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物語の裏側で  作者: ティラナ
第三章
74/105

閑話 一方その頃……

少し短めです。

ミリーが危ない……。

 




 〜ミリー視点〜





 寂しいです。



 何度目になるのかもわからないそんな感情が、心の中に浮かんでは溜まっていきます。

 レオ様が王城に出発なさってから2時間と32分が経ちました。 レオ様が帰ってくる時間どころか、お昼の時間すらまだ先です。

 ですが、私はもう寂しくて死んでしまいそうです。


 つい数時間前までレオ様と一緒に眠っていたベッドに身を投げ出します。 すると、ベッドがポフンという音を立てますが、この音も今日何度耳にしたかわかりません。

 レオ様のにおいがフワリと漂い、一時的に心が癒されます。 ですが、しばらくすると余計にレオ様が近くにいないことを寂しく思ってしまいます。


 ベッドに横になってベッドのにおいを嗅いで、起き上がってベッドの淵に腰掛けて、ため息をついてまた横になって、の繰り返しです。

 まだ日のあるうちからベッドに横になるのはあまり良くないことだとわかってはいるのですが、いまの私には立ち上がる気力すらもありません。

 あぁ……。 レオ様と一緒に目を覚まして、一緒に着替えて、一緒に朝食を摂って、レオ様が王城に出発なさるのを見送ったのが遥か昔のことのようです。


 ふと、席を外していたソフィお姉様が帰ってくる気配がしました。

 部屋のお手洗いは基本的には使用人は使ってはいけないことになっていますからね。 私もレオ様も別に気にはしないのですが、ソフィお姉様は相変わらず真面目です。


 私は横になって天井を見上げたまま、ソフィお姉様に話しかけます。


「ソフィお姉様、何かないでしょうか?」


「いや、唐突に何かと言われても困るのだがな」


 私の抽象的な質問に戸惑ったように答えるソフィお姉様。


「そうですよね……」


 その通りですよね。

 何か気を紛らわせることができるものがないかと思っていたのですが、突然言われてもソフィお姉様も困りますよね。


「はぁ……。 レオ様ぁ……」


 早くお会いしたいです、レオ様。


 レオ様は私のお願いを聞いて頑張ってくださっているのですから、本当は私がこんなことを考えるのは間違っているのだとわかっています。

 けれど、王城から早く帰って来て欲しいです。


 よくよく考えてみると、出会ってからこれまでの間、私はレオ様とこれほどまでに長い時間離れていたことはほとんどないかもしれません。その数回も街の皆さんとお茶を楽しんだ時くらいですね。

 寝る時はもちろん肌を寄せ合っていますし、お風呂だって一緒に入ることもあるくらいです。 お仕事中だって私も一緒にお手伝いをすることもありますし、二階のお掃除をしていたとしても寂しくなったら一階を覗けばレオ様が優しく声をかけてくださいます。

 それに、お家にいる時は直接目に見えていなくてもレオ様をすぐ近くに感じることはできましたから、これほどまでに寂寥感に襲われることもなかったと思います。



 はぁ〜、レオ様ぁ……。


 レオ様。


 レオ様。


 レオ様。


 レオ様。


 ……はっ!?

 いけません、なんだかレオ様が恋しすぎて思考回路が大変なことになってきてしまいました。


 どうしましょう。

 せっかく横になっていることですし、もう眠ってしまいましょうか。

 そうすれば夢の中でレオ様にお会いできますし、今のうちに寝ておけばレオ様がお帰りになってからたっぷり時間が取れます。

 少しお行儀が悪いかもしれませんが、これくらいならいいですよね。

 眠る時は羊を数えるといいと、レオ様がおっしゃっていましたし私も試してみましょうか。 ……レオ様で。




 れ、レオ様が一人。


 レオ様が二人。


 レオ様が三人。


 レオ様が四人。


 レオ様が五人───








 ───幸せすぎて眠れません!

 レオ様に囲まれて眠る。

 私もう最高に幸せです!


 レオ様以外の男性と関係を持とうとは欠片も思いませんが、大勢のレオ様に囲まれるのは悦びの極みです。

 レオ様に頬に両方の手をそっと添えてもらいながらキスをして、そのお優しい手で頭を撫でていただいて、両方の手を繋いで、腰に手を回していただいて、レオ様のものを……。


 はぁん、レオ様ぁ。


 レオ様、大好きですぅ。





 ………どうしましょう。

 レオ様成分が不足しすぎて頭の中がレオ様のイケナイ姿で満ち溢れてしまいました。

 でも、いいですね。

 大勢のレオ様とするのも……。



「あ、裁縫や絵画などはどうだ?」


「気が向きません……」


 今はお裁縫も絵画も中途半端になってしまいます。

 レオ様、あぁ……。


「レオナルドに、完成したものをプレゼントするというのはどうだ?」


「プレ、ゼント?」


「あぁ。 彼はしばらく、昼間の間は王城に出向かなければならないのだから、時間はいくらでもある。 それを使って贈り物をしてみてはどうだろう?」


「その手がありました! 流石はソフィお姉様です!」


 そうです!

 レオ様が私のために頑張ってくださっているのですから、私もレオ様のために頑張るのです!

 私はなんてダメな奥さんなんでしょう!

 大切な旦那さんが頑張っているのに、ベッドに横になって妄想に耽るだなんて。

 レオ様に喜んでいただけるように、帰ってきたレオ様がびっくりなさるように私も頑張りましょう!


「まずは何をするんだ?」


「そうですね……。 まずは、レオ様と私の肖像画を描きましょう! それならあまりお値段はかかりませんから!」


 私とレオ様が寄り添う姿を形に残すのです。

 そうすればレオ様を近くに感じることができますし、私たちが年老いてしまった時に今の日々を思い出すいいきっかけになるでしょう。 それに絵なら、必要なものは紙と絵の具くらいですからお金もあまりかかりません。

 やはり贈り物はお金よりも気持ちのこもったものの方が嬉しいですよね。


「わかった。 それならすぐに準備をしよう。 ミリーはここで待っていてくれ」


「はい♪」


 絵画を描き終えたら次は何にしましょうか……。


 あっ。

 料理人の方々に頼んで、夕ご飯を一品だけでも手伝わせていただきましょう。

 レオ様には私が作ったものを食べていただきたいですから。


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