第38話「王都」
今日も読んでいただいてあざーす!
最近、ブックマークや評価が増えて嬉しいです☆
応援、よろしくお願いします。
道中では何も起きず、無事に王都リュアンへ到着した。
妨害がなかったという事は、アルマンディー公達に知られる前に来れたという事かな。
途中ところどころで野ウサギ団のやっている駅を見かけたが、まじめに働いているようだ。
仮面を着けてないから声はかけなかったけど。
王都リュアンは立派な壁で囲まれた城塞都市だ。
うちのバルハムントとは壁の高さも全く違う。
巨大な正門の横の通用口では多くの人々がリュアンに入るための審査を受けている。
僕はカルロだと言うとすぐに正門から入れてもらえた。
さすがは貴族様って感じだね。
「とりあえず無事に到着しましたね」
ルーノスが元気に言うが、ナルスはフラフラのようだ。
馬には乗れるがあまり上手くないと言うので馬車に乗せたが、かなり揺れたらしい。
「かなり急いだからな、フラウディアは大丈夫か?」
「はい、この程度は平気です」
同じ馬車に乗ってたフラウディアは元気なのに、ナルスは情けないな。
まあどう見ても頭で勝負するタイプだから仕方ないか。
見た目いかにも弱々しいし。
でも細身で美形だからこれも一部の女子にはモテそうだ。
きっとそのうちレイナと友達の餌食になるだろう。
頼むから僕が相手じゃありませんように。
「では王宮へ向かうか。フラウディア、案内を頼む」
「かしこまりました」
カルロは何度も王宮に行ったことがあるんだろうけど、僕は初めてだ。
自分で作った世界とはいえ、王都の中は細かく書いたことがないので道は全く分からない。
ドッヂも初めて来たらしく、珍しそうにあたりを見回している。
町の人たちの方もドッヂが背負う巨大な斧を珍しそうに見てるけど。
しかしさすがに王都だけあって大きな町だ。
建物も全て石造りで立派なものが多いし、道も全て石畳で舗装されている。
人の数も多く、商売も盛んなようだ。
このリュアンと比べるとバルハムントはいかにも地方都市って感じだよなあ。
ただ石造りのせいか、全体に灰色のイメージの街だ。
木造りの建物が多いバルハムントの方が僕は好きだな。
火事にはこっちの方が強いんだろうけどね。
やはり王都は道を歩く人たちもどことなくおしゃれだ。
気のせいかもしれないけど、僕らを見る人々の目が冷ややかな感じがする。
これって田舎者のひがみだろうか。
しばらく進むと、また大きな門が見えてきた。
ここを入ると王宮らしい。
フランツ王国はユロア諸国でも歴史が古く強国の一つだ。
それだけに王宮はかなり立派な城になっている。
内堀の周りに立つ大きな屋敷は貴族たちの邸宅だ。
カルロのはどれなんだろう?
ちょっと気にはなるけどここは時間が惜しいから先に王宮へと向かった。
堀に掛かった跳ね上げ式の木橋を渡り王宮に入る。
王宮の入り口で白王を預け、中に入った。
入り口は凄い高さのアーチ天井になって、ステンドグラスが煌めく荘厳なホールだ。
これにはいきなり圧倒されるなあ。
ナルスも元気になって興味深げに見ている。
頼んでいるバルハート城の設計の参考にしてるんだろうか。
ここまで豪勢なものはいらないけどね。
「カルロ=ド=メリチ辺境伯、よくお越しいただきました」
入り口のホールを抜けた部屋で、白髪の初老の男性が迎えてくれた。
ヴァルスというフランツ王国の内務大臣だそうだ。
落ち着いていかにも出来る男という感じを受けた。
「これはヴァルス大臣閣下、お出迎え有り難うございます。突然まかり越しましたのは、国王陛下に取り急ぎご報告いたしたい事がありますゆえ」
僕は出来るだけ丁寧に言った。
国王派として働く意思を見せに来たんだ、国王の側近に反感を買うような事は出来ない。
「聞き及んでおります。国王陛下もメリチ辺境伯の来られるのをお待ちです」
ここでルーノスやドッヂ、ナルス達と別れ、フラウディアだけを連れてヴァルスの後を付いて行った。
大きな階段を登り、2階の廊下をしばらく歩くと衛兵2人が守る豪華な扉の前に出る。
「中で国王陛下がお待ちです」
衛兵が開けた扉をくぐると、そこは大広間だった。
広間奥の一段高い椅子に座っているのがフランツ王ジョアン3世だろう。
その椅子の横には軍服姿の立派な体格の男が立っている。
