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物語の裏側で  作者: ティラナ
第三章
71/105

第63話 朝チュン

 





 〜ミリー視点〜




 チュンチュン………


 鳥のさえずりの聞こえ、窓から差し込んだ朝の日差しを受けて目を覚まします。

 温かくてしっかりとした胸板に頬を摺り寄せます。 レオ様の温もりに包まれていて、とても心地いいです。

 ……だけど、もう指一本動かしたくありません。


 私が眠りに落ちたのはいつのことだったでしょう?

 お部屋の近くでレオ様に性的に襲われて、そのあとなんとか二人でお部屋まで戻りました。

 誰かに見つからないか心配で、かなり気を張り詰めていたのでそこまでは記憶があるのですが、部屋に入った後はほとんど記憶がありません。 快楽の波に押されて意識が飛んでしまったのかもしれません。


 ですが、こうしてレオ様とベッドに横になっているところを見るとそのあとは普通に行為をしたということでしょうか。


 そんなことを考えていると、レオ様がもぞもぞと動きました。

 う……ちょっぴり息がお酒くさいです。

 まったく、一体どれだけ飲んだのでしょう……。

 お父様には後で文句を言っておかないといけませんね。 レオ様にお酒を飲ませすぎてはいけませんよと。


 え?

 レオ様ですか?

 レオ様はいいのです。 こうしてレオ様の寝顔を見ることができているのですから。

 レオ様は私よりも起きるのが早いですし、眠るときは一緒なのでこうしてレオ様の寝顔を見るのは稀です。


「んん〜……。 あ、おはよう、ミリー」


 レオ様の寝顔を恍惚と見つめていたら、バッチリと目があってしまいました。

 自然と夕べのことを思い出してしまって、頬が熱を帯びます。


「お、おはようございます、レオ様……」


「ん? あれ………俺、ミリーのお父さんと話してたんじゃなかったっけ……?」


「やはり覚えていらっしゃらないのですね……」


 以前、お外ですることになってしまったときもそうでしたが、レオ様はお酒に酔うと記憶が飛んでしまう方のようです。

 そこがどうしても残念と言いますか。

 あの恥ずかしい私の姿を覚えていなくてよかったと言いますか。


「あ、もしかして迷惑かけちゃった? ごめんね」


「い、いえ。 ですがレオ様、お酒を飲むときは部屋の中でにしてくださいませんか?」


「………? 昨日も部屋の中だったと思うよ? 執務室」


 私の言葉に首を捻るレオ様。

 そういうことではないのです!

 むしろ昨日は執務室だったから逆に危なかったです。

 もしも、もしもレオ様が執務室で行為に至ろうとしていたらと思うと恥ずかしすぎます。

 ………だ、だって、私もレオ様に迫られたら拒絶できませんし。 開放感のあるところですると逆に気持ち良くなってしまいますし。

 でも、それだと後で家族や使用人と絶対に気まずくなります……。


「そうではなく。 その、レオ様は酔われると激しいので……」


「ま、まさか、他の人の前でやっちゃったり………!?」


「そ、それは回避しました! 少し危なかったですが……」


 少し離れたところを人の気配が通ったりして、心臓が止まるかと思いました。 それなのにレオ様は───。


「うわっちゃ〜……。 それは本当にごめん」


 額に手を当てて仰け反るレオ様。

 これは思った以上に(こた)えているようです。

 ですが、いろいろ言ってはいるものの、私もその状況を楽しんでしまっていたのですから同罪ですからね。


「だ、大丈夫です。 ただ、次からは気をつけてくださいね?」


「ん、気をつけるよ」


「あと、レオ様」


「なに?」


「次は、一緒にお酒、飲みましょうね?」


 記憶が飛んでしまうほど飲むのは問題がありますが、ほよ酔いくらいであれば私も一緒に飲みたいです。


「そうだね。 人が入って来ないところでね」


「はい ♪ 」


 お酒で気持ち良くなったところで、レオ様とイチャイチャします!

 素晴らしいです!


