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物語の裏側で  作者: ティラナ
第二章
57/105

閑話 女子会

 





 〜ミリー視点〜





「このお菓子とっても美味し〜 ♪ ルネアさんと、ネミアさんの手作りでしたっけ?」


 イレースがハムハムとクッキーを頬張りながらそう尋ねます。


 私はいま、ジャスミンさんの宿屋さんの一階部分を借りて女の子たちで集まってお茶会をしています。

 今日集まったのは、私とイレース、ルネアさんとネミアさん。 あとソフィお姉様の5人です。

 それぞれにお菓子を持ち寄っています。

 ちなみにお茶はジャスミンさんのお店のものを注文しています。

 いくらジャスミンさんがお優しい方だと言っても、場所だけ借りて何も頼まないのは失礼ですからね。


「えぇ。 今朝早起きして二人で作ったの。 ね、ネミア?」


「え〜。 ルネア、『もう少しだけ寝かせて……』とか言って、寝てたじゃ〜ん。 結局は私が一人で作ることに〜」


「で、でも、私も途中から手伝ったわよね!?」


「そだね〜。 食器を拭いてくれたね〜」


「も、もう少し働いたわよ……」


「食器をしまってくれたね〜」


「うぅ……」


「ふふ、二人は本当に仲がよろしいのですね」


 一見したところ堂々としていて、とてもしっかりとしたお姉さんに見えるルネアさんですが、実はネミアさんに頼りっきりだったりします。

 ネミアさんは常に眠そうで、活発に動き回ったりはしませんが、実際にはしっかりとお仕事をこなしつつルネアさんの面倒も見ています。

 見た目の印象と現実が真逆ですが、二人はとてもうまく噛み合っています。


「……あはは、そうかもね」


 私の言葉に渇いた笑みを浮かべるルネアさん。

 うーん……。

 本心からそう思ったのですが、あまり伝わってないのでしょうか。


 一人、首を傾げていると、マイペースなネミアさんが言葉を発しました。


「こっちは、えっと〜」


 フォークでミルクレープを指しながら、ソフィお姉様の方を見つめています。


「ソフィリアだ」


「そうそう。 ソフィリアさんが作ったやつなんだよね〜。 とっても美味しい〜」


 ソフィお姉様が持ってきてくださったのは、5人で食べるのにちょうどいい大きさのホールのミルクレープです。

 クレープ生地と生クリームを交互に重ねて厚みを出すため手間と時間がかかりますが、お姉様は流石の手際の良さで朝のうちに作ってきてくれました。

 まだほんのりと温かみが残っていて、口溶けが絶妙です。


「喜んでもらえたようで何よりだ」


「ソフィお姉様はなんでも出来ますからね」


「ミリーには及ばないがな」


 嬉しそうにしながらも、照れ隠しでそう言うお姉様。

 確かに私もお料理は出来ますし好きですが、本職のお姉様には劣ります。

 あ、ちなみに今日、私は一口サイズのフィナンシェを作ってきたのですが、あっという間になくなってしまいました。

 少し量が少なかったかもしれませんが、他の人もお菓子を作ってきてくれていますし、あまり食べ過ぎると……。 その、お腹が気になりますから、これくらいがちょうどいいでしょう。


 レオ様は近頃はソフィお姉様の指導のもとで剣のトレーニングをなさっているようですが、私はあまり運動をしていないので気を抜くと危ないです。

 レオ様は、『ふっくらとしたミリーも可愛らしくていいと思うよ』なんて、お優しい言葉をかけてくださいます。 けれど、その甘いお言葉に流されてしまっては歯止めが効かなくなってしまいます。

 私のためにレオ様は頑張ってくださっているのですから、私も怠惰な生活を送るわけにはいきません。

 レオ様がさらに素晴らしい殿方になるのでしたら、私もそれに見合うだけの女性にならねばいけません。


「二人は、本当の姉妹じゃないんだったよね?」


 いけません、少し考え過ぎてしまいました。

 イレースの言葉に意識を浮上させます。


「えぇ、ソフィお姉様は私の侍女だったのですが、私は小さな時からソフィお姉様と呼ばせていただいています」


「私もお姉ちゃんか妹が欲しかったな〜……」


 羨ましそうに私とソフィお姉様、それからルネアさんとネミアさんを見るイレース。

 そういえばイレースは一人っ子でしたね。

 ですがイレースは街のみんなの妹という感じなので、必要はないと思いますよ?

