第22話「剣技大会Ⅲ」
剣技大会もいよいよカルロ対Fの決勝戦を残すのみ!
果たして勝つのはどっち?
ルーノスとFとの試合も終わり、いよいよ僕とFとの決勝戦だ。
Fのさっきの試合は熱戦だった。
その疲労が少しでも抜けないうちに試合を始めよう。
こういう時に悪役は手段を選ばないでいいから楽だな。
「よくぞ勝った、フィッツジェラルド卿!これで新たな騎士団長は貴公に決まった。だがまだ優勝は決まったわけではないぞ!」
僕が大声で言っても、拍手はパラパラだ。
「もう始めるのか?フィッツジェラルド卿が不利じゃねえか?」なんて陰口も聞こえてくるけど無視。
だいたいFを相手に正攻法で行って勝てる訳ないだろ!
「さて、これからいよいよ決勝を戦う訳だが、俺からフィッツジェラルド卿に提案がある。せっかくの決勝だ、練習用の武器ではなく、愛用の実戦用の武器で戦わないか?」
僕の言葉に競技場がどよめいた。
僕の意図が分からなくて戸惑っているようだ。
もちろん僕の意図は他にはない。
ただオリハルコンの剣を使いたいだけだ。
正直あれを使わないとFにかなう気が全然しない。
ちょっとでも勝率を上げるための作戦だ。
「安心せよ、卿を傷付けようなどという意図はない。攻撃は全て寸止めと致すゆえ、どうだ?」
「私の方は異存は御座いません。カルロ様のお考えの通りに致します」
Fが頭を下げた。
Fならそう言ってくれると思ったよ。
「ではそうしよう。これに俺とフィッツジェラルド卿の剣を持て!」
来た来た来た。
我が愛しのオリハルコンちゃん。
これでまた勝利に一歩近づいたぞ。
まずは僕の名前が告げられる。
またもやお愛想の拍手がパラパラ。
これ、前回より減ってないか?
続いてFの名前が告げられると、予想を超える大歓声。
すっかり観衆の人気を得たようだ。
こりゃルーノスのファンまで応援してるな。
だからミーハーは嫌いなんだよ。
「さあ、では始めようか!」
時間を掛けてFの疲労が回復しないように、すぐに試合を始めさせる。
僕は白王に、Fも愛馬にまたがって互いに礼をする。
試合が始まった。
さあ、どう攻めようかな。
今までに何度もFとは練習を重ねてきたから、互いの手の内は分かっている。
ただFはこのオリハルコンの剣を使った時の僕のスピードを知らない。
それをどこでどう使うかだな。
まずはお互いに馬を進めて距離を縮める。
たがいに剣を軽く打ち合わせていよいよスタートだ。
いつもの練習の時のように、Fは僕の出方を待っている。
Fは礼儀正しいから上司である僕に不意打ちなんかは絶対しない。
だから僕から思い切って打ちかかってみる。
スピードはあえて抑え目で、いつもと同じぐらいにコントロールする。
僕のスピードが上がっていることを知られちゃいけない。
切り札は最後まで取っておくものだ、って言ってたのは悪い伯爵だったか誰だったか。
上段から、右から、左から剣を振り下ろす。
しかし正確な動きでFはそれをすべて受け止める。
目線でフェイントなんかも入れてみるけど全然効果なし。
うーん、余裕で対応されているなあ。
よろしい、では力比べだっ!
真正面から打ちかかった僕の剣をFが受け止める。
そのままグイグイと押し合う。
「おおおおお!」
僕の前の試合の記憶から、観客が歓声を上げる。
そうだ、僕はあの巨漢野郎を相手にしなかった力の持ち主だ。
うーん、さすがはFだ、ビクともしない。
押し返されるわけじゃないけど、押し切れない。
全くの互角みたいだ。
これじゃあ僕の疲労がたまる一方だ。
このままスタミナ勝負に持ち込むか、とも一瞬思ったけどやめた。
Fがどれだけのスタミナを秘めているのか分からない。
だいたい練習のとき僕の息が上がってもFの呼吸が乱れたのを見たことがない。
そう考えると僕のスタミナよりFのそれは数段上回っていると考えた方が自然だ。
そもそもFってチートすぎるキャラなんだよな。
顔はいいし性格はまじめで剣の腕も力もスタミナも抜群。
こんなのズルいよ。
そもそも自分で作った設定だし、僕も人のことを言えた義理じゃないけど。
仕方がないから一つスピードのギアを上げてみる。
これでさっきのルーノスと同じくらいの速さだと思う。
この速さでルーノス以上の連続攻撃をやってやるっ!
