番外編1.魔道書
一昨日、100万PVを達成しました!
これも全て読者の皆様のおかげです。
……と、言うわけで感謝の気持ちを形にして番外編を作りました。
タイトルの通り、本編の設定を完全に無視した作品です。
今回の話の中には、動物化、女体化などが含まれます。 ※BL要素はないです。
本編とは全く関係ないので、苦手な方は飛ばしてくださっても何の問題もありません。
それでは、どうぞ。
───いつものように本の整理をしている時、あの恐るべき事件は起きた。
「あの、レオ様。 これは何の本でしょうか?」
お客さんがちょうどいない時間帯だったからミリーと二人で蔵書の整理をしていると、奥の方で本の整理をしていたミリーが一冊の本を抱えてやって来た。
かなり分厚く、それでいてそれなりの歳月が立っていそうだ。
「ん、どれ?」
差し出された本を受け取って、その表紙に書かれているタイトルを確認する。
【誰でもわかる魔法基礎 〜入門編〜】
「うーん。 こんなの買ったかなぁ……」
随分とオカルトちっくなタイトルだ。
魔法なんてこの世界ですら、御伽噺や小説の中だけの産物なのだから、ぶっちゃけ違和感しかない。
中二病的な何かだろうか。
それとも、昔に書かれた錬金術書みたいなものか。
「先代の方が買ったものでしょうか?」
「それはあるかもね。 なんだか古そうだし」
おじいさんが買ったものは基本的に俺も把握しているが、もしかしたら見落としていたのかもしれない。
「読んでみてもいいでしょうか?」
「うん。 俺も興味があるから一緒に見ていい?」
「はい、もちろんです」
椅子に並んで座って、本を開く。
「えっと、なになに……【猫になる魔法】?」
これは錬金術書とかじゃないな。
猫になるとかファンタジーすぎるだろ。
第一、そんな魔法どこで需要があるんだよ。
あれか。 女湯を覗きたい変態とか向けなのか。
目を瞑って、ぼんやりとそんなことを考えていたら、慌てたような様子のミリーにが声をかけて来た。
「れ、レオ様!?」
「ん、なに? ……って、にゃ!?」
ミリーでかっ!
俺とミリーの位置関係がおかしい!
つい数秒前まで俺の肩より少し上くらいのところにミリーの顔があったというのに、いまでは完全に俺がミリーを見上げる形だ。
と言うか、そもそも俺の身体に途轍もない違和感があるんだけど……。
「レオ様が……猫ちゃんになっちゃってます!」
「は、はぁぁぁああ!?」
やっぱか、やっぱりなのか!
なんか、身体の毛が増えたなとか、体が柔らかくなった気がするとか思ってたけど!
俺が着ていた服は俺の下に散乱している。
「ど、どうしましょう!? まさかこの本のせいで!?」
俺と本を見比べてから、慌てて本を開くミリー。
原理はわからないが、この本のせいで俺が猫になってしまったのは確実だ。
迂闊に本に触らない方がいい。
「お、落ち着けミリー。 間違っても魔法の名前を口にしちゃダメだ。 よくわかんないけど、名前を口にしただけで効力があるらしい」
「そ、そうですね! なにか、元に戻す方法がないか探してみます!」
「わ、わかった! 俺も手伝うよ」
「それでは、私はお店を閉めて臨時休業ということにして来ますね!」
「そ、そうだね。 よろしく」
確かに、いまの状態では通常営業を続けるのは不可能だろう。
街の人にはあとで謝っておくとして。 今日は一度、店仕舞いにした方がいいな。
最近は店を閉めるのも慣れたもので、テキパキと仕事を終えてミリーが俺の元まで帰って来た。
……スカートの中身が角度的に危なかったりしたが。 椅子の上に飛び乗ったりできればいいのだろうが、生憎この体のスペックを把握できてないから跳んだり跳ねたりはできない。
「お待たせしました。 早速、魔法の解除方法を調べましょう」
「うん。 ……って、高さが足りない」
「そ、それでは私の膝の上にどうぞ」
「にゃっ、ちょ、脇の下に手を入れるのやめて。 くすぐったい」
俺を抱き上げようとしてくれたのだろうが、くすぐったさのあまり身を捻る。
あ、思ったよりも捻れるな。
「あ、す、すみません。 ではお尻に手を回して……」
「に゛ゃ!? ちょ、そこはダメだから!」
ミリーの手が俺の大切なところを撫でる。
いや、ミリーからしたらいまの俺は猫なんだろうけど、俺にしてみれば俺の体は俺の体なわけで。
「え? えっと、お尻の前なんですから、ここは………。 きゃっ! す、すみません。 私、普通の猫ちゃんのつもりで……」
「い、いや、うん。 こちらこそ、変なところ触らせちゃってごめん。 手、洗って来た方がいいんじゃない? 本も汚れちゃうし」
「だ、大丈夫です、綺麗でしたから!」
「…………」
その返事はどうなのかな。
てか、見たの……?
