第49話「軍制改革」
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おかげで頑張ろうという気力が出て、何とか間に合いましたw
「お帰りなさいませ」
バルハムントの屋敷に着くと、ピカールとメリッサ達メイドが出迎えてくれた。
疲れはそれほどないので、さっそく打ち合わせに入ることにする。
「ピカール、マーカスとFを呼んでくれ」
ルーノスとナルスと一緒に執務室に入り、ミレアさんとレイナが運んでくれたお茶を飲んでいるとピカールがやって来た。
レイナが僕とルーノスをチラチラ見ている気がするのはきのせいかな?
「将軍と騎士団長殿がお越しです」
「通してくれ」
マーカスとFが部屋に入ってきた。
相変らずマーカス艦長、じゃなかった将軍は何も言わずに勝手にソファに座る。
Fにも座るように言って、ピカールも交えて会議を始めた。
「で、いかがでしたかな?」
「目的はおおよそ達成したと言っていいだろう」
DDT作戦以外は、だけどね。
僕は細かい部分はナルスに説明するように言った。
「――というように王室と連携し、保守派諸侯に対していくためのこちらの要求はほぼ認められました。従って後はそれを出来るだけ早く実行していくことが重要です」
「屯田と灌漑工事の進捗状況はどうなっとる?」
「どちらも順調です。土魔法の活用により効率が飛躍的に向上したおかげで年内にも全ての工事が終了する見込みでございます」
マーカスの質問にピカールが答える。
「という事は、街道の工事も年明けから進めることが出来るかの」
「そうですね、あと屯田の工事に当たらせている屯田兵たちの編成と訓練も進めたいところです」
マーカスとナルスの言葉を受けて、僕は温めていたアイデアを話すことにした。
「そこで提案なんだが、今の軍制を根本から変えてみたい」
「軍制を根本から変える、とはどう意味ですかな?」
マーカスと共に全員が僕の顔を見る。
僕が書いた「勇者転生」の小説の中では、フランツ王国をはじめとする「ユロア諸国」と呼ばれる国々の軍隊は、全て基本的に騎兵と歩兵、弓兵の混成部隊で出来ている。
このカルロの軍もその例にもれず、Fとルーノスが所属する近衛騎士団の騎士たちは戦争に置いては全員が騎馬の将校となる。
その将校が農民や市民を徴兵して編成される歩兵や弓兵を率いて戦う、と言うのが基本的なスタイルだ。
もちろんこれは中世ヨーロッパの軍のイメージで描いたものだ。
だがこうやって自分が領主であり軍を率いる立場のカルロとして転生してみると、モンゴル兵をモデルにした騎馬の民であるバルバロイと戦う立場としては問題が多い。
モンゴル帝国の侵略にヨーロッパ中が震撼させられた歴史を見ても、今の軍でバルバロイと戦えば相当苦戦するのは間違いないだろう。
作者として文章を書いているだけなら全然よかったこの問題も、実際に軍を率いて戦わないといけないとなると全く意味が違ってくる。
それにアルマンディー公たち保守派貴族との争いも避けられない今、どうせなら出来るだけ短時間に効率よく勝てる算段をしておきたい。
単なる自分が書いている物語としてではなく本当の戦いとなれば犠牲は少ないに越したことはないし、何より僕自身死にたくないし。
という事で考えたのが今回の軍の改革だ。
「今までのように騎兵の将校が歩兵や弓兵を率いたのでは騎兵の最大の武器であるスピードを生かせない。そこで騎士団をそのまま騎兵隊として編成し、歩兵や弓兵は別の将校が指揮を取る形にしたい」
僕の話に続いてナルスが説明をする。
今回の改革についてはナルスとずっと話し合った結果だから。
「弓兵や歩兵は今回作った屯田兵の中から将校を選んで指揮させます。歩兵と弓兵も今までは一つの部隊の中に混ぜて配置していましたが、それぞれ独立した編成にします」
「ふむ、面白い案だとは思いますが、騎士団の騎士たちの反発が予想されますな。なにせ自分たちが軍を率いることにプライドを持っていますからの」
ナルスの説明にマーカスが口をはさむ。
長年近衛騎士団の団長をやってきたマーカスが言うのだ、間違いないだろう。
でもその点は僕も考えている。
