第28話「ロゼア」
本日2話目の投稿です。
綺麗なお姉さんは好きですか?
トロールを倒した後、僕らは風車の中の人たちにそれを伝えた。
風車に逃げ込んでいた住人達は最初半信半疑だったが、外に出て倒れた2匹のトロールを見ると驚いたようだ。
「あんた達、本当にアレを倒しちまったのか。しかも2匹も……とんでもなく強いんだな」
「暁の兄貴と三日月の姉御がいりゃあ、この程度はどうって事ありませんよ!」
ピックが嬉しそうに自慢してみせるが、三日月は相変わらずクノップを薄気味悪そうに見ている。
「どうした、三日月。なんかお前らしくないぞ?」
「そうは言うけどさ、暁。あの猫耳の魔法使い、おかしいぞ?最後のとどめとはいえ、あんな魔法オレは見たことも聞いたこともない。何も見えないのに突然あのデカいのにちっこい穴が開いて、その途端にお陀仏だ。気味悪過ぎだろうよ」
まあ、銃など全く存在しないこの世界の人間から見たらそうだろうな。
「まあそう言うな。別にクノップは怪しくはないさ。ただ普通の魔法にいろいろ工夫してるだけだ」
「そうかなあ、そもそも最初のファイヤーボールだってとてつもない威力じゃなかったか?」
「何かボクの話してますか?」
クノップがやってくると、三日月は慌てて取り繕う。
「あ、いや、あんたの魔法が見た目と違ってスゲエ、って褒めてたところだ」
「そっか、ありがとうございます。三日月さんの弓も凄かったですよ」
そう、三日月の弓の腕前も神業級だ。
もともと暁が弓の名手っていう設定だったからかな?
ちなみに僕の腕はどうなんだろう。
弓はまだやったことないから分からないなあ。
なんとなく出来そうな気はするけど。
「そういえば最初に言ってた魔眼っていうのは何なんだ?」
僕は気になってた事を猫耳娘に聞いてみた。
「両眼を見えないように縫い合わせてたでしょ?あれが魔眼。視野を奪う代わりに強力な魔力を与える、呪いのようなものだよ。問題は誰があれをやったのか、ってことだね」
ということは、あの二つ頭のトロールが出た裏には誰かが居る、っていうことか。
気をつけておかなきゃいけないな。
集落の皆さんに後片付けをお願いして、僕らは街に戻ることにした。
ギルドへの報告のために2匹のトロールのそれぞれ左耳を切り取った。
と言っても切るのは三日月に任せたけど。
僕はそういうグロいのは無理。
トロールは特にめぼしいものは何も持っていなかった。
シケてるなあ。
僕らが集落を離れる時、住民みんなで手を振って見送ってくれた。
何人か犠牲が出たみたいだけど、頑張って復興してほしいものだ。
ギルドへ行くと、そこでは質問攻めにあった。
どんな敵だったか、どういう倒し方をしたのかなどなど。
どんな敵だったかはともかく、倒し方はちょっとぼやけさせて答えておいた。
特に最後の呪文、あれに関してはトップシークレットだよ。
ギルドに3つの左耳を添えて報告すると、報奨金がアップされて40枚になった。
二つ頭で魔法も使う危険な相手だったことと、もう一匹現れたのも倒したことが理由らしい。
これでちょうど一人あたり金貨10枚になった。
「へへ、これは有り難いねえ。でもどうせならもうちょい色付けてくれてもよかったのにな」
三日月が欲深いことを言う。
ホントお金が好きだね、この人は。
クノップは研究資金に充てるそうだ。
ピックが「これどうしましょう?」って聞いてきたから、「野ウサギ団で分けろ」っていったら喜んでた。
ギルドホールを出て僕は隠れ家に戻り、カルロの服に着替えて屋敷へ戻った。
小鹿亭へ行こうかと頭をよぎったけど、まだ時間が早いし行き過ぎてフェシリアにキモいと思われると嫌だから自重した。
「お帰りなさいませ、カルロさま」
メリッサとレイナ、近衛隊長のルーノスが迎えてくれた。
屋敷に入ると、ルーノスが僕に手紙を手渡す。
「なんだ、誰からだ?」
「とりあえず開けてご覧ください」
一瞬ルーノスがニヤッと笑ったぞ。
開けてみると、手紙は「ムーランルージュ」のお姉さん、ロゼアからだった。
「なんと書いてあります?」
ルーノスがすました顔で聞いてくる。
そうか、ロゼアがルーノスにこの手紙を託したんだな。
中を読むと、この間は楽しかったという事が丁寧に書いてあった。
もし僕さえ良ければ、ぜひまたお会いしたいと。
それと、何やら僕に紹介したい人物を見つけたとも書いてあった。
「ああ、また俺に会いたいという事だ。ロゼアも困ったものだな」
やったぜ、ロゼアはルーノスじゃなくて僕に会いたいんだってさ!
