第45話「DDT作戦Ⅲ」
寒くなって来ましたね〜。
風邪なんかひかないように気をつけましょうね!
応援よろしくお願いします☆
チェリーな僕が未体験の女の子の相手をする?!
そんなの確実に無理でしょ!
「ご希望に添えなくて申し訳ありません。でもあの子ならきっとご満足いただけると思いますわ」
ドロアは僕の気も知らず微笑むと、横に立っている黒服のおじさんに声を掛けた。
「まずは実際に見て頂くのがいいですわね。ここにエルサを連れて来てちょうだい」
黒服のおじさんはうやうやしく礼をして出て行った。
え、実際に女の子連れてきちゃうの?
「ドロア、やっぱり俺は今空いてる普通の娘の方が……」
「カルロさま、ご安心ください。見て頂ければきっとお気に召しますから」
あー、ダメだ。
交渉ではこのドロアには全く歯が立たない。
そりゃあ経験値からして全く違うもんな。
すぐにドアがノックされた。
「お入りなさい」
ドロアが声を掛けると、扉が開いて女の子がおずおずと入ってきた。
ドロアほどじゃないけど結構背の高い、目鼻立ちのはっきりした女の子だ。
年は18歳ぐらいか、確かにだいぶ可愛いぞ。
かなり緊張しているみたいだ。
「ドロアさん、お呼びでしょうか?」
「エルサ、この方にご挨拶なさい。あなたのお客様になって下さる方よ」
「え? あの、エルサと申します。よろしくお願い致します」
エルサは僕の目を見て名前を言うと、ぴょこんとお辞儀をした。
「あ、いや、あのな、ドロア」
「いかがですか、洗練されてはいませんがすれてなくていい娘でしょう? スタイルもなかなかですわよ」
「それはそうなんだが、やっぱりあの、違う子の方が……」
「あら? カルロさまのお好みではありませんでした?」
ドロアがそう言った途端、エルサと呼ばれる娘の瞳にみるみる涙が浮かんだ。
うわわわあ、泣かないでくれえ。
「あの、グスン、やっぱり私じゃダメでしょうか? お姉さんたちみたいに綺麗じゃないし、背もでっかいし」
「いや、ダメじゃない、ダメじゃないんだが」
「でしょう? この子ならきっとお気に召して頂けますわ。本当にいい子ですから」
ドロアがたたみかけてくる。
……無理だ。
女の子を目の前にして、他の娘に変えてくださいなんて絶対言えない。
「わかった、この娘でいい」
「有り難うございます。エルサ、お礼を言いなさい、あなたの初めてのお客様になって下さるそうよ」
「ぁ、有り難うございます! 一生懸命頑張りますのでよろしくお願いします」
エルサは嬉しそうにまたぴょこんと頭を下げた。
なんかもう頭の中は真っ白だよ。
「ではカルロさま、先にお代金を頂いてよろしいですか?」
「ああ。いくらだ?」
「金貨3枚になります」
僕は白金貨1枚を渡し、残りの4枚とお釣りの金貨7枚を小袋に入れた。
「エルサ、この方は見ての通りお金持ちで身分もある方よ。ごひいきにして頂けるように頑張るんだよ」
「分かりました、一生懸命頑張ります」
……頑張るって何をだよ。
年下の女の子にこんなことを言わせる罪悪感が半端ない。
僕とエルサは小部屋を出て、黒服のおじさんの案内で大階段を登って2階の部屋に入った。
中は小さなテーブルとソファの置いてある部屋、奥のベッドルーム、そして浴室に分かれている。
こういうお店の部屋だとはわからないほど広くて清潔感がある。
「明日の日の出まで時間に制限はございません。どうぞごゆっくりとお楽しみくださいませ」
おじさんが丁寧に頭を下げて部屋を出て行き、僕はエルサと二人きりになった。
うわあ~、緊張感がすごい。
何しゃべったらいいか全然分からないよ。
「エルサと申します。本日はわたくしをお選びいただきまして有り難うございます。何分初めてのお仕事で不慣れですが、心よりお仕えしますのでよろしくお願い致します」
急にエルサが床に座って頭を下げたからびっくりした。
この世界でも土下座とかってあるのか。
っていうかそんなことされると余計に緊張するから。
「そ、そんなに改まらなくていいから。さあここへ座ろう」
僕は土下座しているエルサの手を取って立たせた。
うわ、思わず触っちゃったよ。
「あ、では失礼いたします」
そのままソファに座るとエルサも隣に座ってきた。
うわ、超密着してくるし。
ムーランルージュでロゼアも隣に座ってくれるけど、ここまでべったりじゃない。
ドキドキドキ。
思わず離れたくなるけど何とか頑張って踏みとどまる。
「あの、お名前は何とお呼びすれば?」
「カルロと呼んでくれ」
エルサは背が高めとはいえカルロよりは低いから、すぐ下から見上げてくる感じになる。
近い、近いぞぉこれはっ!
