第19話「歌姫」
2週間連日2話投稿も早いものでもう10日目です。
今日は新たなヒロイン候補が登場します☆
みなさん、アイドルは好きですか?
バルハムントに戻った僕は借りた馬を返し、冒険者ギルドに報告に行った。
もちろん、「特に何もなかった」と嘘の報告をする。
それでも報酬は変わらないしね。
うん、我ながら悪い奴だ。
それから三日月と分かれピックを連れて隠れ家に戻る。
「これがお頭の家ですか。なんか生活感がないなあ」
そりゃあ生活してないからな。
「俺はほとんどここで寝ないからな。ピック、さっきも言ったようにお前はここと野ウサギ団のアジトを行き来して、俺と奴らの連絡役をしろ」
「分かりました。素性を聞かれたらなんと答えたらいいです?」
「誰かに俺との関係を聞かれたら、暁の妹だといっておけ」
「アタイがお頭の妹?えへへ」
なに喜んでるんだよ。
お前さっき僕のこと刺し殺そうとしたくせに。
切り替え早いなあ。
「んで、アタイは普段何してればいいですか?スリはマズイですよねぇ」
「犯罪は止めておけ。捕まるとコトだからな。お前は冒険者ギルドに登録して、依頼を受けながら冒険者達や魔物の噂を集めておいてくれ」
「えへへ、アタイのこと心配してくれるんですね」
「お前が居ないと連絡に困るからな。ほら、ここの鍵だ。だが寝床はよそで自分で用意しろ」
「お頭、アタイは別にお頭と一緒のベッドでもいいよ」
……だから僕はそういう趣味じゃないって言ったろ!
実際の年齢は知らないが、見た目は小学校高学年くらいなんだからそんな気になれないよ。
だいたい自分を殺そうとした奴とそういう関係になりたくないだろ。
僕はピックに駅伝制の仕組みを大まかに教えてベースとドラムに伝えるように言い、当座の生活費用として残っていたお金から金貨を2枚渡した。
これでピカールからもらった白金貨20枚、およそ2000万円を1日でほぼ使い切ったことになる。
ん~さすがは悪役カルロ、まさに浪費三昧。
ピックが出て行ったあと僕は仮面を外し、とりあえず布で覆面をして家を出た。
鍵を掛けるのを忘れずに。
外に出て誰にも見られてないことを確認して素顔に戻る。
屋敷に帰ろうと思ったが、帰り道で通りがかった店からやたらいい香りが流れてくる。
「小鹿亭」というレストラン兼酒場のようだ。
もう夕暮れ時でお腹もすいてるし、食べて帰るか。
「空いてるか?」
「はい、丁度カウンターに空きがございます。テーブルでなくとも良ければご案内できますが」
「構わん。案内してくれ」
僕は店の奥のカウンターに案内された。
店の中は客でごった返しており、人気のある店のようだ。
店の中央には簡単な舞台のような台があり、そこで女の子が歌を歌っていた。
「フェリシアちゃん、最高!」
「超絶カワいい、フェリシア―!!」
彼女のファンなんだろう、周りで若い男たちがジャージャーと大声で叫んでいる。
本人たちは楽しいんだろうが、正直僕にすればいい迷惑だ。
だいたい僕はフィギュア系の2次オタで、ドルオタじゃないからな。
メニューをもらって何を頼もうか悩んでいると、なにやらちょっと立派な服を着た太った男が僕の方にやってきて耳打ちする。
「私この小鹿亭の主人をしておりますファッツと申します。ご領主のカルロ様とお見受けしましたのですが」
「ああ、そうだ。邪魔をしている」
「やはりそうでございましたか。今日は御供の方もお連れにならず、お忍びで?」
「そんなところだ」
「当店にご来店いただきまして光栄に存じます。このようなところでカルロ様にお召し上がり頂く訳には参りませぬ。こちらに個室がございますので、ぜひ」
「有り難いが大丈夫だ。特別な気遣いは不要だ」
「そうは参りませぬ。是非こちらへお越しください」
ファッツという主人に押し切られて、僕は奥の個室へと案内された。