「いかに騎兵隊が有力で、なおかつ戦場において決定的な存在になりえるのかを騎士たちに知らしめる必要があるだろうな。そこで、だ。ナルス、説明を頼む」
「はい。従来型の編成と、今回行う改革をした形の編成とで演習を行おうと思います。近衛騎士団と屯田兵たちを二つに分け、それぞれをF殿とルーノス殿に率いて頂いて競い合う形にします」
「なるほど、それで圧倒的な差を付ける事になれば騎士たちも納得せざるを得ませんね」
ルーノスの言葉にFもうなずいた。
「そういう事だ。さあ、どっちがどっちを率いる?」
面白くなってきたぞ。
僕がニヤニヤして聞くと、生真面目なFが答えた。
「わたしはどちらでも結構です。どちらにせよ命じて頂ければ最善を尽くします」
それに対してルーノスは面白そうに答える。
「わたしの方が団長より長い付き合いがありますから、改革に反対しそうな頭の固い連中が分かります。そういう連中を率いてわたしが従来型の編成を受け持ちましょう。確認ですが、こちらも本気で行っていいんですよね?」
「当然だ。力を抜いてもらって勝ったところで納得させられるはずもない。本気で来た者を叩き潰してこそ改革の意味を皆に納得させることが出来るだろ」
僕の説明に、マーカスの爺さんも面白そうな顔で乗っかってきた。
「という事は、カルロさまはFと共に新制の部隊側を率いられるのですな。ではワシはルーノスと共に現行の部隊側に回らせて頂きましょうかの」
この爺さん、また完全に遊びモードに入ってるな。
この改革を失敗させたらマズイって分かってるのか?
絶対本気でやる気だろ、この艦長もどきが!
まあ負けないけどね。
「で、その演習はいつ頃行いますかな?」
「そうですね、年末の催しの目玉にしてはいかがでしょうか?」
Fの提案で、演習は年末に行われることが決まった。
「そうと決まればさっそく作戦会議じゃ。後は場所が決まったら教えて下され。ルーノス、行くぞい」
「ちょっと待て、まだ改革案の詳細が――」
「そこらはまた後程。詳しく聞いてしまうと手の内を見せられているようで面白くありませんからの」
やっぱりこの爺さん完全に面白がってるじゃないか。
まあいい、こっちだって負けるわけにはいかない。
マーカスはルーノスを引き連れて出て行ってしまった。
「やれやれ、あの爺さんには困ったものだな」
僕が呆れて言うと、Fは真顔で返してくる。
「しかしいかに現行の部隊を率いると言っても将軍は侮れません。ルーノス卿も優秀ですし」
「それについてもう二つ提案があります」
ナルスがニヤッと笑って話し出した。
「一つは騎士団の一部を高速機動索敵・偵察部隊として運用します。F殿にはその為により速く動くことの出来る騎士を選んでおいて頂きたい」
「より早くという事は、馬が速く騎手が小柄で腕が良い者であればいいですね。何人必要ですか?」
「そうですね、全体の2割をそれに当てたいと思います」
「2割とはずいぶん多いと思うのですが」
Fの疑問は当然だ。
それだけ実戦部隊の数が減ることになるのだから。
しかし「敵を知り、己を知れば百戦危うからず」と言うし、情報は極めて重要だ。
「かまわん。F、よろしく頼む」
「かしこまりました」
僕の言葉にFは素直にうなずいてくれた。
「もう一つは歩兵です。歩兵全員に5メートルの長さの槍を持たせます」
「5メートル?! そのような長さの槍を持てば自由に戦うことが出来ないと思いますが」
Fはその長さを聞いて仰天しているが、この長槍歩兵はヨーロッパで実際に使われた戦術だ。
騎兵に対して特に有効で、銃剣が出現するまで使われた戦法だという知識が僕にあった。
それを元にルーノスと考えた。
密集することでバルバロイの騎兵に対抗することが主目的だが、もちろん対歩兵部隊にも有効だ。
「まあその辺は俺とナルスに任せておけ。Fはルーノスと騎士団の分け方が決まり次第、索敵部隊の選出を頼む」
「了解いたしました」
「ピカールは灌漑工事が終わったらそのまま街道の舗装に掛かれるように手配してくれ」
「かしこまりましてございます」
ああ今日もピカールの輝きは絶好調だな。
こうして軍制改革の会議は終了した。
これで王都リュアン編は終わりです。
次の話から新しい章が始まります。




