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物語の裏側で  作者: ティラナ
後日談
102/105

アフターストーリー. 5 運命? 何それ、美味しいの?

長いこと間が空いてしまって申し訳ない!

 


〜モニカ視点〜



 学園の中でもひと際、豪奢な雰囲気のパーティー会場。夜の帳がすっかり降り、その中はシャンデリアのキラキラとした灯りが灯って、参加者の華やかさをより際立たせている。

 王族御用達の楽団が奏でる音楽に合わせて、それぞれに着飾った見目麗しい男女が優雅なダンスを繰り広げていた。


 そんな中で私は人気(ひとけ)のないテラスから、その様子を眺めていた。

 月明かりだけに照らされて薄暗い空間だけれども、私はこのくらいの方が落ち着く。 前世が小市民だからか、あのキラッキラした雰囲気にずっといると疲れるのだ。

 暗い中で1人で佇んでいるのは気楽で良い。 あわよくばこのドレスも脱ぎ捨てて、ベッドに横になってゲーム三昧と行きたいところだけど我慢我慢。 てか、ゲームないし。


 白ワインの入ったグラスを少し傾けたりしつつボーッとしていると、1人の男子生徒が私の方に近づいて来た。


「あれ、モニカ嬢?」


「これはこれは、キャロル様。 どうかなさったのですか?」


「いや、それは僕のセリフなんだけど。 君もたまには参加したらどう?」


「面倒くさいです」


 この国の王太子であり、『君姫2』のメインキャラでもあるキャロル・ウォンダランドが、何でまたこんな場所にいるんだろう? 彼の立場を考えればこんなところで油を売っている暇なんてないだろうに。

 ちなみに、私がパーティーに参加しないのはいつものことだ。

 だいたい、どうして好き好んであんな女の魔窟に突っ込んでいかなければいけないんだ。

 普段の友達付き合いはオーケーだけど、パーティーになると話は別。 みんな、自分の将来の旦那様を見つけるんだとか息巻いててすごく怖い。

 私の周りは狩人だらけなのだ。

 そんな中に外見は雌ライオン、内面は子羊な私がいられるわけがないだろう。 『モテる奴は余裕ね!』っていう殺気をヒシヒシと感じる。

 ───と、言うわけで私は逃げてます。


 まぁ、今回はそれだけが理由でもないけどね。


「今日はフリーダと一緒じゃないんだね」


「あぁ。 今日は別行動ということになりまして」


 実はこのパーティーイベント、君姫2にも登場するんだ。

 今のところゲームの展開とは大きく違うものの、キャロルとの廊下での遭遇イベントだったり、ポイントポイントは押さえられているのも事実だ。 躍起になって回避する必要はないとは思うけど、無理に突っ込んでいく必要はない。

 会場の方にスーッと目を向けると、色とりどりのドレスに身を包んだ女子の集団が見えた。 ……あ、多少は男子も混じってるみたいだ。


「フリーダ様、このお菓子とっても美味しいですわ!」

「フリーダ様はブドウ酒は嗜まれますでしょうか?」

「フリーダ様、フリーダ様! あちらで私と一緒に踊りませんか!?」

「ちょ!? 抜け駆けは許しませんわよ!」

「そうですわ! フリーダ様は私とお話をしているのです!」

「お姉さまは、僕と踊ってくださいますよね……?」

「「あ……、ルーデイン様………」」


「………向こうは向こうで盛り上がってるみたいだね」

「そうですわね」


 そしてゲームとは明らかに違う点がある。

 女子の最大派閥のリーダーが、私───モニカ・ライプリッツではなくて、フリーダちゃんだということだ。

 まぁ、モテるよね……女子に。


 スポーツ万能で成績優秀、それでいて優しくて、人当たりも良い。 言動には隠しきれない品があって、王太子をはじめとした有力貴族からの覚えもめでたい。

 そんなこんなで、私みたいな地味め女子からも、ゲームのモニカみたいなド派手女子からも慕われているという現状。

 フリーダちゃんに喧嘩を売ろうものなら、ゲームのエンディングを待たずして破滅まっしぐらですよ、ははは……。


「モニカ嬢は交ざらなくていいの?」


「私は騒がしいのはあまり好みませんから」


「そう言えばそうだったね」


 苦笑を浮かべる様は月明かりを浴びて妙に絵になっている。 くそっ、イケメンめ!