正直、僕は嬉しくて自慢したい気満々だったが、ここはぐっと我慢してそっけない態度を取った。
「まあ、ああいう仕事の女にとって、こういう手紙を客に出すのは仕事の一部みたいなものですからねえ」
ルーノスの奴、僕に嫉妬してるな?
ロゼアに限ってそんな仕事の営業で手紙を出すような子じゃないよ。
色男のルーノスも、意外と女心が分かってないな。
「まあ仕方ない、今日これからでも行ってやるか」
「え、さっそく行くんですか?では私もお供しましょうか」
ルーノスの奴、呆れたような声出して何なんだ。
会いたい、って言ってくれてるんだから会いに行くだろ、普通。
「いやいい、俺一人で行くから大丈夫だ」
晩御飯を食べてから僕は屋敷を出て、ムーランルージュへ向かった。
ハーブのお陰でだいぶ食生活が改善されたのは嬉しい限りだ。
この間はパスタとバジルでジェノベーゼを作ったら美味しかった。
いつかカレーが食べたいなあ。
「いらっしゃいませ~」
ムーランルージュに入ると、またそこには艶やかなお姉さんたちが勢ぞろい。
「いらしゃいませ。ご指名はございますか?」
黒服の男の人が聞いてくるので名前を告げようとしたら、後ろからそのロゼアが現れた。
「まあ、カルロさま。お越しいただいたのですね、ありがとうございます」
「ああ、手紙をもらったし、近くまで来たのでな」
この間と形は違うけど、今日もロゼアは真紅のドレスを着ている。
前回ほど胸元はあいていないけど、スカートのスリットが深く入っていて色っぽいのなんの。
「このお方は私のお客様です。私がご案内します」
僕はロゼアに手を取られて席まで案内された。
あ、やばい。
何気に大人になって女の人と手を繋いだのは初めてかもしれない。
ドキドキしながら席に着く。
横にピッタリとロゼアが寄り添ってくる。
「お手紙なんか差し上げて申し訳ありませんでした。ご迷惑じゃありませんでしたか?」
「いや、構わん。大丈夫だ」
というより女の人から手紙貰ったのも初めてで、嬉しかったよ。
なんか意識しちゃって、うまく話せない。
足を組んだロゼアのスリットからのぞく太ももが白くて綺麗だ。
ああ、見ちゃだめだ、見つめちゃだめだ。
そう思いながらついチラ見してしまう。
「何をお飲みになりますか?」
ロゼアが聞いてくれる。
えっと、確かこういうお店って「ボトル」とか言うのを頼むと女の子が喜ぶんだよな。
でもすっごい高いのもあるって、テレビのドラマでやってた。
何を頼んでいいのか全然わからない。
やっぱりルーノスについて来てもらえば良かったな。
えーい、しょうがない、僕は正直に言うことにした。
「ボトルを頼みたいのだが、正直良く分からん。俺はこういう店には来たことがなくてな」
「まあ、そうなのですね!では私のためにわざわざ……有り難うございます。では私が代わりに注文いたします。お値段的にはどの程度のものがよろしいですか?」
ロゼアが面白そうに笑った。
でもバカにされている感じはしない、しかもちゃんと予算を聞いてくれるなんていい子だな。
今日はトロール退治でもらった報奨金があるから、それを使おう。
「そうだな、今日は金貨を10枚持っているから、その中で頼みたい」
金貨10枚という事は100万円だ。
ここがどれだけ高級か分からないけど、それだけあれば足りるだろう。
すると急にロゼアが真顔になって僕を見つめた。
「カルロさま。お金持ちなのは存じております。また私のためにご注文頂くのもとても嬉しゅうございます。でも、そんなに高いお酒はお頼みにならないでください。一度にお使い頂くより、その分何度もカルロさまにお会いできた方がロゼアは嬉しいです」
そう言ったかと思うと笑顔になって言葉を続けた。
「実は私がとても好きなお酒がありますの。それなら全部合わせても金貨1枚で足りますから、それを頼んでよろしいですか?」
「ああ、じゃあそれを頼もうか」
出てきたお酒はほんのり甘くて、おいしいスパークリングワインだった。
ロゼアもそれを飲みながら楽しそうに笑っている。
あんなセリフ、三日月なら絶対言わないよなぁ。
それよりもっとお金持って来い、とか言いそうだ。
「そう言えば、手紙のなかで紹介したい人物がいる、と言っていたな」
「そうなんです。この間ここにいらした方なのですが、カルロさまのお役にたてる方なのではないかと思いまして。少々変わった方なのですが」
そっか、ロゼアは普段から僕のことを考えてくれてたんだな。
その人物に今度会ってみよう。
こうして楽しい夜は更けていった。
今日は1日2話投稿の最終日なので、もう一話投稿します。11時頃の予定です。