 今日にでもお父様に頼んで、美味しいお酒をいただきましょう。 あ、あと、お母様に美味しいお菓子を紹介してもらいましょう。

 ふふ、楽しみです。

 身体を起こして、レオ様の身体にしな垂れかかります。




 コンコン


 レオ様の身体に頬を摺り寄せつつ、今夜のことを考えて頬を緩めていると、部屋のドアがノックされました。


「失礼する。 朝だぞ、ミリー、レオナルド。 朝の支度の手伝い、を………し、に………」


 部屋に入って来たソフィお姉様と目があってしまいました。



「ソ、ソフィお姉様!?」


 思わず大きな声が出てしまいます。

 私たちは今、なにも身につけていません。 私もレオ様も、上半身が丸見えです。

 いえ、レオ様の身体は逞しくてとても素敵ですし、私も人に見られて恥ずかしいことはないと思っていますが……やはり見られると恥ずかしいです!


 この部屋は中に人がいるかすぐに確認できるように、ドアからベッドが一目で見えるようになっています。

 防犯の面で言うと良くないのですが、そもそもこのお屋敷の中に忍び込むこと自体がほとんど不可能なので、意味のない防犯よりも実用性を重視しています。

 今までは見られても構わなかったのですが、これからは寝室の入り口にカーテンをつけた方がいいかもしれません。


「や、す、すまない! 私はなにも見ていない! 見ていないからな!」


 慌ててドアの影に隠れるソフィお姉様ですが、完全に見てましたよね。 レオ様の裸に唾を飲んでいましたよね。

 ………ソフィお姉様でも絶対にレオ様は譲りませんよ?


「ソフィリアさん。 ソフィリアさんはお客さんとして扱われるはずじゃなかったの?」


 密かにソフィお姉様に殺気を飛ばしていると、私の頭を撫でながらレオ様がソフィお姉様に問いかけます。

 うぅ、レオ様に撫でられると怒りも蕩けてしまいます……。


「や、そ、そうだったんだが。 かつての上司や同僚に傅かれるというのは居心地が悪くてだな……。 ミ、ミリー付きの侍女としてミリーが滞在中だけ働くことになったんだ」


 確かにそうですね。

 ソフィお姉様にも来客用のお部屋が与えられていたそうですが、お姉様にとっては違和感があったのかもしれません。

 その点では侍女のお仕着せのほうが落ち着くのでしょう。

 チラリとドアの影から顔を覗かせたお姉様と目が合いました。 レオ様はあげません!


「なるほど」


「す、すまなかった! すぐに出る! すぐに出るからな!」


 私が怒っているのに負けたのか、慌てて部屋を出ようとするお姉様。

 当然です。

 そもそも、ノックをしてからドアを開けるまでが早すぎます。 私とお姉様の仲と言うことで気になっていませんでしたが、普通は相手の返事を聞いてから開けるものでしょう。


「いや、別に俺は気にしてないけど。 下半身は隠れてるし」


「そういう問題ではない!」


 そうです。

 早く出て行ってください。

 あとで少しお話ししますけど。


「まったく、お姉様は」


 お部屋に入って来たことは別にいいです。 いつものことなので。

 裸を見られたことも今さらですし、一緒にお風呂に入ったりもしているので構いません。

 ですが! レオ様の裸を見て見惚れるのは絶対にダメですからね!


「さて、それじゃあまずは服を……って、その前に身体を綺麗にしないといけないか。 風呂場ってここからだと少し遠かったよね。 どうしよう………」


「ソフィお姉様に頼んでお湯とタオルを持って来ていただくのがいいと思います」


「なるほど。 貴族にはそういう手があるのか。 ………えっと、呼ぶって?」


 基本的になんでもできるレオ様ですが、やはりやったことのないことは知らないのですね。

 ふふ、レオ様に私が教えるなんて新鮮です。


「このベルを鳴らせばいいのですよ」


 枕元にあったベルを手に取り鳴らします。

 あまり大きな音ではありませんが、よく通る綺麗な音で、部屋の外にいてもしっかりと聞き取ることができるのです。


「よ、呼んだか……?」


 部屋の外から姿を見せないで声だけでソフィお姉様が返事をします。

 それでいいのです。


「お姉様。 お湯とタオルを持って来ていただいてもよろしいでしょうか?」


「わ、かった」


 むぅ。

 そんなに怖がらなくたっていいじゃないですか。

 私はもう怒ってないですよ?




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