こじんまりとしているが調度品も立派で、いわゆるVIPルームというやつかな。
「改めて本日のご来店ありがとうございます。主人のファッツでございます」
「カルロ=ド=メリチだ。気を遣わせて悪かったな。腹が減って寄っただけなのだが」
「光栄にございます。当店では特に子牛のシチューが自慢でございます」
ビーフシチューか、僕の好物の一つだ。
ハーブを使った母さんのシチュー、美味しかったな。
「ではそれをもらおうか」
「かしこまりました、少々お待ちくださいませ」
ファッツが出て行き、僕が料理を待っているとすぐに扉がノックされた。
料理が出来たにしては早すぎると思うけど、何だろう。
「入っていいぞ」
「失礼いたします」
やって来たのは主人のファッツと、さっき舞台で歌っていた女の子だった。
その後ろにはギターのような弦楽器を持った男がついている。
「この娘はフェリシアと申しまして、当店自慢の歌姫でございます。よろしければお待ち頂く間に、一曲歌わせてやっては頂けないでしょうか」
ファッツがそう言うと、フェリシアというその娘も僕に頭を下げた。
「お耳汚しではございますが、カルロ様に私の歌を聞いて頂けましたら光栄に存じます」
さっきはよく見てなかったが栗色の髪に白い肌、透き通るような瞳が愛らしいすごい美少女だ。
正直目の前で僕だけのために歌ってもらうのは恥ずかしいけど、断るのも悪いからOKした。
「有り難うございます。歌わせて頂きます」
フェリシアは優雅に頭を下げると、弦楽器の音に合わせて僕のために歌ってくれた。
透明感のある伸びやかな歌声、愛らしく控えめな微笑み、歌詞に合わせて時折見せる憂いを帯びた瞳。
やられた。
ガッツリ持っていかれてしまった。
もしこの子が元の世界のアイドルにいたら、僕はコロッとドルオタになってCDを買いまくって握手会に通い詰めていただろう。
天使過ぎてヤバい。
「有り難うございます」
歌い終えたフェリシアはまた僕に深々と頭を下げた。
「いかがでございましたでしょうか?」
ファッツに聞かれた僕は最高だったと答えた。
他に答えようがなかったからだ。
「ありがとうございます。ではもう1曲いかがですか?」
ファッツの勧めに僕がNOと言う訳もない。
フェリシアはもう一曲僕のためだけに歌ってくれた。
しかも今度はダンス付きで。
さっきのゆっくりとした曲と違い、今度の歌はリズミカルでアップテンポなノリのいい曲だ。
さっきの兄ちゃんたちが声を張り上げていたのが良く分かる。
フェリシアの歌声が踊りが、僕の心をとらえて離さない。
ああ、この子のフィギュアが欲しすぎる。
「はぁ、はぁ、有り難うございました」
2曲目を歌い終わったところで料理が運ばれてきてしまった。
フェリシアはまた深く頭を下げて出て行った。
子牛のシチューは自慢だというだけあって確かにおいしかった。
でも頭の中はさっきのフェリシアで一杯だ。
横で料理の説明をしてくるファッツの声も耳に入ってこない。
「いかがでございましたでしょうか?」
食べ終わった僕にファッツが問いかけてくる。
「ああ、確かに美味かった。これからもちょくちょく寄らせてもらう」
フェリシアちゃんに会いに、ね。
「有り難うございます」
代金を払い、小部屋を出てホールを横切って帰る途中、舞台で歌っているフェリシアちゃんと目があった。
フェリシアちゃんは歌の途中であるにも関わらず、ほんの一瞬だが僕に目で挨拶をしてくれた。
これが「レスをもらう」ってやつか。
これだけで幸せな気持ちになれるのだから不思議だ。
主人のファッツに見送られ、小鹿亭を後にした僕は屋敷に帰った。
帰りが遅かったこと、外で食事をしてくると言ってなかったことでメリッサにお小言を食らったが全く平気だ。
僕は幸せな気分で眠りについた。
今日もありがとうございます!
次の投稿は10時過ぎの予定です。




