第24話「政策」
ちょっと遅れました。
今日2話目の投稿です。
剣技大会が終わってマーカスは正式に将軍となり、Fも同時に近衛騎士団長となった。
僕直属の近衛騎士団1番隊の隊長はルーノスだ。
とにかく長い就任式典が終わり、僕はヘトヘトになった。
こういう正式な場所ってホント肩が凝るよな。
それが終わったら次は内政に関する仕事だ。
基本はルーカスに丸投げしてるけど、やっぱりカルロがやらなきゃいけない仕事もいろいろある。
「ピカール、今の財政状況はどうだ?」
「増税のお陰をもちまして、現在の資金は潤沢でございます。多少カルロ様がお使いにはなられましたが」
あ、今嫌味言ったろ。
でも気付かないふりして話を続ける。
「それは良かった。では穀物庫の方はどうだ?」
「豊作に加えての増税で、かなりの量が入っております。7割といったところでしょうか」
「ということはまだ3割も入るな。ピカール、今年は豊作で小麦の価格も安いだろう。小麦を蔵に入るだけ買い付けろ」
小麦の買い付けを指示したのには訳がある。
野ウサギ団からの情報で、ユロア諸国は今年は豊作だが、さらに西方の国々は雨不足で小麦の出来が悪く来年はかなり厳しい状況になりそうだということが分かったからだ。
それなら小麦の相場はいずれ上がるだろうと踏んだというわけ。
「ピカール、刈り入れが終わったから新たな政策を始める」
「新たな政策と言いますと?」
「大きく分けて3つだ。まずは灌漑。このバルハムントのそばに巨大な溜め池と用水路を作る。そのために収穫の終わった農民たちを動員する」
「無理です、そんなことをすれば増税のとき以上に農民の不満は高まります!」
「分かっている。だがこれは絶対に必要なことだ。バルハムント周辺に流れ込み湿地帯を作っているホラムス川の流れを引き込んで溜め池を作る。その利点は3つ。一つ目はこのバルハムントの低地の水はけがよくなり、庶民の生活や衛生状態が改善する。二つ目は湿地から水がなくなることで農地化することが可能になる。3つ目は日照り対策だ。溜め池の水を使うことで日照りの被害が軽減するだろう」
「おっしゃることは分かります。確かに有用だとは思います。しかしカルロ様への不満が高まることは避けられません」
「前にも言ったが、俺は民衆の支持を得ようとは思わん。別に理解される必要はない。俺はただ自分がやりたいようにやる、それだけだ」
「しかし……」
「くどい。あと二つの政策は軍を動かす必要がある。マーカスを呼べ」
納得したとは言い難い表情でピカールは出て行った。
僕は民主主義で選ばれた為政者じゃない。
しかもカルロは悪役だ。
力をつけることが出来て評判が下がるなら、むしろ一石二鳥と言ってもいい。
増税でお金はあるから、動員する農民たちにも手当は払ってあげられるしね。
「マーカス将軍をお連れしました」
ピカールに連れられてマーカスがやってきた。
「何かワシに御用とか」
「そうだ。この辺境領の兵力は近衛騎士団を除くと農民たちの動員に頼っているのだな、マーカス」
「さようですな。常備の兵力は実質近衛騎士団のみで、あとは必要に応じて農民たちを動員しております」
やっぱりそうだ。
この世界のユロア諸国にはほとんど常備兵がいないのが常識だ。
だから戦争は農閑期に農民を動員して行われる。
日本の戦国時代の武田・上杉なんかと同じだな。
だが騎馬の民であるバルバロイはその制約を受けない。
「先日話していたバルバロイへの対策を考えた」
「ほう、いい案がありましたかな?」
「屯田制をやろうと思う」
「屯田、と言いますと」
「農家の次男、三男など家を継ぐことが出来ない者たちを集め、軍を組織する。その者たちに北の国境付近を開墾させる。その開墾した土地を自分のものとすることを認める代わり国境警備をさせるんだ」
