうとうなずいて話し出した。
「間違いない。ここに負けた兵士たちが逃げ込んだんだ。そこを勝った側の兵士に踏み込まれて……」
ゴクリ。
3人の息を飲む音が聞こえる。
「ここで抵抗するもあっけなくやられて何人かが斬られた。それで……」
三日月は奥の扉に目をやって言葉を続ける。
「残った奴らはきっとあそこから奥に逃げただろうな。でも多勢に無勢だ。きっとあの奥には死体の山が」
「やめてくださいよ姉御!」
「そうですよ、脅かさねえでくださいよぉ。眠れなくなったらどうするんですか!」
「へへへ、お前ら今日も交代で見張り頼むからな」
「そんなのアタイ無理です! こんな中で一人で起きてるなんて! アニキ達おねがいしますっ!」
「ちょっと待て、ピック、俺だって無理に決まってるだろうがぁ! そうだ、ドラム今日はオメエ一人で見張っててくれよ。明日は見張り休んでいいからよ」
「お前、何言ってるんだ。それなら今日はお前がやれ。俺が明日やってやるから」
とうとう仲間割れ始めたぞ。
僕は出来るだけ巻き込まれないように明後日の方を向いていた。
その時。
――ゴトン
「おい、今何か音が聞こえなかったか?」
「い、い、いやだなあ、姉御、そんなこと言ったってバレバレですよ」
「そ、そう、そうですよ、俺達のこと脅かして楽しんでるんだ、分かってるんですからね」
――ゴトン
「うわあああああ!」
「な、何か音がした。間違いねえ。どこだ、どこだあ!」
「アタイはあそこから聞こえたと思います」
ピックが指さしたのは――奥の扉だった。
「オレにもそう聞こえたな。おい暁のダンナ、こいつらに奥の様子を見に行かせようぜ」
「そんなの無理っす! お頭、姉御、後生ですから行って下さいよ!」
「そうですよ、俺達が行っても役に立たないですよ! お願しますよ!」
先輩たちは必死に頼み込んで来るが、僕はここはびしっと言ってやった。
「ベース、ドラム、ちょっと奥を見て来い」
「そ、そんなお頭あ!」
「ひでえ、ひでえよ、お頭」
どれだけ泣こうが喚こうが決定は覆らない。
僕は悪役カルロだ、恨まれるのは気にならない。
って言うか僕が行くなんて完全に無理だし!