黒い口ひげが特徴的で、その鋭い眼は心の奥底まで見通してくるようだ。
あれが「王国の守護者」と呼ばれ、軍務大臣を兼任する名将ドルズ将軍か。
武勇、指揮能力、そして国王への忠誠心のすべてに秀でていて、カルロが王位を狙って国王と対立する時には高い壁になる予定の存在だ。
「カルロ=ド=メリチ辺境伯、国王陛下にご報告致したき儀がございましてまかり越しました」
2列に並ぶ重臣たちの間を通って僕は国王の前にひざまずいて挨拶した。
この礼はバルハムントを出る時にだいぶ練習したから完璧のはずだ。
僕の後ろではフラウディアも礼をしている。
「カルロか、久しぶりじゃな。報告とはなんだ?」
前から声が掛かる。
これが国王、ジョアン3世の声らしい。
ちょっと意外だな、僕が描いていたイメージではもうちょっと普通の、というか凡庸な君主のイメージだったんだけど、重々しい感じのしゃがれ声だ。
年で言えばまだ50にならないはずだけど、もっと年配のような感じを受けた。
「最近、私の治めるバルハムントの周辺で、女ばかりを狙う誘拐事件が頻発しておりました」
僕は顔を上げて国王に報告する。
国王の横には僕を出迎えてくれた内務大臣のヴァルスも立っている。
やはり国王からの信頼が篤い男のようだ。
「身代金を要求し払わなければ人質は殺され、払っても何処かに売り飛ばされて戻ってはこないというありさまで、私がその犯人を探していたところ意外な人物が浮かび上がったのです」
「ほう、それは余の知る人物かな?」
国王は興味を引かれたようだ。
さあ、ここからが大事なところだぞ。
「左様でございます。その人物とは、ゲルグ子爵でございました」
「あの子爵がそのような事をするわけがない! メリチ辺境伯、卿は何の意図があってゲルグ子爵を陥れようとするのか?!」
僕がそう言った途端、後ろから鋭い声が飛んで来た。
アルマンディー公レジュームの息のかかった奴だな、きっと。
「ゲルグ子爵が誘拐を指示していたことは間違いのない事実です。私は本人の口からそれを聞きました」
「あのゲルグがな。にわかには信じがたいが、そのゲルグ当人は今どこにおる?」
「私が問い詰めましたところ、自らの罪を認めて館に火を放ち、自害してのけましてございます」
僕がそう言った途端、周りの重臣たちが動揺してざわつき始めた。
それほど位は高くない子爵とはいえ貴族が罪を犯した上に死んだというのだ。
そりゃざわつくのも当然だよね。
「嘘だ、メリチ辺境伯、卿がゲルグ子爵に罪を被せて殺したのだろう!」
またさっきの奴の声がした。
僕は今度は後ろを向いて顔を確認した。
30代後半ぐらいの痩せていてカマキリみたいな感じの神経質そうな貴族だ。
コイツは要チェックだな、と思った時壇上から低いがよく通る声がした。
「マクベル伯爵、うかつなことを言うものではない。いらぬ疑いは不要な争いを招くぞ」
「くっ……」
声を出したのはドズル将軍だった。
マクベルと呼ばれたあの男は悔しそうな表情をしながらも一応は黙った。
ドズル将軍は続いて僕に向かって語りかけた。
「メリチ辺境伯、卿はゲルグ子爵が罪を犯したという明確な証拠をお持ちか?」
「はい。ここにおりますのがゲルグ子爵に捕らわれておりましたフラウディアと申す娘で、シャーロット王女殿下の侍女でございます」
僕がそう言うとフラウディアは顔を上げ、ドズル将軍と国王、ヴァルス大臣に向かって話す。
「わたくしは王女殿下にお仕え致しておりますフラウディアと申します。わたくしがゲルグ子爵様に捕えられておりましたところをメリチ辺境伯様にお助け頂いたことは間違いございません」
はっきりと通る声で話すフラウディアの言葉にヴァルス内務大臣が続いた。
「その事でしたら私も王女殿下から王女殿下の侍女が里帰りをしたまま行方不明になった、という事をお聞きしておりました。このフラウディアという娘ともこの王宮で何度か会ったことがございます」
「そうか、では間違いないようだな。もう少し詳しいことを余の私室で聞くとしようか。カルロ、その娘を連れ余の私室まで参れ。ヴァルスはシャーロットを呼んでくれ」
「「「 御 意 」」」
国王の言葉に家臣たちは一斉に頭を下げた。
マクベル伯爵とかいう奴はいかにも悔しそうだ、ザマア見ろ。