まだ自分でも見てないんだけど。
「そ、それでは少しくすぐったいかもしれませんが、我慢してくださいね」
「んにゃっ」
結局、脇の下に手を入れて抱き上げられる。
来るとわかっていれば多少なら我慢できるし、持つ一つの持ち上げ方よりは俺の精神的にも負担が少ない。
「はい。 もう大丈夫ですよ」
「にゃふぅ、ありがとう」
ミリーの膝の上に乗せられて小さくため息を吐く。
魔法で猫になったからなのか、人間の言葉を発音できるのはありがたいな。 たまに猫っぽいのが混じるけど。
「いえ、どういたしまして。 さて、それでは本を読みましょうか」
「そうだね」
二人で本のページを眺める。
印刷は全て白黒で、紙の質が悪いのか時間の経過によるものなのかページ全体の色が薄茶色い。
イラストも付いているが、なにを意味しているのかわからないから、イラストの意味を為していない。 猫のページにあるのは、チェシャ猫のような、ふてぶてしい猫のイラストだけだ。
「………あ、ありました! 元に戻す方法!」
「にゃ、どこどこ?」
「ここです。 『愛し合う若き乙女と契りを交わすべし』だそうです」
おぅ……。
「………契り? 契約か何かでしょうか?」
ミリー、あなたのそれは天然ですか?
天然ですね、はい。
ここで言う契りが単なる約束的なものだったらどれだけ楽だったことか。
「……たぶん、睦事のことだと思うよ」
本当に気がついていない様子のミリーにそっと伝える。
「えっ? つ、つまり、レオ様と身体を重ねるということですか」
「そういうことだね」
俺の答えを聞くと、なにやら考え込む仕草をしてから意を決したように俺の方をまっすぐ向いて口を開いた。
「わ、わかりました! レオ様のためです! 猫ちゃんになったレオ様でも、レオ様はレオ様です! どうか私の身体を使ってください!」
流石にマズイでしょ。
俺としてもそれはどうにか回避したいし、サイズ的にも辛いだろうし。
「にゃ!? いや、ちょっと落ち着いて。 まだ気になるところがあるよ。 『若き娘』じゃなくて『若き乙女』って書いてあるのが、もしかしたら、処女が条件だったりするのかも……」
「そ、そんな……! 私の初めてはレオ様に既に捧げてしまいました……!」
「う、うん。 いただいちゃいました」
「れ、レオ様ぁ」
目に涙を溜めて俺のことを抱きしめてくるミリー。
猫じゃなかったら抱きしめ返して、頭を撫でて慰めてあげるんだけどな。
「うーん、他に何かないかな。 最悪、元の姿に戻れるかはわからないけど、猫を人に変える魔法でもあればいいんだけど……」
「あ、ありましたよ! 猫を人に変えられそうなもの!」
目次らしきページを眺めていたミリーがその一部を指差しながら言う。
「本当!? あ、本当だ! よし、【動物を人間に変える魔法】!」
魔法の名前を口にすると言うのはなんとも斬新な魔法の発動方法だと思うが、戦闘用のものでなければ、周囲に自分がこれからなんの魔法を使うかを知らせることができて便利かもしれない。
使う方もいちいち呪文とかを覚える必要もないしね。
今度は先ほどと違って目を開けていたから自分の目線がどんどん上がって行くのがわかる。
俺の視界は、椅子に座った状態のミリーを追い越したあたりで上昇を止めた。
「お、おぉ! ちゃんと人に戻ったよ、ミリー!」
手足の感覚は慣れ親しんだものだ。
喜びのあまりか少し声が裏返ってしまったようで、妙に高い声が出た。 ……恥ずかしい。
少し体が重いが、身体をコロコロと変えてしまっているのだから仕方あるまい。
「れ、レオ、様……?」
これでようやく元に戻れたと安心している俺に対して、ミリーはそのサファイアのような双眸を大きく見開いている。
「え? なに? ……あれ? 声が高い? てか、気のせいじゃなくて身体が重い?」
