表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
物語の裏側で  作者: ティラナ
第一章
18/105

第16話 お昼ご飯

 


 ミリーには、イレースちゃんを起こすといけないからそのままでいいと伝えてから昼食の準備に取りかかる。

 一応、イレースちゃんの分も用意しておく。

 昼食を食べるときには流石に起こさなければならないから、そのときに一緒に食べるかどうかを聞いて、食べないようなら少し手を加えてから今日の夕食に回してもいい。


 コンソメスープに、パンとベーコンとレタスとトマトでサンドイッチにすればいいだろう。 いわゆるBLTサンドという奴だ。 ポイントはパンの表面をトーストのように軽く焼いておくところだ。

 ところで、既に慣れてしまっているが、この国には米を食べる文化がない。 だから、主食というとどうしてもパンが多くなってしまうのだ。

 あとスープが多いのは俺の好み。


「……よし。 ミリー、そろそろイレースちゃんを起こしてくれる?」


「はい。 わかりました」


 スープの味が整ったタイミングでミリーに声をかける。

 あとはパンの表面を焼いて盛り付けるだけだ。

 ……っと、その前に物置の方から椅子をもう一つ持ってこよう。 お客さんが来たときのために合計で四つ、つまりいま使っている分を除いて二つが物置に置かれている。


「んにぃ……。 みり〜……」


 ミリーがそっと頭を撫でると、イレースちゃんはミリーの腰に頭を擦り付けて気持ち良さそうに唸る。

 本当に仲のいい姉妹みたいだ。


「イレース、起きてください。 一緒にご飯を食べましょう?」


「んぅ〜。 ミリ〜……?」


 ミリーがもう一度名前を呼ぶと、目を擦りながらゆっくりと起き上がる。 寝ぼけ眼にミリーの姿を捉えたらしい。


「はい。 おはようございます、イレース」


「おはよ〜」


 にっこりと微笑みあいながら挨拶を交わす二人。

 いや、仲がいいのは本当に嬉しいことなんだけど、この2時間のうちに何があったんだよ。

 既に、幼い頃から一緒に育ってきた仲、みたいになってるよ。

 好きなものの話で盛り上がったって言ってたけど、本当に盛り上がったんだな。


「おはよう、イレースちゃん。 よく眠れた?」


「れ、レオさんっ。 お、おはようございますっ」


 俺の声を聞くなり小さく飛び上がってミリーにしがみつくイレースちゃん。 その頬はちょっと赤くなっているから、寝起きを見られたことが年頃の女性として恥ずかしかったのかもしれない。


「これからご飯なんだけど、よかったら一緒にどう? 一応、イレースちゃんの分も用意してあるんだけど」


「い、いいんですかっ?」


「もちろん。 ミリーも構わないよね?」


「はい、もちろんです。 イレースと一緒にご飯、食べたいです」


「う、うん。 私もミリーと食べたい……かな」


 ……おぅ。

 なんか、百合っぽくなってない?

 マジで何があったし。



「よし、それじゃ、パパッと仕上げちゃうから席についてて」


「私もお手伝いいたします」


 スカートの裾を直しながらミリーがやってくる。

 ちなみにいまミリーが身につけている服は、女将さんから貰った、娘さんのお古だ。

 この国においてお古というのはそうそう珍しい話でもないのだが、次に店が休みの日にでも、時間があるときに新しい服を買いに行ってあげないとな。


「じゃあ、盛り付け終わったら運ぶのをお願いね」


「わかりました」



 表面にこんがりと焦げ目の付いたパンを皿に乗せ、その上に具材を乗せてからパンで挟む。

 あとはスープを盛り付けて完成だ。


「はい、ミリー。 それじゃあ運ぶの手伝ってくれる?」


「はいっ」


 元気に返事をしてから皿を持ってテーブルまで運ぶミリー。

 贅沢を言うならこれでエプロンをしていたら、さらに可愛かったと思う。 いや、既にカンスト目前の可愛さだけど。 エプロン付けたらカンストすると思う。


「はい。 どうぞ、イレース」


「わぁ、美味しそう。 ありがとう、ミリー。 レオさんもありがとうございます」


 料理に目を輝かせてくれるイレースちゃん。

 自画自賛かもしれないが、俺は前世の知識も含めて料理をしているから普通よりもちょっとだけ豪華かもしれない。

 まぁ、この世界の料理文化自体がレベルはかなり高いが。


「うふふ、どういたしまして」


「どういたしまして。 さ、食べよ」


 二人を促して自分も席に着く。

 縦長の机にミリーとイレースちゃんが向かい合って座り、俺が誕生日席に座るという形だ。


「お、美味しいです。 あの、これ、レオさんが作ったんですかっ?」


 スープを飲んでいたイレースちゃんがそう尋ねてくる。


「うん、そうだよ。 お口に合ったようで何よりだよ」


「はいっ、と〜っても美味しいです」


「レオ様は何でもお出来になりますから」


 いや、そこまで褒めんでも……。 照れるわ。

 って言うか、なんでもできるのはミリーな気がする。

 元ご令嬢なのに炊事洗濯とかの家事全般ができる時点でおかしいからね?

 この国の貴族事情とか知らないけど、流石に自ら掃除とか洗濯とかはしないと思うんだ。



「……ふぅ、ごちそうさま」

「ごちそうさまでした」

「ごちそうさまですっ」


 俺、ミリー、イレースちゃんの順で言う。

 手を合わせる仕草が日本っぽくてなんとなく嬉しい。


「後片付けは私とイレースでやりますので、レオ様はゆっくりと休んでいてください」


 食器をシンクまで運び、洗い物を始めようかと言うところでミリーが気を利かせてそう言ってくれた。


「ん、いいの?」


「はい。 あ、せっかくですからお茶の用意もしますね」


「それじゃあ、お言葉に甘えようかな。 ありがとう」


 お言葉に甘えて、席でゆっくりとすることにする。

 女の子二人が並んで洗い物をしている姿はとても、いい。

 いや、変な意味じゃない……かどうかはわからないけど、女の子が二人で洗い物をしてくれていると思うと、とても幸せな気分だ。

 イレースちゃんは、背が低いけどそれでもシンクに背が届かないほどではないからしっかりと洗えているらしい。

 ミリーは、可愛い。


 いや、マジで幸せだわ俺。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