プロローグ 物語の表側で
短編を連載版にしました。
勢いに任せて書いている上に連載版初投稿なので、誤字脱字、言葉の誤用、設定の甘い点、などなどあると思います。
温かい目で見つつ、感想欄にて指摘していただけたら幸いです。
拙作ですが、よろしくお願いします。
「きゃっ!? 痛いっ」
貴族や豪商の子息令嬢のみが通うことを許された学校のとある教室。
そこで私は、私の婚約者に両手を後ろで抑えられうつ伏せに組み伏せられています。 そしてその周りには侮蔑するような目で私を見てくる数名の男性方。 その中には私の兄や友人などの知人も少なからず……いえ、ほとんどがそうですね。
見ようによっては集団強姦の瞬間なのですが、彼らは自分自身が正義で私が悪であるということを疑っていません。 そして、他の誰かがこの場を目撃していたとしても、誰もが見て見ぬ振りをするでしょう。
一体、どうしてこのようなことになってしまったのでしょうか。
「ミリアリア、私は君がこんなことをする人だとは思わなかったよ。 昔は心優しくて、聡明な女性だったというのに……」
私を組み伏せながら王太子様が悲しそうな声でそう仰います。
「わ、私は何もしていません。 ただ、アリス様をこの部屋にお呼び立てしただけで」
大きな声を出すことは淑女として褒められたことではありませんが、今はそれを気にする余裕などありませんでした。
「呼び出して何をしようとしたんだ」
「ですから、学校内ではきちんと校則を守るようにと注意をして差し上げようと」
「また、アリスに暴力を振るう気だったんだろう!? 私が、君が裏で何をやっているか知らないとでも思っているのか!」
「誤解です! 私はルイス様のお怒りを買うようなことは一切行っておりません!」
「ふん。 君にとってアリスへの数々の仕打ちは大したことではないということか。 落ちるところまで落ちたな、ミリアリア。 最後の情けだ。 アリスにしっかりと謝って自分自身で罪を償うなら、君を憲兵の元へは連れ出さないよ」
「わ、私は本当にアリス様に対しては何もしておりません」
私は、本当にアリス男爵令嬢に対して暴力を振るったり、嫌がらせをしたりはしていません。 むしろ近ごろはお会いしてすらいません。
私の返答には応えず、王太子様は無言で抑える力を強めます。 より一層、体重をかけて押さえつけられたせいで、なんだか意識が朦朧とし始めました。 あちこちの血流が止まっているんでしょう。 腕などはもう感覚がありません。
肺が圧迫されているのも原因のひとつかもしれません。
「お兄様、助けてくださいっ」
私はお兄様に助けを求めました。 お兄様は私よりも5歳年上で、この学校の教師をしています。
「残念だよ、ミリー。 もう、君を妹とは思えない」
「なん、で……」
お兄様の言葉で、心を絶望が覆い尽くします。
この場にいる人たちの中で私が最も親しいのは婚約者である王太子様と実の家族であるお兄様です。
その二人に見捨てられたということは、もうこの場に私を守ってくださる方は誰もいないということに他なりません。
私は何も悪いことはしていないのに。
どうして誰も信じてくれないのですか……。
「は、離してくださいっ」
このままではいけないと思い抵抗しますが、私程度の力では王太子様を押し退けるのは難しいようで、むしろ余計に強く押さえつけられてしまいます。
「分が悪くなったら逃げる気───っ!」
息苦しさでもがいていたら、バタバタと動かした靴の踵で王太子様の背中を蹴ってしまいました。
故意ではなかったとはいえ、王太子様を足で蹴ってしまったことには変わりありません。
「も、もう、申し訳ございませんっ! 」
声がうまく出ませんが、どうにか言葉にします。
もう、頭もうまく働きません。
涙や唾液などが垂れていなければいいのですが、なんてそんなことを考えてしまうのは、幼い頃のお父様とお母様の教えのおかげでしょうか。
「アリスには謝らないのに、私にはこんなにあっさりと謝るのだな。 ……おい。 アインハルト、こいつをさっさと連れて帰れ。 もう十分だ」
底冷えのする声で王太子様がお兄様に話しかけながら、私の拘束を解いてくださいます。
あ、いけません……。
急に意識が遠のいて行きます。
……お兄様が何か仰っているようですが、もうほとんど聞き取れません───。
作品の感想をいただけたら幸いです。
可能な限りですが返信をさせていただきます。
ただ、作者のメンタルが紙防御ですのでお手柔らかにお願いします。