さっきは裏返っているのかと思ったが、どうやら本当に声が高い。
しかも体も胴体を前に引っ張られるような感じがある。 首に重りをぶら下げているみたいだ。
なんだか、いやーな予感がして視線を恐る恐る下に向けると、見慣れない裸体が……。
「あの、女の子になっちゃってます」
「何故に!?」
豊かな双房に、ミリーに負けず劣らずの白く透き通るような肌。 どうやら髪も肘のあたりまで伸びているらしい。
怖くて確認していないが、息子はいない。
幸いなことに胸が邪魔になって身体をかがめでもしない限り見えないのだ。
「私にもわかりません。 もしかしたら性別が変わってしまう副作用のようなものがあったのでしょうか……」
「マジで……。 あ、お湯をかぶれば元に戻ったりしないかな!? ……あれ、水だっけ?」
「何かのおまじないですか?」
「まぁ、そんなもん! よっしゃ、いっちょやってみるしかないでしょ!」
いいや、両方試してみるしかないな!
たとえ何かの間違いでパンダになろうとも、人に戻る魔法はあるわけだし。
「わ、わかりました! それではお風呂に移動しましょう」
身動きが先ほどに比べて取りやすくなったので、ミリーの手を取って階段を上った。
……胸が揺れてバランスが崩れたが、手摺に掴まったり、ミリーが支えてくれたおかげで階段から落ちることはなかった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「う……。 これ、自分のなんだよな……」
風呂場に設置された鏡に映る悩ましげな表情を浮かべた美少女。
要するに俺なのだが、自分で見ていても男の情を煽るスタイルだ。
背丈はミリーよりも少し高いくらい。 ミリーと同じ歳くらいに見える。
「レオ様、もしかして私よりもおっぱい大きいですか?」
俺の隣に並んで胸の大きさを比べ始めるミリー。
彼女も俺と同様に一糸纏わぬ姿だ。
「いや、比べなくていいから」
「……はぁ。 なんだか悔しいです」
そういうのって気になるものなんだろうか。
俺は胸が小さくてもミリーのことは変わらず大好きだけど。
「いや、大丈夫だよミリー。 大きさが全てじゃないとも言うし、そもそもミリーのだって小さくないし。 ……と言うか、かなり重いんだねコレ」
さっきから肩に普段なら感じない重さを感じている。
カバンなどとは違って歩いたら思いっきり揺れるし、手で押さえようにも触っていいものなのかわからないし。
「そうですね。 私などは少しずつ成長したわけですし、普段は下着を付けているのでそんなに気になりませんが、突然ですと慣れるまで大変かもしれませんね」
「慣れるまでこの体でいるつもりないんだけど……」
できれば早急に元に戻りたい。
「えっと、まずはお水でしたっけ? それとも、お湯ですか?」
「確か、お湯だったと思う」
「わかりました。 それでは目を瞑っていてくださいね」
いつの間に沸かしておいてくれたのか、加熱もできる水瓶に並々と入れられたお湯を桶で掬ってくれる。
その様子をちらりと見て、前髪を掻き上げて顔にかからないようにしてから下を向いて目を閉じる。
「ん、分かった」
「それでは行きますね」
ザザーン
頭から勢い良くお湯がかかる。
身体の芯まで温まるようで気持ちがいい。
「どうですか?」
「……ダメっぽい」
気持ちはいいが、残念なことに俺の身体は相変わらずエロいままだ。
むしろ、お湯を浴びて赤みが増し、水が反射してテカテカとしてエロさが増している気がする。
「今度は、お水ですね。 もう一度、目を瞑ってください」
もう一方の水瓶から今度はおそらく水を掬って、俺にかけてくれる。
ザザーン
「やっぱダメっぽい」
結果はやはり失敗。
いや、身体の赤みは少し引いたが。
「そうですか……」
