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作者が転生?!~りっぱな悪役になってやる!  作者: 梅田遼介
「王都リュアン」編
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第34話「黒幕」

こんばんは!

今回はこの事件の黒幕が登場します。

みなさんの予想通りの人物だったでしょうか?

 ――馬車襲撃の前夜。


「なるほど、その一味が馬車を襲ったタイミングでルーノスが騎士を引き連れて後ろから仕掛けると」


「そうだ。大剣を持った仮面の男と、同じように仮面を着けた女は俺の息のかかった者たちだ。その二人と主だった一人か二人を上手く取り逃がしてくれ」


「これは芝居っ気が必要ですね。まあこのルーノスが上手くやって見せますよ」


「最後に大剣の男がファイヤーウォールの魔法で壁を作るから、それで逃げられたという筋書きで頼む」


 僕は屋敷にFとルーノスを呼んで打ち合わせをしていた。

 近衛騎士団を動かすから、Fにも一応話は通しておかないとね。

 今回は出番のないFが不思議そうに僕に聞いてくる。


「ほう、両手剣を使いながら魔法も使うとは変わっていますね。どういう男なのですか?」


「まあいいじゃないか、気にするな、F。それよりルーノス、上手くやってくれよ」


「任せておいてください。子供の頃から素人芝居ではずっと主役をやってきてますから」


 この世界でも学芸会とかあったりするのかね。

 あー、主役でさぞかしキャーキャー言われたんだろう。

 想像するだけでムカつくよ。


 こうした念入りな打ち合わせのお陰で襲撃は上手く行った。

 もちろん三日月にもあらかじめ伝えてあった。




「で、いつその『上』とやらに言い訳しに行くんだ?」


「言い訳じゃねえ。報告して事実を伝えるだけだ。あれじゃあ俺たちにはどうしようもなかった。まあ早い方がいいだろう。出来れば今から行きたいんだが、どうだ?」


 ギャンは焦ってるな。

 今回の襲撃が失敗しただけでなく、騎士団が直接警戒に当たっていることがはっきりしたんだ。

 今後の打ち合わせが必要、ってことか。


「構わねえぜ。三日月も連れて行っていいな?」


「まあ、そうだな。今日の事を出来るだけ詳しく報告する必要があるしな」


「オレが上手くとりなしてやるから安心しろ、ギャン」


 これで三日月も一緒に行けることになった。

 作戦成功。

 後は黒幕を叩き斬れば一件落着だな。



「暁、あの屋敷だ。くれぐれも粗相が無いようにな」


 ギャンに連れられて行ったのはバハルムントからかなり離れた丘に建つ一軒家。

 かなり豪勢な作りだ。

 それこそカルロの屋敷と比べてもそう違わないほどの大きさ。


「ずいぶんとデカい家だな。これなら金もたんまり持ってそうだ」


 三日月がまたもや目を¥マークにしている。

 こらこら、金を盗るために襲いに来たわけじゃないぞ。

 それにしても悪党め、いい暮らししてるな。


 ギャンは裏口に回り、ドアを規則的に何度かノックした。

 これが暗号になっているようだ。

 すぐに扉が開き、僕たちは中に入った。


 僕達3人は広間へ通された。

 そこでしばらく待っていると、大柄な鎧を着た男が現れた。

 家の中で鎧を着るとは疲れるだろうに、ご苦労なことだよ。


「ギャン、どうであった? なぜこの者どもを連れてきたのだ」


 髭を生やした鎧の男は偉そうにギャンを問いただす。

 こいつが黒幕か?


「そ、それが近衛騎士団の襲撃を受けて失敗いたしました。危うく全滅す――」


「失敗? 騎士団だと? それでおめおめ戻ってきたというのかっ!?」


 鎧の男は瞬間的に激怒した。

 あんまり怒りっぽいと早死にするってテレビで言ってたぞ。

 ギャンは直立不動で必死に言い訳する。


「どうやらこのところの仕事のせいで警戒されておりましたようで。しかもあのルーノスの率いる隊でございまして、瞬く間に仲間が3人もやられてしまい――」


「ルーノス、あのルーノスかっ! あの見かけ倒しにやられたというのか!?」


 おや、こいつもルーノスの見た目に反感を持っているらしい。

 ひょっとしたら仲良くなれちゃったりして。


「は、はい。それでまさに全滅しそうになる所をこの暁という者に助けられ、なんとか逃げ延びて参りました」


「ほう、お前がルーノスをやったのか?」


 鎧の男は僕の顔をじろりと睨みつけた。


「いえ、倒してはいません。ですがなんとか振り切って撤退しました」


「ホホ、その話、儂も聞かせてもらおうか」


 僕がそう言ったその時、奥の扉が開いてもう一人の男が入ってきた。 

 白い髭を生やしたその顔を見て、僕はすごく驚いた。

 こいつはゲルグ子爵じゃないか!