 一応、入学前から私を知っているキャロルはその事に呆れるでもなく、当然のこととして受け入れている。 そう言えば、キャロルと初めて会ったのも王城で開かれたパーティーの会場から逃げた時だったなぁ。

 攻略対象になってた人の中で、私が入学前に面識があるのってキャロルくらいなんだよね。

 ドランヴァルトなんて、未だに話したことないし。 てか、私のことを空気か何かだと思ってるんじゃないだろうか。

 ………あ、そう言えば。

 この際だから聞いてしまおうか。


「フリーダさんはどうしてルーデイン様と仲がよろしいのでしょうか?」


 キャロルもフリーダちゃんと仲が良いみたいだし、ゲームとは違う何かがあるのかもしれないし。

 あ、でもこういうのってフリーダちゃんに直接聞いたほうが良いのかな?

 でも、フリーダちゃんだといつものヒロインスマイルで受け流されちゃいそうなんだよなぁ……。


「私がどうかしましたか?」


「ふひゃあ!?」


 急にかけられた声に思いっきり飛び上がる。

 そのままバランスを崩した私は、器用にも後ろを振り返りながら体が傾いていく。

 くそぅ……何で貴族のヒールってこんなに高いんだ!


 後ろにいた人の姿を視界に収めた瞬間、まるで時間が止まったかのような錯覚を覚えた。 フリーダちゃんだ。

 私の後ろには、フリーダちゃんがいる。

 そして私は手に白ワインを持ったまま、そこに突っ込みそうになっている。 いくらフリーダちゃんだってこの至近距離で、動きにくいドレス姿で身軽に動けるわけがない。

 結果は火を見るよりも明らかだ。 フリーダちゃんの体を私が押し倒し、そして手に持ったワインをフリーダちゃんのドレスにぶちまけるんだ。


 あぁ、ゲームと同じじゃないか。

 モニカがフリーダちゃんを押し倒し、そのドレスにワインをかける。


 もうダメだ。

 ゲームだとヒロインが虐められ始めるイベントだけど、リアルだと私が虐められ始めるイベントに早変わりだよ。

 私は、思わずギュッと目を閉じた。



 ………私の人生、終わったわ。






「───っと。 大丈夫、モニカさん?」


 フワッと身体が浮いたような感覚の後、私の耳元でそんな声がかけられた。


 あれ?

 何で私はフリーダちゃんにお姫様抱っこされてるの?


「え? えぇ……」


 状況が全くわからないんだけど……。

 フリーダちゃんの足元には割れたグラスが散乱している。 だけど、私もフリーダちゃんもドレスはおろかヒールすら汚れていない。


「驚かせちゃってごめんね? ドレスとか汚れてない? 足、痛かったりしない?」


「大丈夫……」


 私の返事を聞くなり、パアッと大輪の花が咲いたような笑みを浮かべた。

 それからそっと私を床に降ろしてくれた。 まるで天使が降り立つ時みたいに、ふんわりと優しい降ろし方で。


「ん、ならよかった。 はい、コレ代わりのブドウ酒」


「あ、ありがとうございます………?」


 そしてどこからともなく私が持っていたのと同じ白ワインを差し出してくれる。

 ……マジックですか?


「うん。 どういたしまして」


 何が起こったのか、まったく理解が追いつかない。

 とりあえず分かったのは、


 私が転んだ。

  ↓

 フリーダちゃんが助けてくれた。


 と言う事くらい。

 あれですか?

 ひとまず私の死亡フラグはフリーダちゃんの手によってへし折られたってことですか?


「それで、私がどうかした?」


「君がドランヴァルトと仲が良いのが気になるんだって」


「そうなの?」


 フリーダちゃんは私の方を見てコテンと可愛らしく首をかしげる。

 さっきまでの格好良さとのギャップに胸がキュンとしつつも、何とか首を縦に振ってその言葉を肯定する。


「うーん……。 モニカさんなら良いかな」


 何が何だかもうわけが分からないけど、フリーダちゃんは私の顔をジッと見ながら何かを考え始めた。

 なんかとんでもないものが飛び出たきそうな予感がムンムンだけど、今の私ならそうそう驚かないと思う。

 だって、すでに思考が追いついていないからね!


「私のお母さんね、本名はミリアリアっていうんだけど、ルーデイン公爵家の娘なの。 だから、ヴァルとはいとこ同士なんだ」


「……………はぁぁぁぁぁぁあああああああ!?」

新作を執筆中なんですが、納得がいくように書けない上に、忙しくて時間が取れないです……。

書きたいエピソードはあるんですが、そこまでの道のりが難しい(ーー;)

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