「うぅ、さむっ」
ぶるりと身体を震わせ、自分で自分の身体を抱く。
胸が邪魔だから、胸の下───鳩尾のあたりを押さえる形だ。
「あ、す、すみません。 お湯をどうぞ」
「ん、ありがと」
ミリーからお湯を受け取って身体にかける。
はぁ……、生き返るわ。
「ですが、次はどうしましょうか」
「とりあえず風呂から上がって、もう一度本を見直すしかないね」
「そうですね」
「あの、お洋服はいかがいたしますか?」
バスタオルで体を拭いていると、手伝ってくれていたミリーがそんなことを言い出した。
「え? 別にいつものでいいんじゃない?」
「ですがいまのレオ様のお身体にはサイズがあっていませんし、胸も下着を付けないと動きづらいのではないですか?」
「まぁ、言われてみれば確かに」
女の体になってしまって一番の弊害は胸が大きくて面倒臭いということだ。
それこそ慣れてしまえばどうってことないのかもしれないが、慣れていないと揺れてしまってバランスが取りづらい。 肩が凝るともいうし、胸が大きいというのは大変なんだな。
……アニメとかに出てくる、ロリ巨乳キャラって小さいのに苦労してるんだね。
「それでは私のものをお貸しいたしますね」
「え、いや、それはいくらなんでも」
ミリーの着けたものを着けるなんて恥ずかしいし申し訳ない。
体の問題はあっても、彼女の下着を着けるってことだからな。
犯罪ギリギリ (アウト) だよ。
「ですがこのままでは不便ですよね?」
「まぁ、そうだけど」
「大丈夫です。 いまのレオ様は女の子なんですから、私の服を来てもきっとに 似合います!」
「いや、そういう問題じゃないんだけど……」
「それではレオ様、ここで待っていてくださいね!」
俺の体が冷えないようにか、バスタオルをかけてくれたあと、バスタオルを巻きつけただけの姿で脱衣所から出て行ってしまう。
「あ、ちょっ、ミリーっ」
「お待たせしました、レオ様!」
いや、ほとんど待ってないんだけど。
かなりのスピードだったよね、きっと。
「ではまずは下着から着ていきましょう! お手伝いいたしますね」
「い、いや、下着くらい自分で……!」
このままだと赤ちゃんみたいに下着を穿かされるハメになりそうだったなりそうだったから、慌てて受け取って自分で穿く。
そのまま上も……。
上も……。
「あれ、えっと……。 うーん」
後ろがうまく留められない。
前の膨らみが邪魔で、なかなかっ……。
「ふふ、お手伝いいたしましょうか?」
「う……。 よろしくお願いします」
やけに嬉しそうにしながら、俺を眺めているミリー。
……背に腹は変えなれないか。
「はい ♪ かしこまりました ♪ 」
ミリーに背中を向けると、ものの数秒でカチャッと音がした。
「はい。 ちゃんと留まりましたよ」
「ありがとう。 なんか、きついね」
文字通り胸を締め付けられるような感覚だ。
「ある程度は仕方がないのですが、どうしても苦しいのでしたら少し緩めますか?」
「お願いできる?」
「お任せください」
肩の紐を調節して、少し緩くしてもらう。
幾分か楽になった気がする。
「ふぅ……。 ありがと、ミリー」
「どういたしまして。 次はお洋服ですね。 幸い、胸の大きさ以外は私より少し小さいくらいのようなので私のものをそのままお持ちしました」
「それって……」
「はい ♪ 以前レオ様が買ってくださった私のお気に入りの一つです ♪」
「───はい。 とてもよくお似合いです、レオ様」
抵抗らしい抵抗もすることができず、あれよあれよという間に制服風コーデに着替えさせられてしまった。
ついでに髪もセットされてしまった。
「それって素直に喜んでいいの?」
「もちろんです。 どうか鏡でご確認なさってください」
「………おぅ」
か、可愛い。
巨乳、編み込みポニテ。
