第27話「トロール退治Ⅱ」
2週連続毎日2話投稿も、早いもので今日が最終日です。
今日はその記念に3話(最後はネタ回)投稿しようと思います。
今回はトロール退治の続きです!
「い、いかん、アレがぎたぞ!急いで風車の建物に入れぇ!」
その地響きが聞こえた瞬間、住民たちがパニックになった。
「俺が前で奴を引きつける。三日月は弓で攻撃してくれ。クノップは詠唱準備、ピックはそのサポートだ」
僕の指示でみんながスタンバイする。
これが事実上の僕の初陣だ、正直、足が震える。
仮面のお陰で表情が見られないだけまだましだな。
ズウウウン、ズウウウン
地響きがいよいよ近づいてくる。
僕が身構えた、その時。
木立ちの向こうからそいつの頭が見えた。
二つの頭が。
一つの頭は人間と似た顔で、それでいてどことなく歪な、見た者を不快にするような表情で――笑っている。
そう、獲物を前に嬉しさをこらえられない、というような表情で僕たちを見て笑っているんだ。
そしてもう一つの頭は。
同じく人の顔に似ているのだが、その両目のまぶたが太い糸のようなもので縫い合わされている。
しかも目が見えないにもかかわらず、もうひとつの頭と同じようにニヤニヤと笑っている。
なまじ人に似ているだけにおぞましい、生理的な嫌悪感と恐怖を呼び起こす生き物。
しかも相当大きい。
あの木の上から顔が出るという事は、5メートルを超えているのは間違いない。
――こりゃ、マジで巨人そのものじゃないか。
僕たちには宙を駆けて戦う装置なんてないんだぞ。
でもまあ魔法があるぶんこっちの方がましかな。
さあ、どう戦うか。
トロールは僕らを見て笑いながら近づいてくる。
右手には2メートル以上はある巨大な棍棒を握っている。
いよいよ戦闘距離だ。
「あの目を綴じた頭は『魔眼』だ。間違いなく魔法を使ってくるよ!」
クノップが叫んだ。
厄介だな、魔法とは。
でもわかってる分だけ有り難い。
――レウス!
僕は頭の中でレウスを呼び出し、呪文を唱えて左手で印を切る。
「ファイヤーソード!」
すると僕のオリハルコンの剣は炎に包まれた。
があああああああ
トロールは意味不明な声を上げると同時に僕に向かって棍棒を振り上げた。
「行くぞ!」
僕の叫びと同時に戦闘が始まる。
トロールが僕に向かって棍棒を振り下ろす。
ものすごいスピードと風圧だ。
くっ――
それを僕は横に跳んで避ける。
三日月の放った矢がトロールの右肩に突き刺さった。
「へへ、どんなもんだ」
三日月が続けざまに矢を放つ。
棍棒を持つ右手を集中的に狙っているようだ。
するとトロールの目を綴じた方の頭が何かを叫び、それと同時に突風が矢を吹き飛ばした。
「だめです、風の魔法で矢が届いてない」
ピックは叫びながらスリングで石を投げているが、それではダメージを与えられない。
でもその隙に僕はトロールの足元に飛び込んだ。
やっぱりでかい、僕の頭が腰まで届いてないぞ。
僕は右手のファイヤーソードを目の前の太ももに叩きつけた。
ぐわああ!
トロールは痛そうに叫んで僕を蹴りつけた。
僕はそれと同時に後ろへ飛んだのでダメージはない。
でもトロールにも深手は与えていないようだ。
「行くよっ!」
クノップが叫び、杖をかざして呪文を詠唱する。
その瞬間、巨大な火球がトロールの上半身を襲い、ぶつかる瞬間に爆発した。
ファイヤーボールの呪文に風魔法で酸素を上乗せしたようだ。
トロールの上半身が赤く焼けただれている。
さすがにダメージが入ったようだ。
これならいけるか?
「左から来ますっ!」
そう思った瞬間、ピックが叫んだ。
左を見ると、ものすごい勢いでもう一匹のトロールが走ってくる。
こっちは一つ頭で大きさも3メートルぐらい。
足は遅いけど重戦車みたいだな。
普通のトロールのようだ。
「新手か、どうする?暁!」
三日月の声に僕は一瞬考えたがすぐに答えを出した。
「俺がやるからそっちを頼む。攻撃はクノップの魔法を中心に、三日月とピックは敵を引き寄せてくれ」
ヘイト管理、ってやつだね。
こういう時にMMOの経験が役に立つ。
「わかった、こっちは任せろ」
三日月は頼りになるよ、ほんと。
さあ、こっちも頑張らないと。
新手のトロールも同じように棍棒を持っている。
だがこの大きさで魔法もないとなれば何とかなるだろ。
両手で剣を構えた。
ごわああ!