「カルロさま、よろしくお願い致します」
「エルサは年はいくつだ?」
「今年で18になりました」
僕の予想がピッタリ当たった。
ああ、瞳がパッチリして鼻筋がとおって人形みたいだな。
だいぶ緊張が取れたのか、表情も豊かになって可愛い。
僕はまだ全然ガチガチだけど。
うーん、何を話せばいいんだろう。
「エルサはどうしてこの仕事をすることになったんだ?」
何気なく聞くと、エルサは急にうつむいた。
肩を落とし、下を向いたまま小さな声で話し出す。
「あの、わたし、小さい頃にお父さんとお母さんが死んでしまって、おじいちゃんとおばあちゃんに育てられたんです……」
あああ、しまった!
苦し紛れにとりあえず聞いただけなんだけど、触れちゃいけない事だったかぁぁぁ。
こういう時に経験のなさが裏目に出るよね。
「おじいちゃんとおばあちゃんは小さいお店をしてるんですけど、最近おじいちゃんの体調が良くなくって。おばあちゃんがおじいちゃんの看病をしながらお店もやってて……」
あー、こういう話はブルーになるからもう聞きたくない。
でも自分から聞いたんだから今さら止められない。
僕に出来るのはただただうなずきながら聞いていることだけだ。
「わたしも出来るだけお店を手伝ってたんですけどやっぱり売り上げが落ちてきて、仕入れのお金とか家賃もだんだん払えなくなって」
ああ、不幸だ。
こんなに可愛い子がこういうお店に来るんだから、やっぱりそういう理由があるよな。
なんであんなこと聞いたんだ、僕は本当に馬鹿だ。
「おじいちゃんの病気もどんどん悪くなるから、思い切って有名なお医者さんに診て頂いたんです。そしたら治すにはとても高価なお薬をしばらく飲まないといけない、って」
もう許してください。
聞いた僕がいけなかったんです。
「おじいちゃんが、借りているお金も払えないのにそんな薬は買えないって。自分の事は気にしないでいいから、って言うんです。でもわたし、何とかしたくてお金を貸してもらえるようにいろいろ知り合いの人に頼んでみたんですけどみんな断られちゃって」
そこまで言うと、エルサは顔を上げて僕の目を見て微笑んだ。
目にいっぱいの涙をためて。
「そんな時にドロアさんを紹介されたんです。ドロアさんはこのお仕事をすればお金は稼げる、でも本当に大変でつらい事ばっかりだからやめておきな、って。お金持ちの愛人にでもなった方がずっといい、って。でもわたしにそんなお金持ちの知り合いはいないし、今すぐお金がないとおじいちゃんが死んじゃうから。だからドロアさんにお金を借りたんです。一生懸命働いて返しますからってお願いして」
そう言ってニッコリ笑って指で涙をぬぐった。
「わたし、ドロアさんにすごく感謝してるんです。おかげでお店の借金も返せたし、薬も買えて、おばあちゃんの手紙には何回か飲んだだけでおじいちゃんすごく楽そうになったって。だから私ここで頑張ってお仕事して、ドロアさんにお金返して、おじいちゃんとおばあちゃんに楽させてあげたいんです。だから、がんばります」
……参りました。
こんないい子相手に、僕は何をしようとしてたんだ。
何がDDT作戦だよ、最低だ。
こんな子に手を出せる訳ないじゃないか。
「あの、カルロさま、わたし初めてのお客様がカルロさまでほんと良かったと思います。お優しそうですし、こんなわたしのくだらない身の上話を黙って聞いて頂いて。おかげでなんかスッキリしちゃいました。頑張りますからどうぞこれから末永くかわいがってくださいねっ」
優しそう、って僕は悪役だよ?
それにこんな店でお金に任せていろいろしようとしてるのに優しそうも何も。
やめて、そんなキラキラした眼で僕を見ないで。
たぶん次で作戦終了……かな⁉︎