屯田は三国時代の魏の曹操がやったことで有名。
これは収穫量の向上と対バルバロイの防衛力アップの一挙両得を狙ったものだ。
「なるほど、その土地の所有を認められるとあればその者たちも開墾にせよ防衛にせよさぞ力が入ることでしょうな」
「そうだろう。それに加え、北方国境に長城を作る。長城と言っても大したものではない。せいぜい馬で飛び越えられない程度の高さの土塁でいい。開墾と同時に作っておけば、多少は役に立つだろう」
「それは妙案。バルバロイは騎馬の民、その速さこそが一番の脅威です。多少なりともその勢いを殺すことが出来れば意味がありましょうな」
「ではさっそく募集をかけ、屯田兵を組織しろ」
「かしこまりました」
マーカスは頭を下げた。
僕のアイデアに賛成してくれたみたいだ。
「三つ目の政策は、このバルハムントに入る他所の商人に関税をかける。街の入り口すべてに関を作り、街への出入りを管理して関税を徴収する。バルハムントの商人や、関税をきちんと払った他所の隊商には手形を渡して通行を許可する」
するとピカールがこのアイデアに疑問を投げかけてきた。
「それはなかなか面白いと思います。しかしもし他所の街も同じように関税をかけてきたらどうなさるのです?」
さすがはピカール、なかなかいい質問だ。
だてに頭が光ってないな。
「その場合はそこと取引している商品の種類や量を見て、こちらの方が不利だということになれば互いに関税を減免する取り決めを結べばいいだけの事だ。その交渉は俺がやろう」
通商協定、ってやつだね。
何にどれだけ関税をかけるかは慎重に決めないと。
うちにとって必要な物の関税は低く、うちが育てていきたい品と競合するような物の関税は高くする。
「なるほど、それならうまくいきそうですな。しかしその関には兵を置かなければいけないでしょうね」
「そうだ、そこは二人で相談してやってくれ」
ここで話はできないが、その手形を持っていない隊商は野ウサギ団に襲わせる。
まあ昔の国公認の私掠船みたいなもんだな。
そのうわさが広まったら関税逃れも減るだろう。
こういうことが出来るのも悪役の利点だろうね。
「それに加えてバルハムント内での商売の免許をすべて廃止する。誰がどんな商売をしようが自由だ。冒険者ギルド以外のギルドはすべて解散させろ。市で物を売るのもすべて自由とする。今年は3割取った販売税も来年以降は1割とするとふれを出せ」
「それは既存の商人たちが反発しましょう。経済が停滞しませんか?」
ピカールが聞いてくるがそれは逆だと思う。
むしろそうすることで多くの商人がバルハムントにやってくるだろう。
バルハムントを拠点として商売すれば、販売に対する1割の税さえ払えばあとはすべて自由。
外から物を持ち込んでも、外に物を売りに行っても関税はかからないのだから。
これは信長の楽市楽座の丸パクリだ。
「以上の3つを可及的速やかに実施してくれ。特に灌漑は来年の春までに何とか間に合わせたい。その為に作業をいくつかの班に分け、互いに競わせて早く目標を達成した班に報奨金を出してくれ。効果があるはずだ」
「可及的速やかに」っていうのはただ使ってみたい言葉だっただけ。
人生の中で使う機会なかなかないもんなあ。
班分けで競わせるのは藤吉郎の「一夜城」と呼ばれる墨俣城建築のアイデアをパクった。
なんやかんやみんな競争って燃えるしね。
「分かりました。ではこの3つの政策は出来る限り速やかに行います」
ピカールとマーカスが頭を下げて出て行った。
富国強兵は政策の基本だ。
しっかりバルバロイ対策をして勇者の転生に備えないと。
りっぱな悪役になってやる!
はあ、それにしても疲れた。
働きすぎだよな、僕。
なんかリフレッシュしないと。
ありがとうございました。
ブックマーク、評価、感想など貰えたらムッチャ嬉しいです☆