ミリーがしっかりと身嗜みを整えてくれたから完璧美少女と言った感じ。
委員長キャラとかにいそうな雰囲気だ。
メガネが似合いそう……。
「可愛いですよね?」
「これが自分じゃなければね」
「レオ様だからこそ可愛らしいと思うのですが……」
「っと、そんなことよりも元に戻る方法を探さないと」
「あ、そ、そうでしたね」
本を店においてきてしまったから随分と歩きやすくなった身体で階段を降りる。
コンコン
「レオさ〜ん、ミリ〜、どっちかいますか〜!」
階段の中ほどで、玄関兼店の入り口をノックする音が聞こえた。
この世界にはインターホンなんてものは存在しないから、入り口にノック用の金属の輪っかが取り付けられているのだ。 洋館のドアにある牛の鼻輪みたいなやつ。
「この声は……」
「イレースですね。 臨時休業にしてあったはずなのですが、何かあったのでしょうか?」
「うーん。 どうなんだろ」
「とりあえず、私が出てみますね」
「いや、いいよ。 俺が出るから」
全てを任せっきりなのも申し訳ないから、ミリーを制してドアを開ける。
「こんばんは、イレースちゃん。 どうかしたの?」
「え……。 だ、誰ですか?」
俺の顔を見た途端、身体を強張らせて警戒の色を見せる。
「え? あ、あぁ〜」
そうだよね。
完全に見ず知らずの女が出て来たわけだもんね。
下手しら俺が浮気したとか思われても不思議じゃないよな。
「こちらはレオ様ですよ、イレース」
「……………え゛!?」
「一応、レオナルドだよ」
「な、なな、なんでこんなに可愛らしくなっちゃったんですか!」
ほっぺプニプニやめて。
俺とミリーが言ったことが受け入れられないのはわかるけど。
「いや、それが俺にもよくわかんないんだけどさ。 魔法の本みたいなのを見つけて、なんだかんだでこんな姿に……」
「魔法の本……?」
「これです」
カウンターの上に置いてあった本を持ち出すミリー。
「おぉ〜。 なんだかファンタジーっぽいですね。 えっと……【お上品になる魔法】?」
止める間もなく本を開いて、そこにあった魔法を使ってしまうイレースちゃん。
「あ! ちょっ!」
「イレース!?」
「あら。 どうしたのですか、お二人とも。 そんなに慌てて。 ………あら?」
「イレースちゃんのキャラが崩壊してる」
ちょっぴりロリな活発キャラのはずなのに、楚々としたお嬢様に……。
微妙にミリーとキャラが被ってるし。
「喋り方や立ち振る舞いがお嬢様みたいになる魔法なんですね」
「の、呑気に観察をしている場合ではありませんわ。 これはどうすれば元に戻るんですの!?」
童顔ツインテにこの口調は違和感だな。
とりあえず、周りの人に変な目で見られているからイレースちゃんを店の中に入れる。
「いや、それがわからないから俺はこの姿のままなんだよね」
「そ、そんな! このままでは私ずっと街の皆様の笑いものではございませんか、レオナルド様!」
「それでは、一緒に元に戻す方法を探しましょう」
「そ、そうですわね」
イレースちゃんを椅子に座らせ、落ち着かせるためにミリーにお茶を入れてくれるように頼んだ。
ちょうどその時、再びドアが鳴らされた。
「レオさん、ミリー! 臨時休業なんて、どうかしたのー!」
「したの〜?」
「ルネアさんと、ネミアさん、ですわね」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「すぴー……。 すぴー……」
カウンターに突っ伏したまま気持ち良さそうな寝息を立てるネミアちゃん。
「ど、どうしよう!? ネミアが起きないんだけど!」
「落ち着いてください、ルネアさん。 爪を立てたらネミアさんの肌が傷つきます。 眠くなるだけの魔法のようですし、時間が経てば自然と目覚めると思います」