僕の剣が残像を描きながらFに襲い掛かる。
ヒュンヒュンという風を切る音に、金属同士が激しくぶつかり合う音と火花が入り混じる。
ただ打ち込むだけではなく、そこにフェイントを混ぜていく。
両手で打ち込むだけじゃなく、急に右手に持ち替えて軌道を変えてみる。
こんなことが出来るのもこれがオリハルコンの剣だからこそだ。
多少Fの動きにも余裕がなくなったように思えるが、僕もこんな攻撃を長く続けるわけにもいかない。
しばらくそうやって攻め続けたがFの防御の壁を破ることはできず、一旦白王を下げて距離を開けた。
「うわああああああ!」
それまで息を飲んで見つめていた観客たちが大歓声を上げる。
その中には「てっきりさっきの試合は八百長だと思ってたけど、カルロ様もすごいじゃないか」なんて声も聞こえてくる。
おいおい、そんなふうに見えてたのか。
まああの巨漢を力で押し切るなんて嘘くさかったかな。
でも正直ガッカリだよ。
「さすがだな。お前のような部下を持って俺も鼻が高い」
僕がそう言うと、Fもボクを褒めてくれた。
「カルロ様こそ、いつにもまして激しい攻撃。正直何度か危ないところもありました。さすがです」
Fに褒められるとやっぱりうれしいな。
でも本番はこれからだ。
ここまではさっきのF対ルーノスの戦いと同じパターン。
これは計算通り。
僕の狙いはずばりFがさっき見せた必殺技「後の先」だ。
いつもの僕との練習、そして今日のここまでの僕の攻撃。
それがすべて僕の布石だ。
それらのスピードをもとにFは後の先でカウンターを狙ってくるだろう。
その計算をはるかに上回る速さの攻撃で、Fにカウンターを許さない。
Fが跳ね上げる間もないスピードで最高の一撃を叩き込んでやる。
ただし怪我をさせないように気を付けないとね。
お互いの隙を探し、睨みあう。
手は出さないが一瞬たりとも気を抜けない、目に見えない攻撃の応酬だ。
どこで最高の攻撃を放つか。
オリハルコンの剣に少しずつ魔力を流す。
これで攻撃の威力もスピードもはるかに増すはずだ。
実はこれは勇者の必殺技の一つ「ライトニングスラッシュ」という技だ。
オリハルコンは魔力とのなじみ方が特段にいい金属。
そのオリハルコンの剣ならではのこの攻撃は強力だ。
僕が自分で書いた必殺技だ、間違いない。
名前は恥ずかしいから叫ばないけど。
よし、もういいだろう。
充分魔力は溜まったはずだ。
あとはタイミングだけ。
呼吸を整え、必殺の一撃を叩き込む準備をする。
よし、今だ!
僕が思い切り最高の一撃をFに向かって放とうとした、その時。
Fが同時に動くのが見えた。
初めてのFからの攻撃。
しまった、「雷」か――。
Fの必殺技の中でも最高の速度を誇る「雷」。
音速の剣が相手と同時に動いても先に相手に届く。
それを僕を傷つけないように正確に僕の剣筋に当ててきたのだ。
剣の軌道と軌道が交わりあい、すごい衝撃が僕を襲う。
大きな金属音と共に、僕の右手首はその衝撃に耐えきれず剣を手放してしまった。
僕の剣が宙を舞い、僕は手ぶらになってしまう。
Fはそのまま僕に向かって剣を向けていた。
参ったな、まさか僕の剣を狙ってくるとは、完敗だ。
僕は両手を挙げて負けを認めた。
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