 小さくて可愛らしいですし。


 ところで、王都や街では一人っ子の方が多いです。 それは跡取り問題からくるものと、働き手が増えても売り上げが増加しにくいからという理由があります。

 逆に農村部では兄弟がそこそこ多いという傾向が見られます。 こちらは、限度はありますがある程度子供が多ければそれだけ働き手が増えて農作業が効率良く行えるからという理由です。

 もちろん例外はあり、レオ様の故郷がある山間の村のように農作業に使える土地が限られている地域では、子供はあまり多くはありません。


 この辺りには平原が広がっていますが、土壌があまり豊かではなく背の低い草しか育ちません。

 ところどころに木が生える場所がありますが、そういったところを切り拓いて畑を作り人が住み始めたのが街の始まりだとも言われています。

 王都も同様で、元々は川の曲がり角にあったらしく豊かな土壌が山から運ばれ、そこに人が大勢住んでいたことが始まりです。 今では氾濫などの対策として川の流れを人為的に変えているので、川のほとりという印象は受けませんが。

 つまりこの国は地形こそ農作業に適した地域が多いですが、実際に十分な作物を取れる地域は少ないのです。


 あ、話がまたズレてしまいました……。

 今はそんな難しい話をしているときではありませんね。


「妹は大変よ? こう、マイペースだから」


「うちの姉は仕事しないからね〜。 私も働いてくれるお姉ちゃんが欲しい〜」


「私のことを無職みたいに言わないでよ」


「じゃ〜、お仕事〜」


「わ、わかったわよ。 今度、きっとやるから……」


「む〜。 あやし〜」


「う……」


 ネミアさんの指摘にルネアさんは表情を固くします。


「ルネア、仕事はした方がいいぞ?」


「だから私は無職じゃないってばーー!」


「……ルネアさん。 ネミアさんに頼りきりなのは良くありませんよ?」


 でも、ルネアさんは少しネミアさんに頼りすぎだと思うのです。

 それは私も、レオ様やソフィお姉様に頼っているところはありますが、自分でもできることは自分でやるべきです。


「ミリーまでーー!」


 ペタンとテーブルの上に突っ伏すルネアさん。

 ちなみにルネアさんの前に置いてあったお菓子は、ネミアさんがさり気なく安全なところに避難させていました。

 さすがです。



「ところで、ミリーとレオさんの新婚生活はどうなの?」


「えっ!?」


 イレースがまたとんでもない質問をしてきました。

 こう、発想が突拍子もないのは彼女がまだ私たちよりも幼いからでしょうか。 それとも彼女の性格でしょうか。


「あ、それ! 私も聞きたいわ!」


「ルネア逃げた〜」


「ねねっ、どうなの!?」


「き、聞きたいですか……?」


「うんうん! ぜひ聞きたいわ!」


「私も聞きたいな」


「興味ある〜」


「え、えっと……あの……わかりました。 な、なな、何を話せばいいでしょう?」


 すでに私の頭は沸騰寸前です。

 うぅ、顔が熱いです。


「睦事の頻度は!? ────って、いったぁい」


「ルネア、下品〜」


 睦事の回数ですか!?

 つ、つまりは、レオ様とどれくらいの頻度で行為に至るかということですよね……!?


「最低限のマナーは守れ」


「ルネアさんっ……」


「えっと、えっと。 しゅ、週に5回くらいですっ!」


「いやいや、答えなくていいんだぞ、ミリー」


「そ、そうなんですか!?」






 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 〜レオ視点〜




 いつも通りの時間に店を閉め、女将さんのところにミリーを迎えに行く。

 いつも一生懸命に働いてくれているから、ミリーにはときどき友達と集まれるように店の定休日とは別に休みを設けている。



「ミリー、迎えに来たよ」


 開け放たれている扉から店の中に入り、店の片隅に集まっていた女性陣に声をかける。

 すると、そのでミリーがピクリといち早く反応した。


「あ、レオ様」


「「「れ、レオさん」」」


「え、なんでみんな目を逸らすの?」


 ミリーに続いて他のみんなも俺の方を見たが、みんな顔が赤い。

 ……なぜに?

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