 つい二日前にカルロとして会ったばかりだ。


「これは子爵様。この者どもがカルロの近衛兵の邪魔にあって失敗しましたようで」


 鎧の男が深々と頭を下げた。

 という事はゲルグが黒幕だったのか。

 しかし、人徳者として知られるというこの男が黒幕とは予想もしてなかった。

 仮面がなかったら表情でばれたかもしれない。

 当然顔も知られてるしな、仮面着けててよかったよ。


「へえ、あんたがオレ達の雇い主だったとはねえ、知らなかったよ」


 三日月もゲルグの事を知っていたようだ。

 やっぱり有名人らしいな。 


「貴様、口を慎めっ!」

「ホホ、よいよい。口外無用でな。ザクリー、ここではなんじゃのう。座ってゆっくりと話を聞こうか」


 ザクリーと呼ばれた鎧の男の指示で、ゲルグの居間らしきところに通された。

 もちろん座ったのはゲルグだけで僕たちやザクリーは立ったままだ。


「で、どういう事になったのかもう一度話してもらおうかのう」


 ゲルグに促され、ギャンがもう一度最初から説明した。

 ギャンが極度に緊張して脂汗を流しているところを見ると、ゲルグをかなり恐れているらしい。

 この様子じゃこの爺さん、見た目は好々爺だが中身は相当なワルらしい。


「……そこでこの暁がルーノスを引きつけてくれたおかげでなんとか逃げ延びた、という次第でして」


「ほほう。あのルーノスを相手に皆を逃がすのみならず、自らも無事に撤退してくるとはやるのう。暁というたな、その方なかなか腕が立つようじゃな」 


 僕がそれに答えるより早く、横から三日月が口を出してきた。


「この暁とやってまともにやり合えるとしたら、フィッツジェラルドとかいう奴とオレぐらいのもんだろうな」


 それって剣技大会の結果そのまんま。

 三日月、あんまり余計なことを言うんじゃないぞ。


「フィッツジェラルドというと、この間の剣技大会でルーノスを負かして優勝したとか言う男か。それはなかなかのものじゃ。ザクリーよ、お前もこの暁には敵わぬかもしれぬの」


 三日月の話を聞いてゲルグは急に上機嫌になった。

 逆にザクリーは凄い敵意のこもった眼で僕を睨みつけている。

 これじゃあとてもじゃないけど仲良くはなれそうにない。


「しかし、困ったのう。せっかく割の良い仕事だったのじゃが。そうまで警戒されておるとなると難しいか」


 やっぱりこの男の指示だったみたいだな。

 今ここで叩き斬ってやろうか、と思ったその時――


「失礼いたします」


 一人の少女が頭を下げ、ゲルグの飲み物を持って部屋に入ってきた。

 かなりの美少女だが、目を引いたのはそこじゃない。

 首に鉄で出来た首輪が着けられていたんだ。


「フラウディアか。ここへおいで」


「ああ、ゲルグ様、おやめください……!」


 飲み物を置いた少女の手をゲルグが強引に引き寄せた。

 少女は抵抗するが抱き寄せられてしまう。


「その女は……?」


 ギャンはこの子に見覚えがあるようだ。


「そうだ、先日お前が捕えた女だ。この女はフラウディアと言いシャーロット王女の侍女だったのだ」


 ザクリーがギャンに言う。


「ホホ、お前はなかなか良い仕事をしたぞ。普通の女なら楽しんだ後すぐに身代金を取ってから売り払うのじゃが、王女の侍女、それもお気に入りのとなれば話が別じゃ」


 嫌がる少女を抱きかかえたままゲルグが言う。


「このフラウディアはレジューム様に引き渡す。公もさぞかしお喜びになるだろうて」


 ホッホッホ、とゲルグが愉快そうに笑う。

 これはまた大物の名前が出てきたな。


 アルマンディー公レジューム。

 中央集権化を図るフランツ国王ジョアン3世に敵対する守旧派貴族の筆頭であり、フランツ王国と隣国イタリーノ王国両方の王位継承権を持つという大物中の大物だ。

 まさかゲルグがレジュームと繋がっていたとは。


「その為にこの娘には手を出さずに来たのだ。王女はこの侍女をことのほか可愛がっているという。レジューム様なら上手くお使いになるだろう」


 なるほど、ゲルグはこの子をレジュームに取り入るための道具にし、レジュームはこれを国王に対抗するための駒にしよう、という事だな。


「ゲルグ様はてっきりメリチ辺境伯と仲がいいのかと思っておりましたが」


 僕がそう言うと、ゲルグは急に表情を変えて忌々しげに言い捨てる。


「誰があんな金髪の小僧に好き好んで尻尾を振るものか。それもすべてはアルマンディー公の指示によるものよ」


 これはいいことを聞いたぞ。

 今日ここで悪党退治をする予定だったけど、作戦変更だ。

 

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