「わ、分かった……にゃ」
「まさか、獣娘になる魔法まであったとはね……」
そう。
ネミアちゃんは【安眠をもたらす魔法】を、ルネアちゃんは【猫娘になる魔法】だ。
いまのルネアちゃんは、体の後ろで黒くて長い尻尾が不安そうに揺れ、頭の上では三角形の猫耳がピコピコと動いている。
「このままじゃ恥ずかしすぎて外にも出られないにゃ」
「すぴー……」
「気持ち良さそうに眠っていらっしゃるネミア様が羨ましいですわね」
「そうですね」
なんだかしんみりとした雰囲気が流れ始める。
あれから四人総出で魔法の解除方法を探したが、結局、なにも解決策は見つかっていない。
「よし! 身動きが取れなくて申し訳ないけど、とりあえず元に戻る方法がわかるまでは、みんなここで面倒みるよ! 元はと言えば本の整理を怠っていた俺のミスなんだから」
みんなの顔を見ながら宣言する。
魔法なんて見たことも聞いたこともないが、これだけ本があれば他にも魔法関係の本があるかもしれない。
みんなを養うほどの経済的な余裕はないけど、いざとなればなんとかできないことはない。
「レオ様」
「レオナルド様……」
「レオさん」
「すぴー」
心の中で決意を固めた、その時だった。
───ポンッ
自分自身の体が一瞬だけ光ったかと思うと、先ほどよりも視界が高くなっていた。
「え!? あ、も、もどっ、た?」
声も間違いなく俺が聞き慣れたものだ。
「にゃっ!?」
「きゃっ」
「れ、レオ様……あの、お洋服」
「……え? あ゛!?」
俺、素っ裸やん!
慌ててカウンターの後ろに隠れて、最初に変身してしまった時のままになっていた自分の服を着る。
そういえば、猫になった時もぶかぶかの服を猫が着ているわけじゃなくて、服は完全に脱げた状態だったな。
向こうから見えないようにしながら、急いで下を穿く。
下さえ隠せれば上は別に問題ないからね。
「ごめん!」
「い、いえ、大丈夫です」
「わ、わわ、私も、だだ、大丈夫ででで、ですわ。 お、お気遣いありがとうございますわ」
「………にゃぁ」
それぞれに顔を赤くしながら明後日の方向を向いたり、手で顔を覆ったりしている。
う……。
完全に見られてしまった……?
「で、ですが、どうして急に戻ったのでしょうか?」
一番早く復活したミリーがどうにか話を振ってくれる。
「お、おそらく、時間の経過だと思いますわ。 この中ではレオナルド様が一番早くに魔法を使われていたようですし」
「う、うにゃ。 それが一番現実的ね」
ちょ、なんでみんないきなりそんな平常運転になってるの!?
逆に辛いよ!
いや、いじって欲しいってわけじゃないけど、真面目に進められるとどんどん心にダメージが……。
───それからしばらくしたのち、イレースちゃん、続いてネミアちゃんとルネアちゃんの順番で魔法が解け、無事日常生活に戻ることができた。
件の魔術書は、紐でぐるぐる巻にした上で物置部屋に厳重に保管することになった。
これで、魔道書事件は俺の心に深い深い傷を残して幕を下ろした。
心の傷を癒す魔法とかなかったかな………?
最近、エロい要素が増えてきた気がする。
うーん。
加減がよくわからないけど、とりあえず思うままに書いていきます。
あ、あと、評価ポイント10000pt達成の時はやりそびれましたが、これからはちょくちょく番外編を投入していきたいと思います。
次は、
・評価ポイント2万pt 達成
・ブクマ一万件(もしくは五千件?)突破
・200万PV達成
・50万ユニーク達成
の、タイミングでやろうと思います。
……どれも遠いなぁ。
一番近いのはブクマ五千件でしょうか?
何かリクエストなどあれは感想欄で言ってくだされば、もしかしたら、叶えられるかもしれません。
これからもよろしくお願いします。




