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物語の裏側で  作者: ティラナ
第二章
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第42話 とりあえず納得?

 



 〜レオ視点〜





 首を傾げる俺とミリーの前で、ウンウンと満足そうに一人で頷いているソフィリアさん。


「なんで俺が……?」


『この男をお嬢様に相応しく仕立て上げて見せましょう!』と、よくわからない宣言をされた。 ここで言う『この男』とは間違いなく俺のことを指すわけで。


「貴様とお嬢様は相応しくない!」


「それはわかった」


 その言葉は少し───いや、かなりイラっとくる。

 先ほどからの様子を見るに、この人がミリーのことを考えているのは事実だと考えていいだろう。 少しだけ百合っぽい気がしなくもないが、きっとこれは美しい主従愛だと信じたい。

 ……そういえば、ミリーの周りには百合っぽい人が集まる気がするのだが気のせいだろうか?

 それとも俺が知らないだけで、あれが女の友情と言うやつなんだろうか。


 うーん……。

 あ、でも漫画とかの勝利の喜びを分かち合って男同士が抱き合うシーンを見て『ホモー┌(^o^┐)┐』とか言ってる人いるから、異性から見たらそう見えるのかもしれないな。


「残念ながら、お嬢様は貴様に好意を抱いている!」


「知ってる。 もちろん俺も」


 残念ながらは余計だろうと心の中でツッコミを入れつつも首を縦に振る。


「無理矢理にでも引き剥がすことは可能かもしれないが、それではお嬢様が悲しまれる。 前に進んでくださればいいが、お嬢様は今回が初恋。 恋愛に対する恐怖感を抱かれてしまっては、今後のお嬢様の幸せに響く」


 引き剥がすという言葉に、俺もミリーも顔を顰めた。 けれどその後の、初恋という言葉にミリーが頬を染める。

 俺は以前にミリーから聞いていたから、特別驚きはしない。

 改めて、照れてるミリーが可愛いな、とは思うが。


「そこで! 私は貴様をお嬢様に相応しい男になってもらおうと思う! 貴様もお嬢様を幸せにしたいのなら、己を磨くのだ!」


 椅子から立ち上がって、仁王立ちでズビシッと俺のことを指差す。

 ……公爵家の、しかも次期王妃専属の侍女だったんだから、そういう振る舞いはどうなのよ。

 まぁ、今さらか。


「いや、反論はないけどさ……」


 王妃教育、つまりはこの国でトップクラスに優れた教師陣を集めてきっちりと教育されたミリーは基本的にオールマイティだ。 どういうわけか、死角らしい死角が見当たらない。

 もちろんそれはいいことなんだけれども、部屋の掃除までこなせるというのには驚いた。

 なんでも『使用人に対する感謝を忘れないために、使用人の仕事がどれだけ大変かを理解するため』という理由で、令嬢時代から自ら進んで行っていたかららしい。

 さすがと言うか、なんと言うか……。


 俺にはもちろん苦手なことの一つや二つあるし、必要最低限しかできないことの方が多い。 知識などに関しては前世の知識がある部分が大きいし。

 性格に関しては自分ではなんとも言えないが、能力面ではなかなか難しいだろう。


「ふむ、それならばよい!」


「え、えっと、ソフィ?」


 俺の返事を肯定と受け取ったらしいソフィリアさんが鷹揚に頷くと、俺の横で流れに追いつけていない様子だったミリーが小さく声をかけた。


「はい! なんでしょうか、お嬢様!」


「レオ様は既に十分に素晴らしい方ですよ。 頭もよろしいですし、お優しいですし。 今までお会いした中で最高の方です」


 ……いま、ミリーを咄嗟に抱きしめようとした手をなんとか押さえつけた俺を褒めてください。


 え?

 誰の手かって?

 もちろん自分のに決まっているでしょう?


「えぇ。 お嬢様の気持ちは理解いたしましたとも。 しかし、その相手が更に素晴らしい殿方となったらどうでしょう?」


「れ、レオ様がもっと素敵に……」


 ボフンと、音を立ててミリーが爆発する。

 もちろん比喩だよ?

 一瞬で顔を真っ赤に染めて、両手を膝の上で握って小さくプルプルと震えている。


 あぁ、どんな想像をしたのか聞いて見たい気もするけど、聞かない方がいいだろうな。

 何より可愛いからよし。


 ミリーのおかげで上手い具合に場が和んだし、俺としても心を落ち着けることが出来た。


「えっと。 とりあえず俺のことを認めてくれたってことでいいのかな?」


「認めているわけがないだろう! お嬢様が貴様に惚れてしまって居る事実はもう変えられないのだから、これからどうすべきかの結論を出しただけだ! 過去をどうこうするのではなく、今できる最善を目指す方が堅実だろう!」


 その言葉を宰相様の前で言ってあげてくださいよ。

 たぶん今、一番そのセリフが必要な人だよ。


「まぁ、言いたいことは何となくわかった」


 この人としては、大事な大事な主が何処の馬の骨とも知らないやつと結婚するのが許せないのだろう。

 俺も例えばミリーの父親だったら似たようなことをしていたかもしれないし。 ただ、それはあくまでも“一緒に暮らしてた”娘がいきなり彼氏を連れて来たら、という話だけど。


「ふむ。 ものわかりがいいな。 ならば早速、修行を───」


「もう夜だし、風呂にも入りたいから、せめて明日からにして。 ほら、ミリーが寝不足になったらどうするの?」


 何故かこんな時間から修行パートに入ろうとしたソフィリアさんを止める。

 ミリーをだしに使うようで申し訳ないが、それも事実の一つだ。


「そ、そうだな。 寝不足は健康に良くない。 主の健康を害するわけにはいかないな」


「ありがとうございます……?」


 俺にうまいこと利用されたことに気付いたからなのか、器用にも首を傾げながらもお礼を言うミリー。


「うん。 それじゃあ、風呂に入りに行こうか。 ちょうどいいから、ソフィリアさんはミリーに付いて行ってもらってもいい?」


 いくら人にバレてはいけないとは言っても、風呂に入らないのは不衛生だし気分的にも良くないだろう。


「聞かれるまでもない。 お嬢様の身体は私が責任を持って隅々まで綺麗にさせていただこう」


「よろしくお願いします、ソフィ」


「周りの人に気付かれないように、女将さんに頼んでお風呂を貸し切った方がいいかな? 」


 そうすると当然ながら別料金を払わなければいけないだろうが、背に腹は変えられない。

 下手にケチケチしてバレてしまっては元も子もない。

 しかしそうすると、悪い意味で目立ってしまうな。


「いや、そこは私に任せろ。 お嬢様が周りの者に気付かれないようにすることには、いくらか心得がある。 そもそも、宿に泊まる女性客は少ない上に、この時間なら風呂に入る者も少ないだろうから問題ない」


「なるほど」


 ソフィリアさんの考えも一理ある。

 ここはかなり落ち着いた雰囲気で防犯面もしっかりしている宿だとは言っても、基本が旅人向けの宿だから女性のお客さんは少ない。

 時間はそろそろ眠りについてもおかしくないくらいだし。


「そういうわけですからお嬢様、ご安心くださいませ」


「わかりました。 それでは、よろしくお願いいたしますね」


 腰のあたりで手を揃えて頭を下げるソフィリアさんと、それに微笑みながら頷くミリー。

 うん。

 完全にメイドさんとお嬢様だわ。


 ミリーの普段は見られない一面を見られた気がした。

執筆の方はかなりラストの方に近付いているのですが、ラストシーンへの持って行き方が思い浮かばないです……。

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