トロールが棍棒で殴り掛かってくるが、それをオリハルコンの剣で受け止めてみる。
グワアアン!
鈍い音が響いたが、大丈夫、受け止めた。
さすがに力が強いが、僕には作者補正が掛かってる。
そのままその棍棒を流し、がら空きのトロールの胴に剣を叩きこむ。
グヤアアア
痛みに苦悩するトロール。
一刀両断、とはいかなかったがかなりの傷は負わせたぞ。
ブン、ブン、ブウン!
傷を負ったトロールは、棍棒を振り回して襲ってくる。
捕えられないスピードじゃないが、どれも当たれば即死の威力がある。
慎重に避けながら隙をうかがう。
早くこいつを倒してあっちの援護に行きたいけど、油断は禁物だ。
ファイヤーソードの火力を上げて、付与するダメージを大きくしておく。
トロールが大きく空振りして体勢を崩した、その瞬間。
僕は手の届く高さに来たトロールの首筋へ剣を叩きこんだ。
炎をまとったオリハルコンの剣が、トロールの首へ食い込む。
僕は抵抗を感じながらも、そのまま剣を振り切った。
ずどおおおおおん
トロールの首が落ち、体は前のめりに倒れる。
やった、向こうはどうだ?
僕が右後ろを見ると、三日月たちは善戦していた。
三日月は剣を使わず、弓でトロールを射続けている。
矢は魔法でほとんど届いていないが、むしろそれで魔法を他に向けないための策だろう。
至近距離ではピックが相手の攻撃を誘って避けている。
あの小さな体で巨大な棍棒を相手にするのは怖いだろうに。
でもかすらせてさえいないようだ。
クノップが新たな魔法を放った。
風の初級魔法「竜巻」に水の魔法で作った氷片を混ぜ、トロールを切り裂く作戦のようだ。
氷の竜巻はトロールの目が開いている方の頭を捕えた。
上手い、おかげでトロールの目が見えなくなっている。
もう一方の頭は元から目を縫い合わされているから、今は何も見えていない。
「今だ、行くぞ!」
僕は叫んで、走ってトロールの後ろに回った。
頭を抱えて苦しむトロールの右足の膝の裏めがけて思い切り剣を振り下ろす。
ズバッ――
走りざまにそのまま続けて左足も狙う。
これもうまく膝裏にヒットし、両足をやられた二つ頭のトロールは膝をついた。
「行けるぜ、暁!」
三日月は叫ぶと、矢をつがえて魔法を使う余裕のなくなったトロール目掛けて放つ。
狙いすましたその矢は、目が開いている方の頭の左目に突き刺さった。
「ザマア見やがれってんだ!」
どうやらそれは狙ったものらしい。
神業だな、まったく。
僕は苦しんで身をかがめているトロールの背後から近づいていく。
そこから思い切り飛び上がり、魔眼の方の頭の首筋にファイヤーソードを突き立てた。
ぐわあああああああああ!
魔眼の方の頭は絶叫すると、そのまま動かなくなった。
よし、後は目の開いている方の頭だけだ。
しかも片目は潰されている。
トロールは右手で巨大な棍棒を振り回しながら何とか立とうとするが、やはりあの脚では難しいらしい。
「この機を逃すな、行くぞ!」
僕は叫ぶと同時にトロールの正面左側に回り込む。
体の自由がきかないトロールは僕を殴ろうと外を向くが、片目を潰されて遠近感が無いので当たらない。
それをかいくぐりながら僕はトロールに斬りつけていく。
さらにそこへ三日月とピックが逆側から攻撃を仕掛ける。
もはや勝負は時間の問題だ。
「行くよ!氷の弾丸!」
クノップが叫んだ瞬間、パンッ!という乾いた炸裂音と共に残った頭の額に小さな穴が開き、トロールはゆっくりと倒れた。
「い、今のは何なんだ……」
勝利の喜びもなく、三日月が気味悪そうに振り向いてクノップの顔を見た。
「アンタがやったんだよな、今の。何なんだ、こんなの見たことねえぞ……」
「カル……じゃなくて暁か、あの魔法上手く行ったよ。狙いが難しいからなかなか使えなかったけど」
そう、今の魔法は僕がクノップに教えたものだ。
実はクノップの持っている杖は鋼で出来ていて中は空洞になっている。
そこに詰めた氷魔法で作りだした弾丸を、風魔法で極限まで圧縮した空気の球の爆発力で打ち出す。
いわば魔法のエアガンみたいなものだ。
この特製の杖はクノップの為に伝説の鍛冶屋モーハンに作ってもらった。
杖の内側には、ご丁寧に螺旋状の溝まで切ってあるというこだわりようだ。
このおかげで高速で打ち出された氷の弾丸は、ジャイロ効果でよりまっすぐ飛ぶことが出来る。
これが僕らが巨人と戦うための武器なのさ。




