第9話「白王」
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それから数日経った日の朝。
僕は朝食を食べた後、部屋で医者を待っていた。
「おはようございます。お医者様をお連れしました」
メリッサが医者を連れて部屋に入ってくる。
医者がガーゼを取り消毒の後ハサミで抜糸のために糸を切っていく。
その糸をピンセットで引っ張って抜くのだが、その時は緊張した。
思わず目をつぶりそうになったが、僕は悪役カルロ、なんとか平気な振りで耐えた。
結局ちょっとチクッとしただけでたいして痛い訳じゃなかったんだけど。
「かなり大きな傷になってしまわれましたね。おかわいそうに」
鏡を覗き込む僕の横からメリッサが気の毒そうに言う。
確かに結構大きな傷だ。
でもカルロに傷がある設定にしたのは僕自身だから、別に落ち込んだりはしない。
というよりむしろ、かつて人切りとして恐れられた流浪人みたいでちょっとカッコいい。
何よりやっとガーゼが取れてせいせいした。
まだしばらく消毒は続けなきゃいけないけど。
その後、Fを呼んで乗馬の訓練をすることにした。
メリッサはそんなことをしてまた落馬でもしたら、と心配してくれたけど馬に乗れないようでは困る。
「これがカルロ様の愛馬ですか。立派ですね」
Fが感心して声を上げる。
そりゃあそうだ、これほど立派な馬はそうはいない。
純白の毛並みに、たくましく引き締まった筋肉。
賢そうな瞳をしていて馬体は他の馬よりも二回りは大きい。
これがカルロの愛馬、白王だ。
名前の通りの白馬で、由来はあの世紀末伝説って奴なのは秘密。
正直ちょっとデカすぎて怖いけど、僕はカルロだからビビるわけにはいかない。
最初はゆっくり鼻のところを撫でてみる。
すると白王は僕に頭をすり寄せて甘えてくる。
こいつ、可愛いじゃないか。
Fにはもう二度と落馬しないように、全部基礎から教えてくれと頼んである。
おかげで鞍の乗せ方、アブミやハミの付け方から丁寧に習うことが出来た。
するとやっぱり作者補正だろうか、すんなり乗ることが出来るじゃないか!
だく足、早駆け、何でも来い、騎射だって出来そうだ。
何せこの白王は頭がよく、僕の意図をすぐに読み取ってくれる。
「さすがはカルロ様、お上手です。よろしければ少し遠乗りにでも行かれますか?」
「ならついでにコボルドでも狩りに行くか」
これを機にモンスター退治を経験しておくのも悪くない。
僕とFは武器を持って馬に乗り、屋敷を出た。
Fは自前の片手のロングソードに近衛騎士団の紋章の入った鉄の盾、僕は屋敷に置いてあったバスタードソードだ。
白王に少し気合いを入れるだけで颯爽と駆け出す。
周囲の景色があっという間に後ろに流れて、秋の風が心地いい。
なんというスピード、なんという爽快感。
大型のバイクで走るってこういう感覚なのかな?
コボルドは収穫期の畑を荒らしに来るので農夫に嫌われている。
だから畑に行けば会える確率が高い、というのは作者だから当然知っている。
「F、畑の方に行こう」
ホルムス川に掛かった木のお粗末な橋を渡り、対岸の畑へ向かう。
この橋も石造りにしたいところだな。
川を渡ったこちら側はルイードの森に近いために、モンスターが良く発生するのは僕の小説の設定だから分かってる。
街のそばにモンスターが出る森があった方が物語上便利だったからそうしたのだが、実際に街に住んでいる人には迷惑な話だ。
畑仕事やってる時もいつモンスターに襲われるか分からないんだから大変だよ。
作者として責任を感じるなあ。
適当な設定で迷惑かけてホントすいません。
しばらく馬を走らせていると、Fが小麦畑の中にコボルドの小さな群れを発見した。
「カルロ様、います。数はおよそ5匹程度です」
「よし、Fは右から回り込め。挟撃するぞ」
僕は白王に乗ったまま左手から半円形の弧を描いて近づいて行く。
すでにバスタード・ソードをは鞘から抜いて手に持った状態だ。
右手からはFも近づいている。
ある程度近づくと、何匹かのコボルドが僕たちに気付き声を上げた。
コボルドは顔は犬やハイエナに似ているが体は人に近い。
猿より人に近い知能を持つので武器を使うことも出来るし、コボルド同士簡単な会話もしているようだ。
単体ではたいして強くはないが繁殖力が強く、群れを成して行動する。
突然変異したハイ・コボルドになると魔法を使ったり遠距離武器を使うこともあるので要注意だ。
コボルドたちが持っている武器は木を切って作った棍棒や槍などが中心だ。
だがこのうちの何匹かは剣を持っている。
おそらく旅人や農民を襲って奪ったものだろう。
コボルドは農作物や人に危害を加え、しかも増えるスピードが速いので要討伐種に指定されている。
モンスターランクとしては単体ではDクラス、群れではCクラスとなる。
ちなみにこのモンスタークラスとはSとAからEの6段階に分かれている。
Sは災厄クラスの国家レベルで対応すべきモンスターで、Aクラスは軍隊レベルでの討伐が必要。
Bクラスは数パーティーが合同で倒すのが適当とされ、Cクラスは通常パーティー単位で対処する。
Dクラスは個人の実力者や素人集団で対処でき、Eクラスになると一般人でも相手に出来るとされる。
今回のコボルド5匹はCクラスよりやや下、という事になるが僕とFなら楽勝だろう。
僕たちの動きに気付いたコボルドたちは、左右から同時に攻められたことで右往左往している。
僕は一番近い一匹に狙いを定め、白王を駆けさせてすれ違いざまに剣を振るった。
バシュッ!
手応えと共にコボルドが倒れていく。
すぐさま白王の手綱を引いて引き返し、今度はゆっくりと剣を持ったコボルドへ向かう。
コボルドの方も剣を振りかざしてまっすぐ向かってくる。
馬上で剣を振るうのは初めてだが、ここでも作者補正はばっちり効いてる。
コボルドの振るう剣を冷静にさばき、隙をついて剣を叩きつけて倒した。
やるじゃん、僕。
僕が2匹を倒す間に、Fは三匹のコボルドを倒していた。
「Fよ、卿の手並みはさすがだな。この調子で剣技大会では頼むぞ」
「カルロ様こそ馬上での戦闘は経験がないとおっしゃっていましたが、そうとは思えぬ戦いぶりでした」
僕が褒めると、Fも僕を褒めてくれた。
強い人に認められるのは嬉しいものだな。
僕が努力して身に付けた力じゃないけど、最近は剣技大会のために練習してるし。
コボルドは討伐対象種なので、耳を冒険者ギルドへ持っていけばお金になるが、今回はやめておいた。
まあ大した金額ではないだろうし、僕は領主だからね。
でも冒険者っていうのにも憧れるよなあ。
ご愛読ありがとうございます☆
次の投稿は10時過ぎの予定です。




