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物語の裏側で  作者: ティラナ
第一章
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第9話 情報収集

 


 エネルギーを補給したんだか、消費したんだかよくわからないがミリーとイチャラブした後、なんとかいつも通りの時間に店を開けた。

 お客さんが来るまでは本の整理やら埃を落とす作業だ。




「センセー、おはようございまーす!」


「おっ、おはよう」


 ハタキで誇りを落としていたら元気な声が店の中に響いた。 昨日と同じ女の子───エシルだ。 彼女は時間を見つけてはよく顔を出してくれるから連日で来ることも少なくはない。

 ちなみに、店内ではお静かにと言うのは定めていない。 そもそも子供に勉強を教えているのだから、俺が一番喋っている。


「あれ? お姉ちゃんセンセーはいないの〜?」


「ん? あぁ。 今日は上のお家にいるよ。 今日はちょっと理由があって来れないんだ」


「そうなんだー」


 それ以上は深く質問せずにカウンターの席につく。

 まぁ、子供の興味ってそんなもんだよな。


「この国には軍っていうものがあるんだ。 軍っていうのは街や街道の治安を守るのがお仕事なんだよね。 その中でも、王族の直属の部隊を騎士団っていうんだ」


「ちあん、ってなぁに?」


「平和って意味かな。 みんなが安心して暮らせるのは軍の人が街の平和を守ってくれているからなんだ。 腰にさしている剣はそのためのものなんだよ」


「へ〜。 凄いんだね〜。 でもこの前、軍のおじちゃんが、『最近、給料が減っちまってよ〜。やってらんねーよなぁ〜。あ、この剣売っちまおうか』って言ってたよ?」


 無垢な表情でそう言いながら首を傾げる。

 誰だか分からんがオッサンよ、剣を売るのはまずいんじゃないか? 『剣は騎士の魂だ』くらいに言わないと。

 あ、いや、この街に駐在しているなら騎士ではないのか。 彼らは昨日の人みたいに王都から派遣されるみたいだし。



「あら〜。レオちゃんったらまた勉強を見てあげてるのねぇ、偉いわねぇ」


 どう答えたもんかと悩んでいたら、入り口から恰幅のいいおばちゃんが入ってきた。カウンターはコンビニのレジみたいに入り口の目の前にあるから人が入って来たらすぐにわかるのだ。

 この人は宿屋兼酒場の女将さんで、この街に来てすぐに色々とお世話になった人だ。 この街において自分の母親のように勝手に思っている。


「いらっしゃい。 まぁ、時間が余っていますからね。 それに、教えたことをどんどん吸収してくれるので教え甲斐がありますし」


「うちの子のお婿に是非きて欲しいわねぇ〜」


 冗談なんだか、本気なんだかよくわからないおばちゃん特有のノリで楽しそうにそう言う。

 前世では似たようなノリで近所のおばさんにお見合い写真を持って来られたことがあったよなぁ。あれはてっきり冗談だと思っていたんだが。

 まぁ、女将さんの娘さんはもう王都で独り立ちしているらしいから流石に冗談なんだろうが。 ……冗談、だよな?

 娘さん、嫁ぎ遅れてるわけじゃないですよね?


「ダメ〜。 センセーにはお姉さんセンセーがいるの!」


 またしてもどう答えたもんかと悩んでいたら、今度は我が生徒ちゃんが助け舟を出してくれた。

 いや、助け舟か? これ?

 助け舟って言っても、折り紙でできた船とかそういうノリなような気がするんだが。


「あら、あらあらあら。 レオちゃんってば、とうとういい人見つけちゃったの? やっぱり今朝、女の子と歩いていたっていうのはそういうことだったのね。 どこの子? まさか、王都でいい子見つけちゃった?」


「え、あ、ま、まぁ。 王都から来た人ですね。 って言うか、今朝?」


 案の定、凄くグイグイくる女将さんに気圧されながらなんとか答える。

 この人は酒場の女将さんだからか、特にこういったときは迫力がある。 RPGにおいてもこの世界においても、酒場は情報屋みたいなもんだからなぁ。

 そして、今朝っていうことは早朝に会ったお婆さんやお爺さんの情報だろうか? ……迂闊だったかもしれない。


「そうよ、今朝、レオちゃんが女の子と歩いていたって隣のお婆ちゃんが言ってたのよ〜。 それにしても、都会の子なの〜。 それじゃあ、街の子はショックねぇ。 あ、でも、変に知り合いに取られるよりはいいのかもしれないけれど」


「……? 何がですか?」


「いえいえ、こっちの話よ。 お勉強、邪魔しちゃってごめんなさいね〜」


「あ、いえ。 ごゆっくりどうぞ」


 店の奥へと進む女将さんに会釈をしてから、勉強の続きに入る。





「───さて、それじゃあ今日はここまでにしておこうか」


「うんっ。 センセー、ありがとうございました〜!」


 ちょうどキリがいいところで今日の授業を終えて、エシルを見送る。

 ちなみにさっきの女将さんは、失恋をテーマにした詩集を数冊買って行ってくれた。 一冊ならわかるが、あんなにたくさん一体何に使うのだろうか。

 あの人は詩を読んだりはしなかったと思うのだけれど。


 って!


「女将さんに貼り紙の件、聞いとけばよかった……」


 授業中だったから、すっかり忘れてたよ。

 酒場は情報屋みたいなもんだとか自分で言っていたじゃないか。


「はぁ……。ま、次からは気をつけよう」


 どうしても情報が手に入らなかったら、さっきの女将さんの酒場に顔を出そう。

 食べて帰るのはミリーがいるからやらないけど、お見上げにワインを買って帰ろうか。

  一応言っておくが、この国では飲酒は15歳から認められている。 まぁ、戸籍の管理がしっかりとされているわけでもないから、誤魔化そうと思えばいくらでも誤魔化せてしまえるけど。


 そういえば、ミリーってお酒とか飲むんだろうか?



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