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23歳の若き国王アレクサンドルは、前国王が病気で亡くなった三年前から国を治めている。良い政策をついで、評判もわるくないらしい。(マリアは田舎暮らしなので村で噂に聞くくらいだった。)
容姿もよく、地位もあるので、国中の貴族の娘はアレクサンドルに夢中だ。
部屋の中、一人残されたマリアはどうしていいのか分からず、ただ黙って下を向き続けるしかなかった。重鎮達は目でどうすると合図しながら周りを気にしているだけだ。
早く家に帰りたい・・・この気持ちをこの人達に言ってもいいのかしら?・・・
しばらくすると、ここに連れて来らる道中、馬車の中で紹介された、侍女のミリが迎えにきた。私の部屋が用意できたとのことだ。
「ドレスを替えられますか?」
部屋は庭がよく見え家具も一級品。天蓋付きベットに、クローゼット内にはドレスがいっぱいだ。さすが賓客扱い。マリアは呆然と立ち尽くすだけだった。
「マリア様お疲れでしょうから、ひとまずお休みください。」
ミリが何度声をかけても直ぐには反応出来なかった。
「休みたいので、一人にして下さい。」
早く一人になりたかった。
ミリは手早くお茶の用意をして
「隣室に控えていますので、なにかあればお声をおかけ下さい。」と、部屋をでていった。
扉が閉まると、ソファーに倒れこんだ。
どこのお姫様だろう・・・自分はただの猟師の娘。この王宮に足を踏み入れることさえ一生あり得なかった生活。多分、考えもしなかったと思う。この先を思うと不安でたまらない。あの山へ、村へ帰ることが出来るのだろうか?
偶然通りがかった陛下に、危ない所を助けてもらい感謝している。あの容姿で、微笑まれ「国のために一緒に来てほしい。」と頼まれ胸がざわついた。嬉しかった。でも、本当にどうかしていた。
「はぁー。」
マリアは大きなため息とともに目を閉じた。